The Lean Startup

Hidemasa Oda
UeSaku Diary
Published in
8 min readNov 20, 2015

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今回紹介する書籍は Eric Ries 著 “The Lean Startup” です。
2011 年に Crown Business から出版されています。
2012 年に日経BP社から日本語訳「リーン・スタートアップ」が出版されています。

本書によると Lean Startup の5原則 “The five principles of the Lean Startup” は
1. entrepreneurs are everywhere
2. entrepreneurship is management
3. validated learning
4. build-measure-learn
5. innovation accounting
とされています。

本書は3部構成になっており、上の5原則を説明しています。

Eric Ries が IMVU 在籍時に辿り着いた lean startup という手法について簡単に解説したいと思います。

Eric Ries

Eric Ries は Silicon Valley のシリアルアントレプレナーです。
Yale 大学在学中に立ち上げた Catalyst Recruiting が彼の最初の起業です。
彼は学部を休学してまで Catalyst Recruiting の運営に関わりましたが、事業は失敗に終わりました。[3]

彼は、学位取得後、何社かスタートアップを経験し、2004 年に IMVU の創業に踏み切ります。
IMVU は日本では馴染みがないですが、3D アバターを用いて見知らぬ人々との交流を楽しむ online social entertainment です。
MAU が 3M います(1月に1回以上利用するユーザーが世界に 300 万人いる)。[4]

Lean Startup

Eric Ries は、IMVU 在籍中に lean startup の考え方に辿り着いたとしています。
Lean Startup は「サイクルタイムが極度に短い、顧客の望みを中心とする(顧客から望みを聞くわけではない)、意思決定を科学的に行うといった特徴を持つ方法である。」とされています。[1]

実は、Lean startup については Wikipedia の “Lean startup” の説明の方が簡明です。
“Lean startup is a method for developing businesses and products first proposed in 2011 by Eric Ries. Based on his previous experience working in several U.S. startups, Ries claims that startups can shorten their product development cycles by adopting a combination of business-hypothesis-driven experimentation, iterative product releases, and what he calls validated learning. Ries’ overall claim is that if startups invest their time into iteratively building products or services to meet the needs of early customers, they can reduce the market risks and sidestep the need for large amounts of initial project funding and expensive product launches and failures” [2]

Validated Learning

“validated learning” はアイデア(“leap-of-faith assumption”)を検証するプロセスです。
信念に基づいてビジネスを推し進めるのは事故の元です。
必ず、仮説を小さく検証しながら、徐々にビジネスを前へと進めます。

検証は科学的に行われる必要があり、行動につながる評価基準 “actionable metrics” の測定により検証をします。

測定には “cohort analysis” の一種である “split test” を用います。
“cohort analysis” は “prospective study” の一種です。
“split test” は “A/B test” とも呼ばれます。
例えば、仮説(新機能)X の効果を調べたければ、顧客を2つのグループ A と B に分け、グループ A には新機能 X を提供し、グループ B には新機能 X を提供しません。
一定時間経過後(例えば2週間後)、グループ A と グループ B の “actionable metrics” を測定して、新機能 X の効果を検証します。

(余談ですが、顧客には、グループに分けられている事を悟られないようにする必要があります。「グループ A に新機能が提供されていることを秘密にする(こっそり実装する)」手法と「グループ B にも新機能が提供されていると嘘をつく(ほんとは実装しない)」手法がありますが、ソフトウェア業界では専ら前者が利用されることが多いです。これは、後者の場合、「実装した」という事実がグループ A と グループ B に作用するため、「実装していなかった」時の過去の metrics との比較を難しくてしまうからです。)

Minimum Viable Product

“minimum viable product” は “validated learning” を可能にする最小単位です。
仮説を検証するのに必要最低限な実験、または、その実験をするのに必要最小限のプロダクト(プログラム)を指します。

MVP の例として本書で取り上げられている例は Zappos です。
Zappos は 1999 年に創立された Las Vegas, Nevada に本社を置く online shoe shop です。[5]
Zappos 創業者の Nick Swinmurn は「人々はオンラインで靴を購入するのか」という仮説を検証するために、近所の靴屋の在庫を写真に撮り、写真を彼のウェブサイトに掲載し、顧客から購入依頼があれば、靴を靴屋の売値で買取して、直接顧客に販売しました。
この小さな試行が MVP です。
彼は、この MVP を通じて、仮説「人々はオンラインで靴を購入する」は正しいと判断したのです。

大規模にプロダクトを開発するより前に、仮説は本当に正しいのかを検証する必要があります。
仮説が正しいかを検証する最小限の労力が MVP なのです。

Pivot

仮説の検証を終えて、経営者が経営方針を変更することを pivot と言います。

Pivot の例として著名な例としては Groupon があります。
Groupon は 2008 年に創立された Chicago, Illinois に本社を置く global e-commerce marketplace です。[6]
Groupon の pivot については、Business Insider の下の記事が参考になります。
GROUPON’S BILLION-DOLLAR PIVOT: The Incredible Story Of How Utter Failure Morphed Into Fortunes
Groupon は The Point の spin-off として誕生しました。
The Point は本来 online group action を取るための social media platform でした。
The Point の本業は失敗に終わりましたが、創業者は The Point が持つ「共同購入としての側面」に将来性を感じていました。
そこで、「The Point (Groupon) の本社の1階のロビーのピザ屋で、ピザ1枚分の代金でピザ2枚を購入できる」という取引(キャンペーン)を開始した所、20人の賛同者を得ることができました。
初めての取引の規模は小さいものでしたが、創業者は「人々はオンラインで共同購入をする」という仮説は正しいと判断し、ビジネスをオンライン共同購入へと大きく変更することになります。

Groupon の pivot については、上の Business Insider の記事でも引用されている、Wall Street Journal の下の記事も参考になります。
Groupon’s $6 Billion Gambler

References

[1] “The Lean Startup”, Eric Ries, 2011
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Lean_startup
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Eric_Ries
[4] http://www.imvu.com/about/faq.php
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Zappos
[6] https://en.wikipedia.org/wiki/Groupon

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