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Unchained
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13 min readApr 24, 2019

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Web3.0時代に政府は必要か

〜持続可能な自律エコシステムのあり方〜

PolkadotやEthereumをはじめとしたWeb3.0を目指すプロジェクトのガバナンスについての考察記事です。Freerider問題に代表される公共プラットフォームを運営する上での課題や、Web3.0でのプロトコルの哲学についての意見を述べています。まだ未完成なのは読者の方の意見を聞いて、積極的に取り入れたいからです。こんな問題があるのか〜程度に読んでいただいて、思ったことなんでも投げていただけると幸いです。

  1. 現状のクリプトエコシステムの課題
  2. 哲学の転換?
  3. Web3.0時代のプラットフォームの姿

1. 現状のクリプトエコシステムの課題

Etheum創業者のVitalik Buterinが Microsoft研究者Glen Weylとハーバード経済学Ph.D. Zoë Hitzigと共同で公開した「Liberal Radicalism」は暗号通貨エコシステムで蔓延しているFreerider問題(also a.k.a. collective action or public goods)の提示から始まる。Freeriderとは公共物を貢献などのコストなしに利用する人や組織を指し、経済学上での公共物とはnon-excludableかつ、non-rivolourious である — つまり個人の利用を妨げたり、誰か一人が利用することにより他の者の利用を妨げることはできない特徴を持つサービスやモノを指す。i.e. 国防や公園。

他の誰でもないEthereumの創業者であるVitalikがこのFreerider問題に強い関心を示している理由は、Ethereumをはじめとする寄付やボランティアに依存している暗号通貨エコシステムのプラットフォームがFreeriderやエコノミー設計問題により存在の危機に晒されているためだ。

Ethereumが直面する課題

いまや企業や個人がブロックチェーンサービスを考える時に思いつくのはまずEthereumだろう。Ethereumはデプロイやトランザクションの際にgasと呼ばれる手数料が少しかかるが、一度デプロイしてしまうと半永久的にネットワークに残り続ける。蓄積されるブロックはフルノードを維持するコストを圧迫し、その結果、根本的なスケーラビリティや相互互換性などの開発やインフラ整備を妨げる要因となっている。Ethereum2.0の開発がこれだけ遅れている原因ではないか。Ethereumが持つ公共物としての特徴と未熟な税収システムは、多くのネットワークへの参加者と同時に、Freeriderと呼ばれるエコシステムへの貢献なしにサービスを利用する者たちの参入も招くこととなった。

これはEthereumに限った話ではなく、他のスマートコントラクトプラットフォームやLayer2に存在するDAppsを含むクリプトエコノミー全体の資金不足も要因していると考える。<>によると、クリプトスタートアップで働く給料は、普通のスタートアップで働く給料のわずか60%程度であり、多くのクリプト企業が資金不足のため困窮しているという。一時のICOブームで詐欺プロジェクトが横行したために本来支援されるべきプロジェクトが開発を続けられないのは非常に嘆かわしい。

https://twitter.com/preston_vanloon/status/1075174335554469888

一部のクリプト投資家の間では、EthereumはEOSのように企業-likeに運営されるべきだと言う声も上がっているが、それに対してVitalikは「もしBitcoinが会社のように運営されていたなら、成功していたと思うかい」と発言して批判している。

企業として運営するかはともかく、現状のEthereumの運営方法に批判的な意見をもつ人はたくさんいる。VitalikがPrylabsのPreston Van Loonに”YOLO”と呟き1000Ethを無償で送る行為や、Ethereum Foundationが支援する企業を決める基準も疑問視されている。

この後、くれくれが殺到し、VitalikはNon-giver of Etherと言う名前に変更したのは記憶に新しい。

この問題について詳しく知りたい方はUnchained主催のVitalikとのパネルディスカッションで取り上げられているので一度目を通してみてください。

2. 哲学の転換?

Web3.0FoundationのJack Plattが公開した「DApps should pay to use platforms — not the reverse」 (DAppsがプラットフォームに支払うべきだ––反対ではなく)という記事で、このEthereumのフリーライダー問題に言及し、プラットフォームが無料であるという哲学の転換が起こっていると述べる。

Jackの主張をまとめると:

• 現状のEthereumのようなプラットフォームはLayer2のDAppsがリソースを吸い取り、Layer1の開発が進んでいない

• ブロックが増えるにつれてFullNodeを維持するコストが上がっている

• 解決策として、国が企業から、AppStoreが開発者から税を徴収するように、何らかの方法でLayer1に資金を回す必要がある。

• アプリや参加者から使用料金を徴収することにより、共有インフラはよりユーザのニーズに答えられるようになる。

• PolkadotではParachainデプロイにDOTをロックすることにより、間接的税収の仕組みを採用。(ロックされていないDOTの価値が上がるため、機会コストで支払われる。)

彼の言っていることは確かにLayer1に資金を回す上では解決策になるかもしれないが、このようなプラットフォーマーの税収を本当にLayer2、Layer3が受け入れるのだろうか。中央集権的な税収が嫌いな者がEthereumやBitcoinの分散主義的な魅力に惹かれてきたのではないだろうか。Layer2は税収をカバーするためにさらに使用料を上層から集める必要があるため、根本的な課題解決に繋がるのかなどの疑問が湧く。

Joel Monégroが公開したFatProtocol論では、「Layer2の成功はさらなるネットワーク参加者や資金を集め、最終的にはプロトコル層の成功に繋がる」と述べられているが、それは本当に正しかったのか。この論説がEthereumで機能していないのは、分散型自立エコシステム上の参加者のインセンティブ設計やエコノミー設計が正しく行われていなかったからではないか。

Polkadotの税収についての補足

Polkadotはデプロイは期間限定オークション形式で料金がかかるが、計算処理には一律の料金システムを採用している。これはEthereumのデプロイの安い料金、高い計算コストと全く逆のシステムである。デプロイにお金がかかるため、有用でないチェーンは維持されることなく排除されるため、ネットワークの維持が比較的簡単に行える。Relaychain内の一律計算コストは、パラチェーン内の自由な計算コストの決定を可能にするため、ユーザは無料でパラチェーンを利用することが可能になる。これは革命的な設計であり、社会適応されるにはプラットフォームはユーザへの従量課金制を止める必要があると考える。

Web3.0時代のプラットフォームの姿

筆者がぼんやり考えているWeb3.0時代のプラットフォームの姿:

  • 中央集権的な中間者の存在なく、ネットワーク参加者全体で公平にネットワーク維持費や開発費が捻出され、その資金がエコシステムの最適成長に繋がるプロジェクトに配分される。(Quadratic Votingなどを使ったDAOFundingシステム)
  • 参加者は自分のインセンティブのためだけに動くが、それによりエコシステムの継続的な成長と維持が達成される(PolkadotのValidator, Collator, Fisherman, Nominator)

ヒントになるかもしれない情報

もっとリサーチする予定のpossible solutionです。特にLiberal RadicalismのQVを自律組織に実装するというのに可能性を感じています。それぞれ記事が山ほどかけるほどの内容なので気長にやっていきます。

• Quadratic Voting

「Radical Markets」のQuadratic Votingは個人の嗜好を投票重み付けしたもので、経済的合理性を民主主義政治に応用することができる。参加者は各自所有のStakeに応じたCreditを与えられ、それを使って投票を購入することができる。ここが特殊なところで、票あたりの価格はn²となる。1票-1credit, 2票-4credit, 3票-9credit, 4票-16credit….と、1票多くごとに限界費用が指数関数的に増加していく。これにより、少数派の意見が尊重され、個人の趣向や価値観が適切に反映されるシステムが実現できる。”最も高い値段をつけた人に決定権を委ねるのではなく、その決定による行動が他者に課すコストのトータルを、決定権を下したそれぞれの個人が分担して支払う形にすれば良い”

• QVをEthereumに実装する

“harness markets and technology to radically decentralize power of all sorts and shift our reliance from authority and to formal rules.”

• Harberger’s Tax

同書で紹介されているは財産の配当の高効率を永久のオークションとself-imposed taxによって実現される。

Dynamic Bonding Curves

ICOはもう時代遅れ?貨幣経済の延長線上にあったクリプトエコシステムからの脱却により真のDAOの誕生の可能性。

• Aragon/Colony

オープン組織のためのプラットフォーム

• Moloch DAO

現状のMolochDAOでは一部のみがpoolしており、ボランティアの現状では維持可能なプラットフォーム開発は実現困難と考えられる。上のような何らかのDecentralized Autonomous Taxation(DAT)システムをネットワーク参加者全員に公平にself-imposeさせ、全員参加型のガバナンスシステムに経済的目的を達成させることが有効な解決策と考えられる。

• MakerDAO

社会実装にはボラリティが低い資産としての要素が不可欠。

To Be Written

• DAT(Decentralized Autonomous Taxation)

自律組織で税収を行う仕組み。

Decentralized Thereom of Taxation, http://www.nbp.pl/badania/seminaria/17iv2015-1.pdf

decentralized autonomous organizations (DAOs) to build a world of fairer games with more winners, that can enable greater wealth distribution and equality.

税収システムの考察

現実のケースを見てみると、税金が高い国ほど貧困が少ない傾向にある。税収の歴史はエジプトから始まり、間接、直接、ものや土地、通貨など様々な税収の仕組みが実験的されてきたが、正解と言えるものはまだ発見されていない。

Polakdotにはステイクホルダー、投票、協議会など我々の社会をモデルにしたようなシステムが存在する。現状のPolkadotシステム:オークションICO、Parachainデプロイメント、検証者選出を省みるに、現状の資本主義社会の勝者がそのままプラットフォームでも勝者となるお金持ちゲームになっているように感じる。どれもDOTを多く持つプレイヤーが富を得やすい構造になっており、それは現実の企業や組織がエコシステムを牛耳る危険性を孕んでいるのではないか。

Zero-marginal-cost societyが実現されない限り、ネットワーク参加者からのTaxは基本的に必須になるだろう。ただし中央集権的・不透明でないシステムを作れるようになるのがブロックチェーン技術を利用できるところ。技術の利用により生まれる多くの小さい経済圏では、参加者は何らかの形でコミュニティに貢献することが求められ、貢献度合いに応じてインセンティブとなる報酬を受け取れる。

中央集権か非中央集権に限らず持続可能なエコシステム構築には参加者の貢献が必須である。中央集権的であれば、参加者が参加不可能な税金の変更や、不透明な社会システムにより、参加者は搾取されかねない。Web3.0ではシステムを透明な仕組み化とすることにより、個々の参加者が自分の興味(self-interest)によってエコシステムに貢献し、公平で透明な仕組みによって報酬を受け取れるようになるべきである。

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