YC W17のdemodayと注目20チーム

Tadaaki Kimura
trend note
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15 min readMar 26, 2017

こんにちは。Y Combinator(以下YC)の直近のbatchであるYC W17のdemodayが、2017年3月20日・21日(共にPT)の日程にて、シリコンバレーのcomputer history museumにて開催されました。直近のYCの動向は先週mediumで書いたこちらのエントリーも参考にしてもらえればと思います。今回もご招待頂き参加して参りました。今回batchであるYC W17の特徴としては、1.インド・アフリカ関連のチームが更に増加(全体の1/3程度でしょうか)2.既存テクノロジーを従来市場(TAMは大きい)へ適用させるチームが顕著3.従来YCの主な注力領域であった、エンジニア関連のIT toolやappは更に減少傾向に、があげられます。当日のdemo dayの内容は、英語にてtech crunchにてday1 / day2ともにカバーされています。

まずはYCの公式blogに紹介されているYC W17のチームを関連情報含め日本語で要約しましたので、ご参考まで。

  1. Claire(YC W17) https://www.meetclaire.co/

小売業者が製品開発と在庫状況を最適化することを可能にするための、機械学習を搭載したチ需要予測サービス。アメリカでおよそ60%の新製品が売り出しに失敗し、1.6T USDの損失を生み出しているという状況を受け、業者が事前にどのような製品をどのくらいの数量、どのくらいのコストで製造すればよいのか予測するのを助けるサービスが必要と考えたそうです。顧客にチャットボットの質問に答えてもらい、機械学習を用いて有用な回答とそうでないものとに分類することで、より膨大なサンプルを処理でき、最適なソリューションが得られるというサービスになります。

2. Peer5(YC W17) https://www.peer5.com/

PtoPでの動画配信のためのCDN(Contents Delivery Network)の提供を行うチーム。全世界で1億人以上が同時視聴しているテレビ放送のような、膨大なユーザーを支えられる規模のCDNはまだ存在しておらず、プラグインなしでWeb上でのリアルタイムコミュニケーションが盛んになった今こそ必要なサービスであると考えているとのこと。

3. WaystoCap(YC W17) https://www.waystocap.com/

アフリカ版アリババなる、BtoBのオンラインマーケットプレイスを立ち上げたチームになります。アフリカ諸国の膨大な食料輸入需要に目をつけ、輸入業者がより品質のよい輸入品を選別できるようにと、サービスを立ち上げたそうです。また、建設業や製造業関係の輸入業者もターゲットにサービス拡大を進めているようです。もともとはエジプトとスペイン間の使用済み食料油の取引を仲介している業者でしたが、そのビジネスの中でアフリカの300B USDとも言われる潜在的な輸入需要に気がついたとのこと。

4. Symple(YC W17) https://www.getsymple.com/

Paypal傘下で急成長したPtoP送金サービスであるVenmoのBtoBヴァージョンを立ち上げたチームになります。主なゲットとなる顧客はレストランやバーを経営する中小事業主で、平均して75–100K USDの請求書を毎月受け取り、銀行口座と接続しての支払いをしているそうで、その業務効率化のためのサービスになります。収益モデルとして、請求書1件につき4USDの手数料を取る仕組みになっているようですが、最初の6ヶ月は手数料も調整してくれるとのこと。

5. RankScience (YC W17) https://www.rankscience.com/

Googleといった検索エンジンを利用して顧客を獲得しているビジネスユーザーのための、SEO対策サービスを提供するチームになります。顧客は主にECサイトやマーケットプレイスの運営者、位置情報サービスの提供者などで、HTMLの最適化などを通して検索上位に表示されるよう、Webページの改善を自動で行ってくれます。

6. Kudi(YC W17) https://kudi.ai/

チャットボット機能を搭載したアフリカ版Paypalを立ち上げたチームになります。ユーザーは、従来の送金サービスとKudiをリンクさせることで、「〇〇の定期購読の更新」や「母親に~円送金」といった簡単なメッセージ送信だけで取引を完了させることができます。また、現在のところサービスはFacebookのMessenger上などで機能するとのこと。

7. Hogaru(YC W17) https://www.hogaru.com/

ラテンアメリカ地域におけるオフィス清掃を依頼するためのサービスを提供するチームになります。ラテンアメリカにおいては、インフォーマルな業者が多く存在しているため、事業者はそのようなサービスを利用するか、不便な既存の業者に依頼するしかありませんでした。Hogaruはそのような状況において、しっかりとした選考を経たHogaruのメンバーによるサービスを提供してくれます。

8. Elemeno Health(YC W17) http://www.elemenohealth.com/

最前線の医療チームに向けたヘルスケアのアシスタントサービスを提供するチームになります。病院の医療チームがその実践例を集め、チェックリストを作成し、それを全チームで共有するのを可能にしてくれるサービスで、チームには現役の医者や元ICUのディレクターも入っているようです。

9. Playment(YC W17) https://playment.io/

オンデマンドでのクラウドソージングマーケットプレイスを運営するチームですが、Amazon Mechanical TurkやCrowd Flowerといった著名なサービスと異なり、プロジェクトの進行を最後までSLAに従って保証してくれるというところに同サービスの独自性があります。特にEコマースにおけるラベリング業務での効率化に強みを持つようで、Appを利用したリアルタイムでの作業進行と、ソフトウェアによる作業の質の保証が行われ、従来の半分のコストで約10倍の作業効率を実現できるそうです。既にインドのFlipkartなどとは300K USDの契約を締結しているようです。

10. Hivy(YC W17) https://hivyapp.com/

オフィスマネージャーが従業員からの業務必需品の要望を統括し、その購入を透明化して行うためのプラットフォームを提供するチームになります。各従業員は食べ物や設備などの必要品をサービス上でマネージャーにダイレクトに送ることができ、すでにサービス上にインテグレートされている45以上の売り手の中からその注文を受けてもらう業者を選ぶことができます。現在既にSlack, Eventbrite, Gigsterといった企業が同サービスを利用しているようです。

11. Bulk MRO(YC W17) https://www.bulkmro.com/

インドの法人向けのサービスで、事業で必要となる産業用品の調達を一手に引き受けてくれるサービスになります。主な顧客は複数のセクターに跨って事業を展開している大企業で、その数百にも上る発注を統括するプラットフォームを提供してくれるそうです。

12. MDAcne(YC W17) https://www.mdacne.com/

個人向けニキビケアのappを提供するチーム。ニキビを経験したことのある人のうちおよそ90%の人が皮膚科にかかることはなく、不適切な処置を施してしまう状況にあるようで、MDAacneはユーザー一人ひとりに合った最適かつ簡単な処置法を教えてくれ、さらにその経過観察までしてくれます。

13. Supr daily(YC W17) http://www.suprdaily.com/

インドで展開している牛乳の配達サービスを手掛けるチーム。インドの都市部における従来の配達サービスはその品質面において信頼性に欠けるため、信頼のおける酪農業者とユーザーを直接結びつけてくれるといったサービスになっているようです。また、必要に応じて注文を自由にできるというのもサービスの魅力となっています。

14. Bitrise(YC W17) https://www.bitrise.io/

アプリ開発者のための業務効率化サービスを提供するチーム。iOSやAndroid上で機能するアプリを開発するあらゆるデベロッパーが既に同チームのサービスを採用しているようで、ユニットテストの自動化や、テスターの分配、コードが変更された際のアプリケーションの自動アップロードなどを通じて、各デベロッパーは1日で約1時間の時間効率化が望めるといいます。

15. Bulltin(YC W17) http://bulletin.co/#/bulletin/home

あのアップルストアのように、製造業者のために特別な展示スペースを提供しているチームになります。ユーザーはApply後に製品をBulltineに送ることで、その製品を展示スペースにおいて売り込んでもらえるというシステムになっているようです。利用可能な展示場所やその詳細もHP上に掲載されています。

16. Lively(YC W17) URLなし

銀行の認可を受けて、HSA上にある預金を必要に応じて使えるようにしてくれるサービスになります。HSA(Healthcare Service Account)は将来的に435B USDにも達すると言われている巨大市場で、Livelyは同時にヘルスケアのマーケットプレイスや医療費の支払いまたは預金のためのプラットフォームも手掛けています。

17. Scaphold(YC W17) https://scaphold.io/

企業がアプリケーションを立ち上げる際に、システムやネットワークの統合をサポートしてくれるAPIを開発したチーム。既にナショナル・ジオ・グラフィックやVISAを法人顧客として抱える同チームは、インテグレーションのメンテナンスをバックスクリーンで行ってくれるGraphQLというソフトを開発し、毎日200件を超えるインテグレーションのプラットフォーム業務を扱っているそうです。

18. Marketfox(YC W17) https://www.marketfox.io/

モバイル上で機能する、マーケティング自動化のためのプラットフォームを提供するチーム。Email上のみならず、その他のモバイルもしくはweb上のあらゆる媒体において機能するように設計されているとのことです。

19. Floyd(YC W17) https://www.floydhub.com/

ディープラーニングをビジネスに導入するためのPaaSを提供するチーム。ファウンダーは2009年当初からディープラーニングに関する知識を深め、それをビジネスに導入するための方策を考えてきたといいます。ディープラーニングを導入するためのシステム構築は通常煩雑なものですが、PaaSであればそのハードルはとても低くなるため、4週間前のサービス開始時点から現在までに既に2500件を超える契約が見込まれているそうです。

20. ServX(YC W17) http://servx.in/

インドにおいて、車の修理を委託してくれるサービスを運営するチーム。インドでは車が故障した場合、公認の修理工場で高い修理代を払うか、地域の修理工場で低価格低品質の修理を受けるかの2択しかありませんでした。ServXのAppを使うと、オンデマンドで修理依頼ができ、さらに修理の品質保証までしっかりしてくれるそうです。

21. Fibo(YC W17) https://www.fiboapp.com/

紙媒体を用いた契約、スケジューリング、報告書などが未だに慣行として残っている建設業及び造園業において、デジタル化を促進するためのサービスを立ち上げたチーム。Fiboのサービスを通して契約段階からデータ入力を進め、スケジュール、リマインダー、そしてレポートなどを全従業員がそれぞれの端末を通じて共有することができるシステムを構築してくれます。

22. Wifi Dabba(YC W17) http://www.wifidabba.com/

インドにおいて、100MBあたり0.03USDという非常に低価格でのWifiサービスの提供を開始したチーム。先進国の技術を輸出する際、途上国では度々その市場のローエンドに合わせたダウンサイジングやディグレードが必要になりますが、Wifi Dabbaは高速通信回線を切り売りするという手法でそれを実行したチームです。また、ターゲットにする市場も人が多く集まるような場所ではなく、街中のカフェやベーカリーといった日常空間を狙っていくとのこと。

23. Moneytis(YC W17) https://moneytis.com/

PtoPでの海外送金サービスを手掛けるチーム。ユーザーはMoneytisのWebサイトを訪れて金額と宛先を入力するだけで、Moneytis側で最適な業者を選択し、送金を受託してくれるというサービスになっています。海外送金サービスは数多ありますが、手数料等の比較が難しいという現状を受け、立ち上げたサービスです。最も多く送金業務を手掛けているのは銀行ですが、その手数料もまた最も高いものであり、ユーザーはMoneytisを利用することで手間をかけずに手数料の安い最適なサービスを受けられるようになるというメリットがあるようです。

24. Tolemi(YC W17) http://www.tolemi.com/

地方政府、自治体が都市計画のために必要となるデータの収集と構築を補助してくれるサービスを展開するチーム。不動産や街路等に関する情報を収集し、それが都市計画の判断において有用な形になるまでデータの統合と構築をサポートしてくれるシステムです。都市再生は地方自治体にとって財政上も非常に重要な課題であり、Tolemiを利用することで意思決定にかかるコストを大幅に削減できるそうです。

25. Credy(YC W17) https://www.credy.in/

インドにおけるPtoPでのソーシャルレンディングサービス。ターゲットとする借り手側の顧客は、冠婚葬祭や医療費などで緊急の資金策に追われることになった人々であり、貸し手側の顧客は安全かつ高い利回りでの投資先を求める人々です。PtoPでのソーシャルレンディングにおけるリスクは不正なユーザーによる資金詐欺であり、Credyでは生体認証技術を導入することでそういったリスクに対処していくといいます。登録費等はかからず、手数料も非常に安く設定されており、最近政府系銀行によってPtoPレンディングが解禁されたことから、注目のサービスです。

26. Upcall(YC W17) https://www.upcall.com/en/?

主に法人向けに電話業務を受託するサービスを展開するチーム。電話で顧客とコンタクトを取ることは、メールによるそれに比べて非常に便利な反面、不在のリスクを考えると非常に手間のかかります。Upcallはそんなユーザーに代わって電話業務を代行し、即座にフィードバックをくれるそうです。ユーザーはスクリプトと、ターゲットを選択するだけでよく、LGを始めとする350社以上の法人顧客が既にサービスを導入したとのことです。

27. Kangpe(YC W17) https://www.kangpe.com/

アフリカに在住する人々が、モバイルAppやウェブサイト、SMSを利用して公認の医師とチャットでコンタクトをとることができる医療サービスを展開するチーム。現在同サービスはナイジェリア、ガーナ、ケニヤの3カ国でローンチされていて、これまで当該地域に住む人々の大多数が長い時間をかけなければ医療機関にたどり着けない状況でしたが、Kngpeを利用すればこれまでの類似する先進国でのサービスに比較しても非常に安いコストで医療サービスが受けられます。

28. Wifi.com.ng(YC W17) http://wifi.com.ng/

アフリカにおいてインターネットのインフラ構築を行うチーム。電力、医療サービスと並んで、アフリカ諸国にとって課題となっているインターネット環境の整備、これを解決すべく、Wifi.com.ngの設置するベースステーションは太陽電池で駆動するように設計されています。同チームはすでにナイジェリアのラゴスにおけるネット環境のうち30%をカバーする実績を持っているそうで、1億2千万人ほどの規模になるスマートフォン所持者に向けてよりサービスを拡大させていくとのことです。

いかがでしたでしょうか。個人的なベスト20は、上記にあるうちのSymple、ServX、Supr Daily、Bulltin、Wifi.com.ng、Fibo、Credy、Tolemi、Moneytisに加え、米国におけるBtoB向けエクスプレス配達ドローンのVolans-i、乳牛向けウェアラブルデバイス管理プラットフォームのCowlar、今回batch唯一のサーバーセキュリティ関連であるプラグインツールApozy、元Zenefits社長による従業員の入退者ID管理プラットフォームのRippling、公共交通機関向けチッケトモバイルサービスのToken Transit、家庭用採血キットのInnaMed、プレハブ住居キットのBoxouse、黒人女性向けヘアスタイルコミュニティのTress、動画販促appのCartcam、オンデマンドの運転手プラットフォームのSycamore、若者向けチャットボットPFMのpenny。これら含むアメリカのシード/アーリーステージのスタートアップのトレンドについては、また機会をつくってご紹介できればと思います。

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