美術館での生体展示日記:やどかり_1
美術館で生体展示をするという事はどういうことでしょうか。
生きものの視点で見た世界をユーモラスに表現し、人間や社会の本質を問いかけてくる AKI INOMATA。十和田市現代美術館での彼女の個展に作品の一部としてやってきた生きものたちの観察を通して、INOMATAの見せようとする世界の、ある側面を考察します。
展示するにあたり、生きものにとって適切な環境にするために、専門家の指導・助言のもと、気温調整、給餌、清掃等を毎日行っています。生きものは展示終了後、作家が継続して飼育を行います。
日々変化していく、生きものの様子を日記で紹介していきます。
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8月23日 美術館にやどかりが来る 準備
水槽に天然の海水を入れ、濾過器をセットします。やどかりが来るまでにバクテリアを定着させ、水質を安定させます。
9月11日
午後、浅虫水族館から浅虫で汲み上げた1トンの天然海水がトラックで運ばれてきました。
大きいタンクに入った海水の匂いや音を聞いているだけで、海にいるような開放的な気持ちになり、設営中の緊張感が少し和らぐ瞬間でした。
浅虫水族館の職員の方により、一つ一つの水槽へ丁寧に海水が注がれていきます。サンゴ砂を敷き詰めた水槽の中に小さいバケツを入れ、その中に海水を入れながら水槽を満杯にしていくと、サンゴ砂が舞わず綺麗に海水を注ぐことができます。
その後、ライブロック(※サンゴの死骸などの骨格をベースに微生物や小さな生きものが付着している海中の岩−−水槽内を自然に浄化してくれます)を設置しました。
9月14日
美術館では8時30分から9時の間に、開館準備をします。やどかりの作品の部屋では、やどかりの様子や水温、水質をチェックします。
次に、水槽や水を綺麗にする装置に付着している汚れを歯ブラシで擦り、水で洗って清潔にします。そして、海水が蒸発して水がすくなくなっている水槽に、カルキ抜きをした真水を足し、海水の塩分を一定に合わせます。
展示室に来ているのはコモンヤドカリという種類で、房総半島以南に棲息し、沖縄の海でよく見られます。そのため、水温を26度にし、温度を管理しながら展示をしています。
執筆者:十和田市現代美術館 学芸スタッフ 見留さやか