2017年の展望(国内スタートアップ、東アジアスタートアップ、オープンイノベーション)

Tadaaki Kimura
trend note
Published in
13 min readJan 4, 2017

あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。今年の年明けは、日本や現地の起業関係の皆様とベトナムで迎え、新興国の熱気を肌で感じて参りました。

昨年は弊社アドライトにて昔からの仲間が戻ってきてくれたり新しい仲間も増え、色々な挑戦ができましたことを、改めて感謝申し上げます。今年も更なる新しい仲間と共にイノベーション創造に邁進していきたく思います。

さて、節目ですので2017年を迎えるにあたっての展望など簡単にまとめました。

2017年の国内スタートアップ

国内スタートアップにおける資金調達については追い風の状況で、エクイティでの調達に加え、借り入れも低金利(企業借入金利はおそらく今が底値)での調達が可能な状況が続くでしょう。出口の国内IPOにおいても、昨年は社歴の長い中堅企業のIPOも目立ちましたが、株価がある程度維持される前提では、いわゆる新しいスタートアップ企業のIPOにも期待したいところです。他方、大型の資金調達をしてバリュエーションも高くなった企業や、勝敗が明確になった領域などではスタートアップ(未上場)企業同士でのM&Aが盛んになるものと思われます。潤沢な国内VCマネーに加え、産業革新機構などの政府系マネーや各大学のベンチャー投資用マネー、ひいては今年もさらに増えるであろうCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)など大企業からのベンチャー投資マネーを含めると、国内スタートアップのための資金はかなり潤沢です。上記背景をふまえると、アジア市場など国外の成長マーケットを取り込みの動きはVC投資/クロスボーダーM&A含め2020年までに出てくる(べき)と考えます。

注目領域は、

第一はHR領域です。マクロトレンドでとにかく国内では人材不足の状況であり、一方で大型の資金調達をした企業では人材に投資する企業も多いため、優秀な人材を採用し定着させるサービスに注目しています。今年は更にお金の価値が下がり、人材の価値が高まるでしょう。ソーシャル/リファラル採用のサービスは堅調でしょうし、これらの新しい採用プラットフォームも一巡した後はクライアント企業側としても純粋に外部からの採用に頼らざるを得ず、従来のレガシーな採用支援・紹介サービスや、そのような企業の採用人事機能を強化するための管理サービスはニーズがあるものと思われます。逆説的ですが、非正規雇用の割合が増えれば増えるほど、正規雇用者の価値や役割も高まってくることになります。一方で、働き方の多様化や副業の緩和に伴い、正規雇用以外の領域もバーティカルに市場が立ち上がるでしょう。特に高単価の知的労働力のスポットサービスやマッチングサービスは特に収益化も早そうです。

第二はBtoBクラウドサービス(SaaS)領域です。従前より日本では多くのシステム投資に関してレガシーな大型システムを担うSIerやシステム会社が主体であり、カニバリゼーションが大きすぎて大手企業がクラウドサービスに及び腰(既存の規模も大きく利益率の高い事業を守りたい)というインセンティブが強くありました。最近ではベンチャー企業を中心としたクラウド化の流れが導入側にも浸透してきており、またサービスレベルやセキュリティレベルの向上により、色々な場面(例えば全社導入でなくとも部分的にでも)でクラウドサービスが機能したり導入したりすることができるようになりました。主としてバックオフィスや管理系業務を対象にしたこの領域の進展はベンチャー企業を中心に継続すると思いますし、目新しいサービスであっても積み上げ型のビジネスモデルによりいずれ収益化し形になっていくことでしょう。昨年は弊社アドライトでも主に大企業を中心にいくつかのクラウドサービスの新規事業立上支援を行いましたが、ベンチャー企業とうまくタッグを組みながら大企業側の既存リソースも活用していく、いわゆるオープンイノベーションの文脈においても、この領域には引き続き着目・注力していきたいです。

AI領域は、まだ発展途上(研究開発途上)の段階であり、現在の国内スタートアップという文脈では、人力と人工知能を組み合わせた最適解を提供するサービスが本命と考えます。単純に人工知能を使えばイノベーションがおきそうだというだけで注目が集まる段階は終わり、具体的にどのように最適化されるのか、シンプルなアイデアやソリューションに期待したいです。

昨年あたりから世界に遅れて日本でもようやく盛り上がりを見せはじめているFintech領域ですが、送金サービスやe-walletサービスなど、海外ではデファクトである機能なのにも関わらず日本では規制があったり、似たようなサービスが浸透しすぎているが故に発達していない部分がサービスとして顕在化してくる(べき)ものと考えます。それ以外のサービスは、日本のFintechはそもそも銀行業務のdisruptiveではなくco-operativeという立ち位置でしょうから、銀行や金融機関を主導に、地方銀行含め進めやすいサービスなどから一定程度浸透してゆく(国内横展開圧力は強い)ものと思います。国境の関係ないbitcoinは単体としては機能するものの、blockchainなどをどのように活用するかについては、もう少し時間をかけて成熟を待つか国外サービスやスタートアップとも連携する必要もありそうです。

IoTやハードウェア領域については、一定規模までは面白いサービスも立ち上がると思いますが、一定規模以上の事業展開に伸び悩みも懸念されます。うまくサービス型のビジネスモデルを組み込んだり、大手企業との連携などを成功させるには、最短距離で広範囲に展開できる仕掛けを考え抜く必要がありそうです。

弊社アドライトでは、国内スタートアップに対して、企業経営/大企業連携/ファイナンス/IPOなどの観点から育成支援を行っております。ご相談などありましたらお気軽にお問い合わせてください。関連して、昨年の資金調達から振り返る国内スタートアップの現状についてのイベントを2017年3月に行います。詳細決まり次第、弊社ウェブサイトや公式Facebookページでも案内しますので、ご興味ある方は是非お越しくださいませ。

2017年の東アジアスタートアップ

以前より注力して支援しています東アジア(韓国・香港・台湾)のスタートアップシーン。このエリアのスタートアップ第一人者を目指すべく、昨年は香港と韓国に招待頂き日本のスタートアップトレンドについてお伝えしながら、現地の最新情報についてキャッチアップしたり、現地チームの支援を通じてトレンドを肌で感じおります。弊社ウェブサイトでもいくつか関連エッセイを投稿していますので、合わせてご覧くださいませ。

特に今年は香港スタートアップに注目しており、FintechやAIの領域などで面白いチームが出てきています。特にFintech関連はアジアでも卓越しており、金融機関出身のベテランチームによるblockchainなどを活用した金融機関向けサービスや、PFM/送金サービスも進んでいます。今後も香港発のスタートアップがアジアでも目立ってくると思われます。また、香港では個人投資家などのネットワークも強く、ポテンシャルのある都市といえます。香港のマーケット自体は中国とは別と考えた方がよく、香港経由で中国マーケットを狙うこともあるでしょうが、よりフラットに英語が堪能な国際的チームがアジアマーケットを席捲すると見たほうがよさそうです。

韓国では、アジア市場をターゲットにしたスタートアップが更に増えてくるでしょう。アメリカや日本にもみられるようなBtoB系のクラウドサービスがアジア向けに英語及び現地語対応で展開されていたり、IoT系や言語に依存しないUX/XIのモバイルサービスなどが日本及びアジアにも展開されていくことになります。起業家らによるエンジェルネットワークや、韓国政府の積極的なスタートアップ支援政策もあり、盛り上がりを見せています。一方で、韓国の資金調達の環境は、政権同様不安定な要素もあり、有望な韓国スタートアップであっても現地での資金調達は簡単ではないことから、日本から優良企業に良い条件で投資できる環境は続くように思います。

台湾では、香港や韓国ほどは先進的ではないものの、日本との文化的距離も近く、中長期でみると大きくなる余地のあるチームを輩出する余地があります。一つ例をあげると、数年前より投資支援している台湾のpopappというプロトタイピングツールを提供するBen氏率いるwoomooチームが、昨年、アジアの旅行メディアサービスagodaにacqui-hiredされました。このチームは500startupsのUSに入っていたチームで、弊社でも日本から関連する活動を支援していました。この頃のbatchには日本からもWHILLなども参加しユニークで優秀なチームも多くいました。

弊社アドライトでは、既に多数の投資支援実績のある東アジア(韓国・香港・台湾)をターゲットにした投資支援プラットフォームを準備しております。アジアやアメリカ及び日本を市場にし得るグルーバルなスタートアップが対象になります。ご興味ある方はお問い合わせください。関連して、韓国スタートアップのトレンドを伝えるイベントを、2017年2月2日に開催します。詳細決まり次第、弊社ウェブサイトや公式Facebookページでも案内しますので、ご興味ある方は是非お越しくださいませ。

2017年のオープンイノベーション

昨年は日本でもオープンイノベーション元年と呼ばれるように、大企業によるベンチャー連携の動きが拡大してきました。弊社アドライトでも先駆けて数年前よりオープンイノベーションのプロジェクトを推進し、クライアント企業とベンチャー企業と協業しての新規事業開発に取り組んでおり、そこでの苦労や醍醐味を日々感じております。昨年よりオープンイノベーションに関する問い合わせが急増しておりますが、今年は更にこの動きが加速するでしょう。協業によるオープンイノベーションだけでなく、CVC設立などにより投資も含めたベンチャー連携・イノベーション創造が勝負になりそうで、自分達のこれまでの経験ふまえ本領発揮できる年になりそうだと今からワクワクしています。そこでは、ベンチャーと連携することが目的化するのではなく、どのように効果を出して事業創造してゆくかの本質に注目が集まることになります。国内のベンチャー側にとっても、上場是後から次のステージに進むためには、大企業との連携はターニングポイントになるため、大企業・ベンチャー企業双方にとって両社の連携は重要かつ緊急の課題と言えます。

オープンイノベーションのポイントのひとつは、小さいサイクルでスピード感を持ってプロジェクトを回していくことにあります。プロジェクトに関連するイシューは多岐に渡り複数の部署を巻き込みながら進むことになりますが、プロジェクト内である程度の機能を仮説検証・実装して、本体部署側は確認するのみで進められるようにしておくことも肝要で、そのためにはプロジェクト内において、あたかも小さなベンチャー企業のような各機能を持っておくことがポイントです。弊社のハンズオン支援サービスでは、プロジェクトメンバーとして外部情報やネットワークによるベストプラクティスを注入するのみではなく、外部とのHUB機能としてプロジェクト内の機能補完・強化を行い、スピード感をもってプロジェクトを回すための役割を牽引していきます。

昨年は、そのようなオープンイノベーションの経験やノウハウを広くお伝えすべき、事例紹介とパネルディスカッションをメインに行うイベントmirai salonを立ち上げ、オープンイノベーションの現場の声をお届けしてきました。

次回mirai salonは、2017年2月22日に開催予定です。詳細決まり次第、弊社ウェブサイトや公式Facebookページでも案内しますので、ご興味ある方は是非お越しくださいませ。

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