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Unchained
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5 min readMay 27, 2019

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政府の中抜きによるDAOの誕生

〜共同体によるガバナンスの時代の到来〜

以前執筆した「Web3.0時代に政府は必要か」に関連する記事です。事前に読んでおくと現状のクリプトエコシステムの課題など理解できます。

皆さんはガバナンスガバメントの違いをご存知ですか。どちらもギリシャ語を語源として統治に関する言葉ですが、この二つは全く異なることを意味しています。

コトバンクを参照すると以下のように定義されています。

ガバメントは政府が上の立場から行なう、法的拘束力のある統治システムである。

ガバナンスは組織や社会に関与するメンバーが主体的に関与を行なう意思決定、合意形成のシステムである。

ここで注目すべき違いはエコシステムを統治する主体方法です。

システムの統治という共通の目的がありつつも、前者は政府という組織による中央集権的な方法であり、後者はシステム参加者による非中央集権的な統治を指します。

みなさんご存知のように、DAO(Decentralized Autonomous Organization)はプロトコルの周りに人が集まることにより形成される非中央集権的な自律組織を指します。近年、AragonやMoloch DAOなどのガバナンスの実験や、Ethereum Foundationの不透明な資金運用などをきっかけに、いかに非中央集権的にガバナンスを実現できるかの議論が盛り上がっています。

ガバナンスが必要な理由

ではクリプトエコシステムの参加者で行うガバナンスとは一体なんのことでしょう。Parityの創業者であるDr. Gavin Woodは以下のように言っています。

「ガバナンスとはシステムの上のルールであり、システムの中のルールではありません。」

“Governance is rules over the system, not within the system.” — Gavin Wood

例えばBitcoinのブロックサイズやPolkadotのValidatorの役割などはシステムの中のルールです。ここでいうガバナンスとはこれらシステムの中のルールを変えるためのルールです。

BitcoinやEthereumには決まったガバナンスが存在しないため、スケーラビリティなどの課題を解決することが長年できていません。ある程度の賛成を得て変更するとなっても、フォークを行って新しいチェーンを作ることになるので、エコシステムの価値の分散を招きます。一方、ガバナンスをもつPolkadotやTezosなどのプロジェクトでは変更をするための決まったルールやフローがあるため、スムーズにそのルールに従ってエコシステムの課題を解決することができます。

ガバナンスの目的/役割は主に3つあります。

1. システムの長期的進化・成長

2. リソースの最適配分

3. 外部との関係の維持、管理

1. システムの長期的進化・成長

スピードの速いクリプト界では毎日のように世界中で新しいプロジェクトが誕生、消えていっています。システムの参加者の数と流れ込む資金の量が直接エコシステムの価値となるので、参加者の誘致がエコシステムの成功に必要となります。この生存競争に勝つためには、参加者はより優れたエコシステムに集まるため、システムの継続的なアップデートは必須になります。セキュリティやスケーラビリティの課題もアップデートにより解決することでより競争に優位になります。

2. リソースの最適配分

今後、クリプト界の成長により、世界的大企業のように1000億ドル以上の価値を持つBitcoinのような莫大なリソースを内包するエコシステムが誕生していくと予測されます。企業との違いは意思決定者であるCEOの不在です。Mark ZackerbergやSteve Jobsのいないエコシステムではこれらのリソースをいかに活用していくかの意思決定方法が世界中で議論されています。

Ethereum Foundationのような組織は開発者へのGrants(助成金)を行なっていますが、「Web3.0時代に政府は必要か」で紹介したように、不透明な意思決定や不平等な配分が問題となっています。資金を提供している参加者が納得できるようなガバナンスが必要です。

3. 外部との関係維持、管理

クリプトエコシステムは次のインターネットであり、それぞれが独立した国家のような存在になります。日本がアメリカや韓国などの国との関係性を維持管理しているように、クリプトのエコシステムも他のエコシステムとの関係性を維持、管理するためにガバナンスが必要です。

ガバナンスの課題

ガバナンスに関する議論が絶えず行われている理由は、オンチェーンで行うガバナンスには課題が存在するためです。例えば、投票が外部の貨幣で売り買いされてしまうことや、ICOで多くのトークンを買った人が力を持ってしまい金権政治になってしまうなど。そのため単純なコイン投票では結局、ガバナンス参加者の中央集権化に陥ってしまいがちです。

これに対する施策としてPolkadotの投票ロッキングやGlenが提唱したQuadratic Votingなど、様々な実験実証が行われています。

次の記事ではPolkadotで行われているガバナンスについて解説をしていきます。

5月23日の勉強会登壇で使ったスライドです

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