オープンデータとシビック・アプリ(シビック・テック)に関する論考

Toshikazu SETO
Feb 24, 2017 · 5 min read

最近,シビックテックやオープンデータに関する研究や講演の機会がふえていますが,兼ねてから特にシビックテック分野に対して研究論文を集めたり,こうした取り組みに対する定量-定性評価がうまく出来ないものかと考えています.

その一旦で,偶然にも見つけた論文が表題のもので,コンピュータ・サイエンスの世界的学会Association for Computing Machinery (ACM)のジャーナルに掲載されているものでした.論文の書誌情報は以下の通りで,フルテキストが閲覧可能なのでご興味ある方はどうぞ.

Open Data and Civic Apps: First-Generation Failures, Second-Generation Improvements, Melissa Lee, Esteve Almirall, Jonathan Wareham, Communications of the ACM, Vol. 59 №1, Pages 82–89, 2016.
10.1145/2756542

海外でもオープンデータ/オープンガバメントに関するデータや政策的なテーマによる論考はもとより,シビック・テック(Civic Tech/Civic Technology)に焦点を当てた「実践」的な報告もされるようになってきました.特に,Code for Americaが監修しBrett Goldstein とLauren Dyson編によって出版されたBeyond Transparencyは,同分野における貴重な入門書でありバイブルにもなっています.

ところで,ACMに掲載された論文によれば,副題の「第一世代の失敗と,第二世代での改善」とあるように,英語圏でのこうした活動に関するレビューを行ったもので,サイクルとしては二巡目を迎えている(場合によっては超えている)のかと感じました.

前者の第一世代の「失敗」要因ですが,概ね8つに要約されています.

・人気のデータセットを過度に利用したこと
・同じソリューションの場に多数の同様のアプリがあること
・似たような興味や社会属性の開発者のよるアプリ(が多い)
・公開されたデータが,都市サービスに相応しい変化を伴っていない
・コーディング・コンテスト用に調整された既存のアプリケーション
・象徴的な賞金(額)ではあるが、長期的で持続可能なアプリには不十分
・政府による限定された採用と支援(特にデータ公開で市の関与が終わってしまう)
・行政のデータ透明性への抵抗

アメリカやイギリスでは政府主催のコンテスト(Apps for Democracyなどはその代表例?)が華々しく立ち上がったものの,実務での採用に至らなかったり継続した開発については厳し目な評価がされています.

またこうした結果の一因として,「新しいビジネスの契機になる」が強調されすぎているとともに,コンテストの評価基準についても,参加者数やオープンデータのデータセット数,開発されたアプリ数になりがちで,地方自治体における効率性(節約)や社会的価値を反映していなかったと捉えています.

これを受けて,第二世代では次のような改善がなされたことを評価しています.

・起業家やベンチャー投資家が,資金調達の裁定の場に招待
・市民団体にデータをタイムリーに公開させる法律の制定
・都市の重要課題に開発者の注意惹くために自治体が直接声明を発表したこと
・相当な期間、開発者が自治体に関わることで業務をよりよく理解し、相互関係を構築した
・地方自治体職員による強い管理と直接的な調整
・特定のアプリに対して財政的に支援するためのコミットメント実施
・一般的なアプリやクラウドソースのデータリポジトリ化(ボトムアップでのコミュニティ化)
・オープンソースのコーディングを実践し,データ標準化を行ったこと

これらの具体的な事例として,FixMyStreetやStreetBump,Roadifyなどのアプリケーション,あるいはオープなプラットフォームの事例としてOpenStreetMapにおけるコミュニティ管理が挙げられていますが,Code for Americaのフェローシップや地方自治体のGitHub運用などもここに加えることが出来るかと思います.

Figure 2. Civic application development life cycle.

しかしながら,結論部でも触れられているように,「公共部門のオープンデータ戦略は継続的に進化し続けなければならず,継続的な工夫とより大きな効果や影響力,社会的価値を持つべき」と訴えられています。つまりアプリケーションコンテストなど一過性な取組から,持続可能な活動に段階を挙げていくかが今まさに問われていることは間違いなく,そのサービスを欲する人ー作ってくれる人ー支援する人,などなど様々なステイクホルダーがコミュニティとして一体化する仕組みが必要だということを改めて痛感しました.

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Toshikazu SETO

Written by

Lecturer of CSIS at the University of Tokyo / Social Geography / Participatory GIS / Neogeography / Volunteered Geographic Information / Qualitative GIS

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