「はじまりの果実ケーキ」考案者 ふくだ菓子舗店主インタビュー

Arts Towada
Towada Art Center
Published in
6 min readSep 7, 2020

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十和田市商店街の中にある創業70年の老舗洋菓子店 ふくだ菓子舗。
懐かしさを感じさせるあたたかな味わいのケーキは、十和田市民から長く愛されて続けています。

十和田市現代美術館は、2012年からふくだ菓子舗さんに企画展やイベント限定スイーツづくりを依頼し、美術館のカフェで提供しています。
現在開催中の企画展 Arts Towada 十周年記念「インター + プレイ」展では、鈴木康広《はじまりの果実》をモチーフにしたケーキを考案いただきました。十和田市の形をした切り株に、りんごが上から落ちてきている様子を象った大型彫刻作品が、しっとりとした優しい甘さのケーキで再現されています。

今回、いつも限定スイーツづくりにご協力いただいているふくだ菓子舗の店主・福田真一(ふくだ・しんいち)さんに 「はじまりの果実ケーキ」考案エピソードなどを伺いましたのでご紹介させていただきます。

Q. 今回でコラボスイーツは6回目となりますが、依頼を受けた時にどう思いましたか?

A. 作品をもとにスイーツをつくるお話を受けるときは、形が複雑で難しいものが多いので、毎回新しい企画展が始まるたびにドキドキします。
つくったことがない形をつくるので、とても良い経験になっていると思います。

Q. 今回の「はじまりの果実ケーキ」で難しかった点はありますか?

A. 形の再現が難しかったです。特にりんごをどうするかは頭を悩ませました。赤い実であるレッドカラント(赤スグリ)も試しましたが、十和田らしさ、サイズ感から十和田産のブルーベリーにチョコレートをコーティングすることにしました。
本当は、作品のようにすべて重ねることができれば良かったのですが、バランスが難しく作家の鈴木康広さんがお皿に乗せてもいいんじゃないか、とおっしゃってくださったので、お皿にも転がしています。
でも、一番難しく気を遣うのは、重ねたりんごが崩れないようにお店から美術館へ持ってくることですね(笑)

Q. 特にこだわった点はどんなところですか?

A. 形の再現と味です。実は前日の夜から仕込みをしています。土台となるケーキ部分は、ふくだ菓子舗でもともと「チョコボール」に使用している生地を採用しています。これは、スポンジとお酒、クリームを練ったもので、フランスのお菓子・ヌガーのようにしっとりとした食感です。ブルーベリーは十和田産にこだわり、お店でいちごを仕入れている十和田市内の農家さんのものを使用しています。

「はじまりの果実ケーキ」芝生まで再現されている。

Q. 作品《はじまりの果実》の感想をお聞かせください。

A. 十和田市をモチーフにしていて、美術館のこの場所(前庭)にあっているし、十和田にもあっていると思います。
作品を見れば見るほど、りんごの落ちる角度や向きまで再現できればよかったな、と。

Q. これまで、色々な企画展や作品とコラボしてきましたが、一番印象に残っている思うスイーツは何ですか?

A. 常設展作家の山本修路さんとつくった「実生の森ケーキ」です。修路さんが十和田に滞在した際に意気投合し、それからたくさん話をして一緒に考案したというのが大きいです。

「実生の森ケーキ」実生(みしょう)とは、種子から発芽したばかりの植物のこと。

※これまでのコラボスイーツの一部。

Q. ふくだ菓子舗で人気のスイーツを教えてください。

A. しっとりとした生地をチョコで包んだ「チョコボール」ですね。値段も手ごろなので、いくつかまとめて買ってくださるお客様が多いです。他にも好評なのは、昔ながらの懐かしい味わいのバタークリームのケーキや、ケーキのスポンジをパイ生地で包んだ「スティック」です。この「スティック」はオーブンで軽く温めると香りが立って美味しいですよ。

(左)「モカ」コーヒー味のバタークリームがたっぷり。(右)「ピラミッド」バタークリーム、チョコ、スポンジが縦に層になっている。(手前)「チョコボール」一度にたくさん購入する常連さんもいるそう。
(左)「スティック」ボリュームがたっぷり。(右)「スティック」の断面。レーズンも入っている。

Q. 今後の抱負などありますか?

A. 日々、美味しいお菓子をつくっていけたらいいですね。

Q. 最後に「はじまりの果実ケーキ」を食べてくださる方へ一言お願いします。

A. ぜひ、天気の良い日に、作品に座って食べていただきたいです。

<インタビュアーの感想。>
今回の企画展コラボスイーツは、作品の見た目の再現だけでなく、鈴木康広さんの作品に感じる遊び心やイタズラ心も反映されていると思いました。白いケーキ部分に作品と同じように年輪が入っていたり。甘いと思って食べるりんごが実はブルーベリーで酸っぱかったり。
作品からスイーツをつくる難しさや大変さを語っていた福田さんですが、その表情は楽しそうでした。
ぜひ、福田さんのつくる《はじまりの果実》を味わっていただきたいです。美術館内のcube cafe&shopでしか味わえない、一日数個の限定スイーツとなっておりますので、お早めにお買い求めください!
もちろん、ふくだ菓子舗のいろいろなお菓子もおすすめですよ。

■ふくだ菓子舗
営業時間 9:00–19:00
定休日 不定休
駐車場 あり
TEL 0176–23–2523
住所 青森県十和田市稲生町20–35
※美術館から行き方はこちら

インタビュアー・写真撮影:大谷・土井
取材日:2020年9月4日

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