Y Combinatorの最新batch(YC W16)の参加チーム紹介(1)
こんにちは。米国 シードアクセラレーターのトップに君臨するY Combinator(以下YC)の直近batchであるYC W16のdemodayが近づいてきました。2016年3月23日24日(PT)にmountain viewにあるcomputer museumで開催され、今回もご招待頂きました。
demodayが近づいていることもあり、YC W16のチーム紹介が始まっています。今回はどのような領域のチームが参加しているのか全ては分かりませんが、第一弾として、2016年2月27日(JST)までおいてYCのblogで公表されているチームを紹介します。今のところfintech系がいくつかあります。チームは一旦いつも通り YCが2014年9月に公表した以下の重点項目の22領域から近そうな項目で分類しています。
1. Energy
2. A.I.
3. Robotics
4. Biotech
5. Healthcare
6. Pharmaceuticals
7. Food & Water
8. Education
9. Internet Infrastructure
10. Government
11. Human Augmentation
12. VR and AR
13. Science
14. Transportation & Housing
15. One Million Jobs
16. Programming Tools
17. Hollywood 2.0
18. Diversity
19. Developing Countries
20. Enterprise Software
21. Financial Services
22. Telecommunications
なお、前回batchであるYC S15及び前々回batchであるYC W15の全参加チーム紹介は、mediumの過去エントリーで書いている他、まとめたものは下記にもありますのでご参考まで。
それでは、YC W16の参加チームの紹介第一弾は下記よりどうぞ。
■ Function of Beauty (YC W16) 領域:5. Healthcare
-パーソナライズされたシャンプーとコンディショナーをオンラインで提供。個人の髪質や好みに合わせて、4億5000万通りの組み合わせから最適なシャンプーとコンディショナーを購入することができる。2人のMITの卒業生によるチームで、今のところ100K USDのF&F(family and friends)ラウンドを終えてYCに入っている。近しいチームとしては、前回batchのYC S15のチームでscrum venturesの投資先でもある香水サブスクリプションのScentbirdがありますが、Scentbirdが月額 $14.95であるのに対して、Function of Beautyは8ozのセットで$26、16ozのセットで$38とのことであり、どのように継続的な購入につなげていくのか、離脱率(churn rate)やリテンションが肝になりそうです。
■MagicBus(YC W16) 領域:14. Transportation & Housing
-ベイエリアにおいて公共機関と同じような金額でプライベートのコミューターバスを提供。近しいサービスとしては、同じくscrum venturesの投資先でありYC W15の卒業チームでもあるサンフランシスコ市内通勤バスのChariotをはじめ、子供向け通学バスのShuddleや、もちろんUber PoolやLyft Lineなどもあるが、このチームは都市間の移動をターゲットにしているとのこと。確かに現地(例えばsan francisco~san jose間)の公共交通事情は不便(特にcaltrainが本数が少ない)であり、車がない場合にはcaltrainとバスやUBERを組み合わせ移動することになり困難が伴う。既に数千人のユーザーの登録があるとのこと。
■NetBeez(YC W16) 領域:9. Internet Infrastructure
-ネットワーク通信のトラブルを事前に感知し、エンドユーザーに影響が及ぶ前にネットサービス提供企業に通知するサービスの提供。仮想の代理ユーザーを実装して実際のエンドユーザーの行動をシミュレーションすることによって、潜在的な問題を事前に検知することができ、またブラウザベースのダッシュボードによりリアルタイム監視することができる。3ターゲットまでは無料のフリーミアムのビジネスモデルであり、既にカネーギーメロン大学や米国ピッツバーグのアクセラレータalpha labなどから計545K USDを調達済とのこと。
■Shypmate(YC W16) 領域:19. Developing Countries
-アメリカでオンライン販売されている商品を、シッピング対象外のガーナやナイジェリアなどの新興国でも受け取れるサービス。アメリカ以外の国にいる購入希望者は、その商品のリンクを張り付けるだけで、5-10日で商品を届けてくれる。実際には旅行者がその商品をアメリカ外の対象国に運ぶことになり、旅行の日時と場所を登録しておいて自分のカバンにその商品を詰めて運ぶとその70%を受け取ることができる。ファウンダーはガーナやナイジェリア出身。シェアリングエコノミーや越境ECという文脈でも捉えることができるサービスで非常にユニークです。実際には解決しないといけない問題はあるのでしょうが、だからこそスタートアップの取り組くべき領域であり、今後の展開が楽しみなサービス。
■Poppy(YC W16) 領域:8. Education
-信頼できるベビーシッターを見つけオンデマンドで依頼することができるサービスを提供。従来であれば、信頼できるベビーシッターを探して評価するのに膨大な時間を必要としたところ、このサービスでは登録されているベビーシッターを、保有する資格や経験に基づき保証し、7つのプロセスで簡単に探すことができる。値段も固定されており、 $16/hour for one childで$17/hour for twoとなっている。シアトルからはじめ、対象都市を広げていく方針とのこと。近しいサービスとして、日本でも元トレンダーズの経沢さんがキッズラインというベビーシッターサービスを展開しています。
■Instabug(YC W16) 領域:16. Programming Tools
-アプリ開発者向けに、アプリリリースの前後でバグを見つけて改善するサービス。そのアプリのエンドユーザーがモバイルを振ってスクリーンショットとバグ報告をアプリ内から送ることができるようになり、そのバグ報告を簡単に受け付けられる機能を一行のコードを入れるだけで実装できるSDKなどを提供している。エジプト出身のチーム。
■OpenTrons(YC W16) 領域:13. Science
-生物学者などの研究者の雑務をロボットにより自動化・効率化するサービスの提供。それにより研究者はより生産性の高い作業にフォーカスすることができる。mixbioというブラウザベースのプロトコルで、ソフトウェアエンジニアでなくともその研究用ロボットの設計を簡単に行うことができる。OT-Oneという基本の製品を一台3000ドルでウェブサイトにて販売している。過去にはkickstarterでのキャンペーンも行っている。ファウンダーの一人と少し会話しましたが、日本の企業とも連携して製品を日本にも提供しているとのこと。なお、今回はバイオテックやヘルスケアのチームも10–15程度はいるとのことでしたので、このチームもさることながら、他のチームも楽しみです。
■Petcube(YC W16) 領域:3. Robotics
-家にいなくてもペットと遊ぶことができるデバイスPetcube Cameraの提供。Petcube Cameraの金額は$199で、カメラと合わせてモバイルデバイス側からレーザーポインター(ペットには安全なもの)をコントールしてペットとインタラクティブに戯れることができる。 2013年のHAXLR8R hardware accelerator出身で、今までにAlmaz Capital, Y CombinatorやAVentures Capitalなどから計3.8M USDを調達している。
■LendEDU(YC W16) 領域:21. Financial Services
-学資ローンを借り換えることができるマーケットプレイスの提供。今まで手続が煩雑であった学資ローンの借り換えについて、複数の金融機関や大学関係機関からの支払条件などをウェブサイト上で一括で簡単に比較検討することができる。このマーケットはアメリカでも大きいようですね。
■Truebill(YC W16) 領域:21. Financial Services
-定期購買のサービスを一括管理できるオンラインサービスの提供。サブスクリプションの可視化と不要なサービスの解約などを行うことができる。銀行口座、クレジットカードまたはpaypalアカウントでログインする。競合に Trimがある。ファウンダーは今後サブスクリプションサービスは増加していくと考えており。、このサービス上でよりよりサブスクリプションへの乗り換えなどの提案をうけることができる。このサービス自体は無料であり、サブスクリプションサービス提案のアフィリエイト(紹介)による、いわばzenefitsのようなビジネスモデルと考えられます。
■ Sendbird(YC W16) 領域:16. Programming Tools
-アプリ内やウェブ上で、エンドユーザーとサービス提供者との間のメッセージングとチャットの機能を実装できるAPIを提供。1000MAUまでは無料のフリーミアムモデル。競合に2013年のTechCrunch Disruptで優勝した Layerがある。YCのBtoBチームが自社ウェブサイトでよく使っているintercom(このエントリーの一番下に追記あり)とも近しいサービス。
■Acre Designs(YC W16) 領域:1. Energy
-電気のいらないスマートホームの提供。太陽光発電により電気をすべて賄い、水も従来の70%少なくすることができる。プレハブ風ではあるがモダンでスタイリッシュなデザインとなっており、値段は小型のパッケージ(2Bedrooms, 1Bath1,200 sq ft)で400K USDから。オンラインでの販売を原則とする。
■Yearbook(YC W16) 領域:該当なし
-造園業のためのソフトウェアをクラウド上で提供。今まで手作業で行われていた、営業支援、クライアントへの請求、作業者への支払、作業者の管理や工数記録などの機能をワンストップでブラウザ上から提供する。
■Vinebox(YC W16) 領域:該当なし
-ワインをグラス単位で定期購買できるサービス。3杯分のワインが小分けにされて毎月郵送で受け取ることができ、値段は毎月30–35ドルとなっている。似たようなワイン関連のチームとしてはYC W15のプレミアムワインECのUnderground Cellarがあります。
■STILT(YC W16) 領域:21. Financial Services
-海外からアメリカに住んでいる人(expats)向けに、25k USDまで、7.5–15%の金利で担保なしでの借り入れを行うことができるサービス。そもそもそのような海外からの居住者はクレジットカードベースでの借り入れができず、資金借入についてのニーズがあるという背景があります。
■Bonsai(YC W16) 領域:該当なし
-フリーランサー向けに、契約管理と請求管理が簡単に行えるツールをウェブ上で提供。契約に関しては、知財の所属や支払条件などについて、選択式でウェブ上の契約書を作成できるようになっている。請求管理については、StripeやPayPal及びビットコインのCoinbaseなどのACHと呼ばれる決済機関と統合されており、低い手数料で請求機能を使うことができる。今までで1万人のフリーランサーがこのサービスを利用している。契約管理機能は無料で請求管理機能は請求書一枚あたり1ドルで利用できる。
以上、2016年2月27日(JST)まで公表されているYC W16のチームについて、簡単なコメントも合わせて概要を紹介しました。この中だとShypmate、Truebill、Bonsaiあたり面白そうですね。
ちなみに、いくつかのチーム(特にBtoB系)のYCチームが導入しているウェブサイトでの下記チャットツールintercom(サイトの右下に吹き出しポップアップがでるもの)はとても便利で、日本のベンチャー企業もBtoBマーケティングにおいて活用の余地がまだあるように思います。ご参考までに。
今後も、ある程度YC W16のチームの公表がまとまった段階で更新予定です。