Hot Pepperミラクル・ストーリーを読んで振り返る楽天市場

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会社の代表に勧められて、「Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方」を読んだのですが、率直に「楽天市場そのまんまだ」という感想でした。

どうしてそのように感じたのか、いくつか引用しながら、この書籍のレビューとしたいと思います。

「日本を元気にする」という共通の事業ビジョン

「クーポン文化を醸成しデフレスパイラルを留めて日本の街を元気にする」
これが『ホットペッパー』の事業ビジョンである。(P44)

楽天も「Empowerment(エンパワーメント)」という標語を掲げ、「地方の商店が銀座の一等地に出店できる時代。それを後押しすることで元気になる。」というコンセプトが楽天市場(≒インターネット上の銀座の一等地)だと記憶しています。

事業ビジョンが全く同じで、アプローチ方法が異なるだけなんじゃないかと、冒頭数ページを読んで感じました。それぞれ紆余曲折を経て今のビジネスモデルに辿り着いていますが、ざっとまとめると下記のアプローチの違いになります。

【ホットペッパー】

  • 集中した業態:飲食店
  • 送客方法:紙
  • 収益モデル:広告掲載費

【楽天市場】

  • 集中した業態:小売店
  • 送客方法:インターネット
  • 収益モデル:出店費(初回+月額)+売上従量課金+広告費

余談ですが、ホットペッパーの企画検討は2000年、事業開始は2001年で、楽天は1997年創業ですから、楽天のほうが4年先輩ということになります。

ただ、このまとめを見ただけでは「なんだ。ビジョンが一緒なだけで全然違うじゃないか。」と指摘する人もいるとは思うんですが、実際に読み進めてみると非常に似通った組織マネジメントが行われていたことが分かります。特に私がさらに注目した、というよりも驚いたポイントは次の3つです。

  • 仕組み化(非マニュアル化)された現場
  • 業務範囲が広い営業マンモデル
  • 徹底したKPI管理

これらは、実際に楽天の「成功の5つのコンセプト」の中でも語られていることなので、非常にコアな部分だということが分かります。(文字が小さいところはこちらから確認できます)

http://corp.rakuten.co.jp/about/philosophy/success.html

仕組み化(非マニュアル化)された現場

誰でも、同じように、簡単に理解し行動できるように汎用化するのか仕組み化だ。
〜中略〜
決して、誰でもできるようにして誰でもいい、人に頼らないものにしてはならない。それは仕組み化とは言わない。マニュアル化という。(P70)

楽天市場に配属されると最初に行うトレーニングがあります。それは「100本ノック」と言われるもので、簡単に言えばロープレです。

具体的には、

  1. 流通や業態、取扱商材を決めた仮想店舗を設定
  2. 経験豊富なマネージャーが店舗役を演じる
  3. 用意された100通りの課題からランダムに質問される
  4. 予め収集した知識や情報とその場のアドリブ力で課題解決に導く

というものです。

基本的にOJTで、実際の現場で業務を進めながら学んでいくことになるのですが、この「100本ノック」だけは合格しないと、その現場にさえ出させてもらえないというものでした。
またしても余談ですが、私は出来損ないだったので人よりも不合格回数が多く、元の上司も困ったそうです。

この「100本ノック」は端的にいうと、店舗の売上向上と広告出稿の関係性、そして広告販売のクロージングを徹底的に教え込むものでした。

ただし、トークスクリプトのような型(=マニュアル)というものはなく、フレームワークはあるものの、フリートークが大前提でした。というのも当時は1人100店舗以上を担当することもありましたから、店舗ごとに業態も違えば取扱商材も企業母体の大きさも担当者の社内の役割もバラバラで、各店に合わせた提案内容を組み立てなければいけなかったのです。

実際に短時間で膨大な事例や統計データを把握する必要があったので(「100本ノック」本番までに与えられた時間は1週間程度だった)、少ない時間で各業界の特徴や収益構造、これまでの成功事例や様々なデータを収集し、頭に詰め込むということをしていました。

その意味では「100本ノック」というのは、自分で調べ、個別最適の提案型営業ができる組織になることを考えれば、広告提案をロジックに落とし込むための仕組みそのものだったのだろうと今さらになって思います。

業務範囲が広い営業マンモデル

あえてプチコンと限定して、表現領域に絞り込むことでわれわれはプロフェッショナルになれる。お客さまに対して得意な領域で価値を提供できる。
〜中略〜
プチコンは間違ったコンサルティングにならないように、その領域を4つに絞り込んでいる。
原稿表現プチコン
クーポン内容プチコン
集客スケジュールプチコン
メニュープチコン(P176)

プチコンとはプチコンサルティングの略で、営業 < プチコン < コンサルタントを指す肩書きのようです。

楽天市場では「ECコンサルタント」と呼びました。新卒でも「ECコンサルタント」という肩書で、その道数十年の店長さんに提案するわけですから、最初の信頼構築に苦労した記憶があります。最初の挨拶で「君、何歳なの?新卒?」と言われることもありましたしね。
楽天市場も「ECプチコン」と少し可愛らしい肩書にしてくれれば良かったのにと思います。

話がズレてしまいましたが、「ECコンサルタント」の役割もホットペッパーのプチコンとほぼ同様です。
私の場合ですが、社内業務を除いて担当店舗に対して行った業務を覚えている限り羅列してみます。

  • 集客提案(楽天市場内SEO、広告提案)
  • 広告クリエイティブのアドバイス(制作することも)
  • メルマガ内容のアドバイス(編集やライティングも含む)
  • セール企画、ポイントアップ企画の提案
  • 商材提案(商品企画、卸先の紹介)
  • 競合調査、事例収集
  • 朝刊メール(気になるニュースと本日のキャンペーン内容をまとめたもの)
  • RMS(楽天市場のCMS)の機能説明と利用方法の案内
  • クレジットカード決済導入における問い合わせ対応
  • 債権回収
  • その他問い合わせ対応(クレーム含む)

あくまでも私個人の経験談で一例に過ぎませんが、このような感じです。

当時のホットペッパーでプチコンしていた営業マンも上記の業務内容は遠からず近からずなのではないかと想像しています。

徹底したKPI管理

数字から逃げない組織をつくる
〜中略〜
結果は「やったか?やらなかった?」だけだ。「やらない」「やる気がない」という問題に振り回されることなく「できない」という問題に集中して、できない原因分析と解決策の立案にマネジメントが集中的に関与できる。
数字でコミュニケーションすれば、数字に対する執着心とともに問題を解決しようとする工夫やアイデアが生まれてくる。数字から絶対に逃げない組織を作らなければならない。(P126)

楽天市場でもKPI管理と数字に対する意識はかなり高かったと思います。

例えば「成功の5つのコンセプト」にもありますが、「BEST EFFORT BASISはダメ。GET THINGS DONEであれ」という企業理念は、少なくとも楽天市場のECコンサルタントの現場では徹底されていました。

もう1つは「1人の未達がチームの未達になり、部署の未達になり、会社の未達になることを覚えておけ」ということです。この言葉を初めて聞いたときは、新卒だったということもあってかなり身が引き締まる思いがしたというか、緊張感と責任感の重圧がすごかったのを覚えています。

言葉は違えど、ホットペッパーも楽天市場も数字に対する意識は非常に高い組織であったことがわかります。

執行役員にリクルート出身者がいた理由

このように考えてみると、私が記憶しているなかで、当時の楽天市場を担当する執行役員にリクルート出身者が2名もいたのは偶然ではないのかもなぁとも感じます。

楽天市場のほうがホットペッパーより4年早かったとはいえ、会社としての歴史、組織としての完成度はホットペッパーの方がずば抜けていたはずです。

私が新卒入社したのが2010年で、新卒採用人数をぐんと引き上げた年でしたから、その数年前からリクルート型のマネジメントを取り入れていたのかもしれません。

ちなみに、当時は2007年に破綻したNOVA出身者も多く在籍していました。チームリーダーであったり、マネージャーであったりマネジメントする側に多かったので、もしかしたらNOVAも現場もホットペッパーや楽天市場のそれに近しかったのかもしれません。

事業マネジメントについて気づきを与えてくれた一冊

楽天市場の現場で経験し学んだ土台には、ホットペッパーがあったのかもしれないなぁという気づきがあったので非常に面白く読ませて頂きました。
しかし、後半部分に精神論というか体育会系な組織論に近い内容もあり、私自身はそれを好まない人間だったので、私より若い人や現代の組織マネジメントに対する風当たり等を見ると、少々馴染まないかもしれません。

とはいえ、事業の立ち上げから組織形成、組織マネジメントについて考えるきっかけになることは間違いないと思いますので、私のように少人数の会社で働いている人や起業を考えている人は一度手にとって読んでみることをおすすめします。

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