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3 min readNov 28, 2019

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美術館での生体展示日記:ミノムシ_3

美術館で生体展示をするという事はどういうことでしょうか。

生きものの視点で見た世界をユーモラスに表現し、人間や社会の本質を問いかけてくる AKI INOMATA。十和田市現代美術館での彼女の個展に作品の一部としてやってきた生きものたちの観察を通して、INOMATAの見せようとする世界の、ある側面を考察します。

展示するにあたり、生きものにとって適切な環境にするために、専門家の指導・助言のもと、気温調整、給餌、清掃等を毎日行っています。生きものは展示終了後、作家が継続して飼育を行います。

日々変化していく、生きものの様子を日記で紹介していきます。

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9月7日

作家のINOMATAさんが展示の準備のために、十和田を訪れました。

松本茶舗さんが今まで大事に育ててくださったミノムシの中から、展覧会で展示するミノムシをサイズを見ながら十数匹選びました。美術館に戻ってきたミノムシは大きいケースに入れて育てていきます。

9月8日-12日 ミノムシが洋服をまとうまで

共布という洋服をつくる際に出てくる布の端切れを細かく切り、ミノムシの側に置くと、1日から2日かけて、葉をまとうようにミノムシが自ら布をまとっていきます。ミノムシが布の色をランダムに選んでいく様子は、自らの身を隠し守るためだけではなく、まとう事を楽しんでいるようにも見えます。

写真:朝岡英輔
写真:朝岡英輔

9月14日

美術館では8時30分から9時の間に、開館準備をします。

ミノムシ作品の部屋では、まずミノムシの状態を確認します。動きに異常はないか、冬眠に入っていないか、日々の違いを観察します。

そして、フンは先の細いハンドクリーナーでミノムシに影響がないよう丁寧に吸い取り、全て取り除きます。このようにして、ケースの中を清潔に保っています。

ミノムシのエサとなる柿の葉は乾きすぎて硬くなると食べにくいので、柿の葉の状態をチェックし、硬くなっていた場合は新しい葉を取りに行きます。柿の葉は、ミノムシの養育でお世話になった松本茶舗さんの裏庭の柿の木や十和田市内の方にご協力をいただいています。

今回展示をしているミノムシの種類はオオミノガで、関東や九州地方に生息しています。青森県十和田市の気温(1月の最低気温の平均-6度)では寒すぎるため、展示室の温度を日々チェックし、関東の気温に合わせて室温を調整しています。

執筆者:十和田市現代美術館 学芸スタッフ 見留さやか

AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき

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