父子家庭のシデムシ
シデムシという昆虫がいます。シデムシの中には社会性を持つ属があります。つまり、該当するシデムシは家族で暮らし、子育てをするのです。ハチのような大家族ではありません。人間と似たような家族構成です。
また、シデムシは動物の死体に集まる虫です。ネズミの死体が転がっていたら皮を丁寧に剥いで肉団子を作ります。ごちそうですね。
そのシデムシについて、様々な環境で飼育し、その社会性を観察し、さらにシデムシをすり潰してトランスクリプトーム解析するという研究が流行っているという話を、コロンビア大で生態学を専攻している友人から聞きました。
トランスクリプトーム解析とは、簡単に言うとmRNAを解析して遺伝子の発現を網羅的に把握することです(よくわからない場合は飛ばして先を読んでください)。
父子家庭の場合、父シデムシをすり潰してトランスクリプトーム解析をすると普通の家庭の父シデムシでは発現しなかったいくつかの遺伝子について発現量が多くなるそうです。
母親がいないと「おれが頑張らないとだめなんだよな、よっしゃ子育てしたるで!!!」となるのでしょうか。そしてそれは遺伝子の発現によるものなのかもしれません。
人間をすりつぶすことはできませんが、昆虫や甲殻類ならば(技術的には)可能です。さらに、近年はトランスクリプトーム解析などに使われる機器の発展が目覚ましいので、このような網羅的にすべて解析してしまう研究が従来とは比べ物にならない短時間でできるようになっています。
するとこのシデムシの例のように、遺伝子レベルでの研究を様々なテーマに適用できるようになります。今後も面白い研究成果がゴロゴロと出てくることでしょう。
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