マレーシアのスタートアップ入門編2016

Tadaaki Kimura
trend note
Published in
6 min readFeb 8, 2016

こんにちは。今回は、マレーシアのスタートアップの近況について、現地での情報など含めお伝えします。最近では政府の予算も積極的に割り当てられ、少しずつ盛り上がりを見せています。概要等まとめましたので、入門編としてどうぞ。

まず、マレーシアのマクロ情報は、wikipediaなどによると、、、

◆人口約3000万人 ※マレー系65%、中国系26%、インド系8%

◆宗教はイスラム教 ※ただし他の厳格な国に比べると比較的リベラルか

◆国語はマレー語 ※ただし、英語や中国語も広く使われ、マレーシアで通常の義務教育を受けると上記3か国語は話せるようになる。

◆GDPは3124億USD ※2012年度。日本の約20分の1。一人当たりGDPは1万USDを超えシンガポール、ブルネイに次いで第3位。

マレーシアのスタートアップに関する概略(日本語訳)に関しては昨年bridgeでカバーされたこちらのエントリーをご覧ください。

現地の起業家達の話を聞いてみてもマーケットプレイスなどのスタートアップが多い印象です。この記事の18社の中で個人的なお気に入りは、友人でもある現地ファウンダーによるTapway。商業施設などパブリックなwifiネットワークを使ってプッシュでのプロモーションを行ったりマーケティング分析などを行うスタートアップで、現地では新しいモールであるNU Sentralでも導入されています。昨年はイギリスや韓国などへもPRをしにいったそうです。基本的にこちらのファウンダー達は英語が堪能ですので、グローバルに展開するための素地があります。また、そもそもマレーシア自体が中華系やインド系、イスラム系などの多文化が融合しており、他の市場への親和性と適応能力が高いことが挙げられます。

また、東南アジア及びマレーシアのエコシステムに関する概略(日本語訳)に関しては昨年bridgeでカバーされたこちらのエントリーをご覧ください。

この記事にもあるように、現地の代表的なアクセラレータとして、1337 VenturesMAD IncubatorMaGICがあります。こちらそれぞれの関係者に現地でお会いしました。

1337 Venturesは現地でも老舗のアクセラレータで、教育的なアクセラレータプログラムとその後のシード投資を行っています。現在はフィリピンも領域を広げ活動中とのこと。

MAD Incubatorは、Andrew氏によるスタートアップ育成プロジェクト。スタートアップが集積しているエリアであるCyberjayaをはじめマレーシア内の色々なところで展開されています。現在は、マレーシアのスタートアップ等に対してミャンマーへの視察ツアーなどを企画しているそうです。

MaGICは、Malaysian Global Innovation & Creativity Centerの略で、政府による起業育成活動です。数十億円単位の政府の予算で活動が行われており、投資は行わずCyberjayaにおいてオフィスを提供したりアクセラレータプログラムを提供しています。数か月に1回、プログラム参加チーム(マレーシア以外のスタートアップも数多くいるそうです)のdemo dayも開催しています。最近になって、トップ及び中心人物がMaGICを抜けたそうで、その後の人事に注目が集まっています。

マレーシアの中心的なVCとしては、マレーシア政府によるMAVCAPCradleがあります。 MAVCAPが現地通信会社のAxiata社と運用している投資ファンドは十億円規模ですが、このファンドは、マレー人優遇政策であるブミプトラ政策の影響でマレー人に投資が集まりやすい(全体の70%がマレー人スタートアップに割り当てられる)傾向があるようです。現地のスタートアップの子達にこの感想を聞いたところ、そもそもマレーシアでの経済政策全体がマレー人への傾斜配分が行われているため、現地にいる感覚からすると、VC領域においてもマレー人が優遇されること自体にはそう違和感がないようです。

日本(人)系のシードVCでは、日本でもお馴染みEastVenturesCAVに加え、KK fundRebright ParntersREAPRASegnel Venturesあたりが東南アジアにてアクティブに投資をしています。ウェブサイトをみると、KK fundRebright ParntersSegnel Venturesあたりはマレーシアの投資先があります。

海外のIT系企業などに関しては、MSCという優遇認定制度があり、こちらを取得すると、外資規制が撤廃(100%国外資本で会社設立が可能)、10年間法人税が免除される他、ビザの発行などについても自由に行うことができます。日本からみたオフショア系の業務に関してはベトナムなどが引き続き競争力があるようですが、イラストやデザイン系の制作業務については一部マレーシアにも強みと実績があるようです(マレー人は相対的にクリエイティブ志向が高いとのこと)。

東南アジアのhubとしてはシンガポールが筆頭ですが、地理的な位置としてはマレーシアも負けておらず、家賃もシンガポールが現在の体感の市場価格でクアラルンプールの約5倍くらいであることを考えると、まだまだポテンシャルはあるように感じます。

以上、簡単ですが、マレーシアの最近のスタートアップについて入門編としてお伝えさせて頂きました。今後アップデート等ありましたら更新します。

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