美術館での生体展示日記:やどかり_3
美術館で生体展示をするという事はどういうことでしょうか。
生きものの視点で見た世界をユーモラスに表現し、人間や社会の本質を問いかけてくる AKI INOMATA。十和田市現代美術館での彼女の個展に作品の一部としてやってきた生きものたちの観察を通して、INOMATAの見せようとする世界の、ある側面を考察します。
展示するにあたり、生きものにとって適切な環境にするために、専門家の指導・助言のもと、気温調整、給餌、清掃等を毎日行っています。生きものは展示終了後、作家が継続して飼育を行います。
日々変化していく、生きものの様子を日記で紹介していきます。
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9月25日 やどかりのやどの掃除
やどかりの「やど」にコケが付きすぎてしまったときには掃除をします。
やどかりが違う「やど」に引っ越した隙に、「やど」をブラシなどでこすってコケを落とします。コケによってはまったく取れないものもあり、水につけて「やど」に傷がつかないように、やわらかいブラシで丁寧にとっていきます。ですが、やどかりは簡単には引っ越してくれないので、長期戦になります。
10月1日 元気に水槽の中を動き回るやどかり。
休館日は終日展示室の電気を消しています。やどかりには、夕方にエサをあげます。そのために電気をつけてみると、やどかりがライブロックの上に登っていたり、コードにしがみついていたりと、まるで水槽から出てきそうなほど元気に動いています。
10月5日 海水や環境に慣れてきたやどかり
やどかりが美術館に到着してから3週間が経ちました。やどかりはやっと展示室の環境に慣れてきたのか、水槽内の機材によじ登ったり、サンゴ砂を掘ったり、ライブロックを動かしたりと、動きが活発になってきています。
やどかりの中には、人が通ると驚いて固まったりものや、脚をあげ体を大きく見せたりするものがいて、やどかりの個性が異なる事に驚きます。
水槽には、 ハードチューブ(ゴカイの仲間のケアリ種)もやどかりと一緒に住んでいます。
ハードチューブも生きていて、光に反応します。人が水槽の前を通ると驚いて管の中に入り込む時もあります。
執筆者:十和田市現代美術館 学芸スタッフ 見留さやか