Sir. Tim Berners-Lee講演会@慶應義塾大学三田キャンパス170314
今日は「ティム・バーナーズ=リー卿 慶應義塾大学名誉博士称号授与 記念講演会」が開催されることになり,一般公開ということで聴講してきました.後日,録画映像が公開されるようですが,WebTechに多少なりとも関わったことのある方は名前はご存じでしょうし,注目度も高いと思うので,聴き取れた部分のみ(不利益や不都合があればやめます&正確性は保証しかねます)ですが抄録を公開したいと思います.内容の編集にあたっては,@koujikozaki さんの実況ツイート(#tbl_keio)も参考にさせていただきました.Thx!
オープンデータ界隈でもとても有名.
◯イントロダクション
Webから25年以上経って,Webのない世界はもはや考えられない状況に.ただ,これが永続するかどうかはわからない
◯Webをめぐる4つのレイヤーのお話
(1)物理(接続)レイヤー(Wifiや有線LANなど)
・1969年TCP/IPが初めて通過した年,接続することが重要だった.
(2)インターネット・レイヤー
・異なる国がWebで1つに繋がった
・パケットをインターネット(今でいうクラウド)に投げることで共有できるように
・いろいろなアプリケーションに使われるようになった,例えば大手メディア・ケーブルTV会社なども
(3)プラットフォーム・レイヤー
・基盤になるもの,どのコンピュータとも通信できるようになった
・どんなアプリケーションでも(理想的には)差別なしにつながる
・ネットニュートラリティ(NetNeutrarity)
・多くの人がインターネットを使って,新しいプログラムを開発する環境が今はある
◯彼のこれまでの経験
・CERNでプログラマとして働いていた,社会的で開かれた組織
・ドキュメンテーションが複雑で見つけるのに苦労をした
・WWWをやってみたらどうかと上司から誘われた
・1989年AppleのNEXTが登場.e-mailを使うことができた.Appleの思想・開発環境のプロトタイプは素晴らしかった
・ポート番号,274(実は両親の電話番号から思いついた)を取得して開発をスタート
・分散型プロジェクトでも合ったー他の社会的な機関に対して物理的な許可が不要だったことも大きい
・2008年にWWWFoundation設立,Webを使う人は50%くらいに,少数から多数派に.人類のために貢献すること
(4)ソーシャルネットワーク・レイヤー
・マイノリティだったWebがマジョリティになった
・FacebookやTwitterがメジャーに.他方,両者はロングテールになっておらず,中央型システムになってしまっている
・いつでも自分でデータを持ち運び出来るようになったし,ウェブサイトが仮想空間上のオープンスペースになった
◯インターネットの社会的な影響
・英国:ウェブのトランザクションを監視できるようになった,Spying,Censorshipなど
・インターネット監視:個人に権限が与えられていないことが問題.オープンにし続けること
・Twitterは,RTという方法によってアイデアの拡散が当初図られていた.
・だが,実際は楽しいことより怒っていることをTweetしたいと人々は感じた
・情報がどう拡散されているのかをもう少し分析すべき,差別発言,LGBTの方が拡散しがち
・フェイクニュース問題,クリックさせようとする仕組み(ただ単にクリックさせる広告)
・商業的・政治的な目的で利用するようなシステムに,お金が動いている
・Facebookのターゲット広告の有効性.TargetAds.
・ケンブリッジ大学の分析によれば,Trump大統領選挙における32グループ分類の分析
・人間とテクノロジーはつながっていることを認識して新しいサービスは作られるべき
◯「プロトコルと心理学(Psychology)」
・全体システムの安定性について様々な分野で研究されている,多角的な見方を勧める
・とにかく速く技術的発展をすればいいだけではない,アイデアの普及における情報の量・方法
・Webサイエンスにおける「MicroScopingーMicroEconomics」の視点の重要性
・オープンなオンライン上での議論が進みつつある
・個人の行動をどのように変えることができるのか,どういったパラメータが効いているのか
・Web Intelligenceというキーワードがあるのではないか
◯おわりに
・(特に)2016年以降にWeb上で起こった様々な動乱
…一方で,私自身は前向きな視点でも捉えていて,Webは国境を超えていける,と感じている
・4つのレイヤーの「次」について皆さんには考えて欲しい
・ロンドンオリンピック/パラリンピックに,招待された際に私は何をTweetしようか考えた
・結果的に,「これはすべての人のためです」というTweetをした
◯対談(Q&A) with 村井純 教授
(村井)ブラウザが複雑化して仮想マシン化した,プロセシングークライアントの関係性,バランスの移り変わりをどう見ているのか?未来はどう見ているのか?
(TBL)ハイパーテキストの連続で設計していた.モデルの衝突があるし,セキュリティも問題(他のデータとのアクセシングができなくなる)SameOriginPolicyが現在のアーキテクチャ.未来は…クライアントサーバーよりは,Web上にP2Pができるようになる?ような状況に進むかもしれない
(村井)ソーシャルな側面.様々なメディアがWebに近づこうとしている.
(TBL)ブルースクリーン問題,例えば,車とWebの間に線を引く事は難しい時代,データをスムーズに動かしていくことが必要なのではないか?
・どのようなデータを失っているのか?データが見えなくなっているという問題,教育機関における役割
(TBL)EUにおける共同規制(銀行を例にあげる),データはパブリックキーを介してコントロール,プライバシーを管理する権利,契約プロセスの洗練性
・分散型Webについて
(TBL)MITを始め研究が進められている.安全なWebスペースの必要性.ハッシューP2Pなど.Webとロボテックスは違う.ブロックチェーン:Web上またはブロックチェーンでも出来る,いろいろなコンビネーションが可能
・未来ー政治・社会・商業ーが知りたい.社会のプラットフォーム
(TBL)何かシステムとしてハッシュでストアするような(GitHubを使わなくても取れるような),Gitの分散化.人々がどのように使っているのかを知る必要.市町村での使われ方を明らかに.
Linked Research
サイエンスで出来るのであれば社会でもできるのでは
市民が情報を持って行動できるーガバナンスチャレンジ
・フェイクニュースについて何ができるのか?
(TBL)Webファウンデーションでのblogにも書いた.社会システムー社会ネットワークについて考えて欲しい.どこまで匿名性を許すのか?人間が行なうジャッジメント/意思決定,SNSな世界は一から始められるかもしれない.Intelligenceの視点,Webをめぐる最後のピースかもしれない
・Super Intelligence(by Nick Bostrom)が参考になった