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ユーザー中心設計に関して、よくある誤解

UXデザインやユーザー中心設計(UCD: User-Centred Design)など、「使う側の体験をしっかりデザインしよう」……という考え方は、日本でもだいぶ浸透してきたように思います。UXという言葉が肩書きにつく人も多くなり、いい体験を提供する製品も増えてきました。ですが言葉が広まったからこそ、色々な解釈が増えて、それに伴う誤解も増えているような気がします。せっかく製品を良くしようとユーザー中心設計の手法を用いているのに、ちょっとした見方の違いで思ったような成果が得られず、いつものやり方に戻ってしまうのは悲しいですよね。この記事では、主に私が見かけた、または質問としてよく聞かれる3つの「よくある誤解」について、考えてみたいと思います。

1.「ユーザーが全ての答えを知っている」

私がユーザー中心設計を勉強していた頃、一番最初の授業で教授に言われた事があります。

“User-Centred Design” is NOT “User-designed”.

ちょっとした言葉の違いですが、全く意味が違います。前者は「ユーザーを中心に置いたデザイン」。後者は「ユーザーによってデザインされた(なにか)」です。

わかっていても忘れてしまいがちな落とし穴ですが、ユーザーは全ての答えを専門知識として知っているわけではありません。ユーザーは製品を使う人ではありますが、デザイナーというスペシャリストではないからです。デジタルプロダクトをどうデザインすればいいのか、細かい知識やノウハウを持っているのは、私たちデザイナーなのです。(みんな、自分の勉強してきたことに自信を持とう!)

インタビューやユーザーテストなどは、ユーザーを理解するのには欠かせないツールです。ですが、ユーザーは専門家ではないことを考えると、「どっちのデザインがいいか決められないから、ユーザーに聞いてみよう。」→「どっちがいいと思いますか?」みたいなアプローチは危ない、という事です。インタビューではユーザーが口に出して言ったことだけでなく、行動を注意深く観察したり「Think aloud (考えている事を声に出してもらうこと)」などで、「ユーザーがどう考え、その結果どう行動したか」「それは何故なのか」という事を中心に聞き出すべきです。

また、AnalyticsベースのA-Bテストも同様です。二つのデザインを比べて、片方の数字が良かったからといってそれが「いい体験」とは限りません。クリック数が多く見えても、ただ迷ってしまっているだけかも知れない。もしくは、スマホ中毒的に思考停止でタップをしているだけかも知れない。A-Bテストをするのであれば、多数決のような使い方をするのではなく、あらかじめどんな事を理解したいのかチームで決めておく必要があります。そしてデータだけではなく、必ずユーザーに会って「なぜ」を確認する事が大事です。ユーザー中心設計のツールを使っているように見えて、実はビジネスに有利な判断ばかりしているケースは少なくありません。

「なぜ」がわかった時、デザイナーとしての知識があれば自ずと答えは見えてきます。リサーチ後にはチームできちんと時間を取り「ユーザーがAと言ったから」ではなく、結果がデザイン的に何を意味するのか、きちんと考える時間が必要です。

2.「ユーザー中心だと、イノベーションはできない」

ユーザーのいう事だけ聞いていたら、ユーザーが考えられる範囲でしかモノを作れない。イノベーションなんかできない。

イノベーションという言葉は、Appleのスティーブ・ジョブスやSonyの盛田昭夫のような「カリスマの閃きからのパラダイムシフト」というイメージが強いのでしょうか……ユーザーの意見を聞いたところで、未来に向かう革新的なものは作れない、そういった意見をよく聞きます。

まず1にも書いたように、ユーザー中心設計は「ユーザーが言ったとおりに作る事」ではありません。世の中に変化を起こせるソリューションを考えられるのは、深い知識を持つ専門家でしょう。

ですが、過去のカリスマ達の閃きも、物事や人々に対する鋭い観察から始まっているのではないでしょうか。現存する問題を理解し、人が考えもしなかった方法で解決したからこそのイノベーションです。つまり、ユーザー中心設計を使って 1) 人や社会の問題を深く理解しチャンスを見出す、また 2) 自分たちが考えたアイデアが意図通りに機能しているか確認する、という事はイノベーションを起こすという面でもとても有益だと思います。具体的にどう手法を取り入れるのかは、チームに合ったやり方をすればいいだけではないでしょうか。

*イノベーションについての考察はLars Rosengrenの「イノベーションの基盤」シリーズもぜひご一読ください。

3.「ユーザー中心なんて今更。自分たちはちゃんとユーザーのことを考えてきた」

ペルソナだって作ってあるし、ユーザージャーニーマップもある。ユーザー中心設計なんて何も新しいことじゃない……

ユーザーの事を考えてきた、それは素晴らしいです。ですが、もしそれが実際にユーザーに会って発見した事を元に作られたものでないとしたら、残念ながらまだそれは始めの0.7歩、くらいかもしれません。ユーザー中心設計は、「ユーザーの事を考えている」だけでは成立しないのです。

マーケティングで使われるツールですので、ペルソナを持っている組織はよくあります。ですが、よく見てみるとそれは「実際に使っている人」ではなく、「こういう人に買って欲しい」という、作り手の理想を表していて、現実とはかけ離れた実在しないペルソナになってしまっている場合があります。なんとなく社内で持っている顧客へのイメージから、ユーザーの事を理解した気になってしまっていませんか?

もしユーザー中心設計をやるのであれば、全てを差し置いてやらなければならないのは、実際のユーザーに会いにいく、という事です。豪華なミラールームとかじゃなくてもいい。外部の人を招けるスペースがあれば、自分たちでインタビューできます。

重要なのは考えるだけではなく、実際のユーザーに「興味を持つ」事だと思います。どうしてこういう行動を取るんだろう?どういう要素が決め手になって、判断しているんだろう?そういった疑問を解決するためにリサーチする事が「ユーザーを中心に置く」デザインであり、いい体験を作る第一歩です。

ユーザー中心設計に関しては色々な議論があると思います。この記事に書かれていることは私が自分の体験を通して学んできたことですが、また違う見方もあると思います。ぜひ色々な意見をお聞かせください!またコラボレーションに興味を持った方はぜひustwoまでご連絡ください。

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Mayu Nakamura

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