新型コロナウイルスは、どう新種のデジタルサービスを呼び込むか

ustwo Tokyo team
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Published in
Sep 18, 2020

こちらはustwo studios CEO、Carsten Wierwilleの記事を翻訳したものです。

今回のパンデミック下での生活はまるでトンネルの中にいるようです。この突然暗闇に閉じ込められるような体験は私たちにショックを与え、私たちの方向感覚を奪いました。政府、企業、コミュニティはトリアージモードにあり、この危機にさまざまな施策で対応するのにてんてこまいです。それでも私たちは、パンデミック後にも長く続くであろう新しい世界が立ち上がるのを目の当たりにしています。感染力の高いウィルスはすでに世界をすっかりデジタルに変えてしまいました。

ユーザーが同じ場所にいることが大前提だったサービスの多くがオンラインへ移行し、それにより多くの人々が「ステイホーム」を守る事ができました。中国政府は感染拡大の時期にヘルスケア業務の50%をオンラインに移行しました。世界中の学生、教師、親たちはリモート学習のやり方を大慌てで覚えています。スポーツジムのインストラクターや理学療法士は我先にオンラインでのレッスンをオファーしています。英国の国民保険サービス(NHS)は48時間の入札のあと、かかりつけ医へのビデオコンサルテーションをするサービス事業者を11社選びました。通常なら何年もかけてヒアリング、話し合い、お役所手続きをとるような変化がわずか数日で起きているのです。

この暗闇の日々をしのぎやすくするために、デジタルサービスの変革がすでに起きています。そしてもっと私たちができること、すべきことがたくさんあります。ここで考えたことを書いてみます。

ボランティアからユニコーンが出てくる?

パンデミックは、ヘルスケア領域でのボランティア活動を活性化させただけではなく、デジタル業界への流れも作りました。ボランティアが参加するプロジェクトを探す情報サイトHelp with Covidには、多くのデジタルプロジェクトが掲載され、スタートアップから活動家グループまで多彩な領域をカバーしています。当然のことながら、疫学もそのセンターステージにあがってきました。他にも診断、データ集約、リモートモニタリング、重要な医療機器のマニュアルを見つけるサービスまで。この中から次のSquareやStripeが現れるかもしれません。

また、ボランティアが進めた慈善活動の新しいアプローチは、今まで経済において「使われていなかった資産」にスポットライトを当てました。たとえば、giftcardbank.orgは未使用のギフトカードをパンデミックで影響を受けた人たちへ寄付するよう呼びかけることで、米国だけでも30億ドルにのぼる未使用ギフトカードを使おうと試みています。

オーバードライブ状態のデジタルヘルス

Covid-19がデジタルヘルスへの移行を加速させたのは明らかです。過去、遠隔医療が最初に動き出すまで20年もかかりました。今は2019年の年間オンライン訪問数をコロナ期間中にたった1日で上回ってしまったヘルスケア従事者もいます。

確かにビデオ通話でお医者さんと話すよりも対面で話すことを望む人は多いです。コロナウィルスの感染拡大の影響を最も受ける高齢者が、リモートケアを探したり、オンラインサービスを受けるのは高いハードルであることも事実でしょう。(今回の事態によりデジタルを試してみた高齢者の中には、意外と簡単に使うことができ、思ったよりこわくないとわかった人たちもいます。)

在宅、遠隔ケアのためのスマートデジタルソリューションがあれば、最新のヘルスケアシステムへ容易にアクセスでき、その有効性が上がり、途方もないコストの削減が可能になります。理学療法士はリモートで膝置換手術を受けた患者が運動をするのを見守ることができ、術後のケアが向上し、ケアのための移動が不要になります。

将来は、自宅での簡単な尿検査から腎透析まで検査や治療が可能になるでしょう。そのためには、しっかりとした遠隔治療インフラが重要になります。

リモート学習における教育

多くの学校、大学はコロナウィルスのために、事前準備もなくいきなりリモート学習を行うことになりました。パソコン、周辺機器、ネット接続がない学生や教師、特に経済的に困っている学生の間で、学習機会の格差が広がっています。

しかしコロナ禍は、適応力がありインタラクティブな、新しい学習プラットフォームへの道も開きます。デジタル学習ツールはパーソナライズされた教育体験を提供できます。たとえば内気な生徒もバーチャルな教室では発言しやすいでしょう。さらに教師は宿題の採点だけではなく、リアルタイムで生徒が書いたり計算するのを見守ることができ、すぐにフィードバックを伝えることができます。

リモートで生徒の集中を維持するためには、教育の手法、指導計画、教育の技術を根底から考え直さねばなりません。

徹底的にデジタルな時代の営業とは

お客様に会えない状況で、どうやって新規顧客を獲得しますか?車のディーラーから不動産業者まで、対面セールスに依存していた業種ではマーケティング、営業が困難になりました。

またしても中国が明るい未来を少し見せてくれます。中国の車会社は「完全に非接触」な販売モデルに切り替えました。顧客はオンラインで車をカスタマイズして注文でき、自宅に届いた車で試走できます。

エストニアから学ぶこと

世界で最もデジタル化が進んでいるエストニアを見ると、パンデミック対応で構築すべきインフラのタイプ、これからの生活がどうなるかがわかります。

人口130万人の小国が電子投票やデジタル処方箋、電子カルテ、オンライン確定申告、デジタル出生登録、リモート学習を使いこなしています。実際の人間が必要なのは結婚、離婚、資産の移転のみです。すべての医療、投薬記録はデジタル化され、エストニア人はどの医療従事者が自身の情報にアクセスできるかをコントロールできるのです。

全国民がデジタルインフラの利便性を受けられるよう、エストニア政府は全ての教室にパソコンを配置しただけではなく成人に無料のパソコントレーニングを提供しました。

エストニアこそが最初の「ラディカリーデジタル」な国家なのです。

これからやるべきこと

徹底的にデジタル化を突き詰めたソリューションはパンデミックに立ち向かい、気候変動の問題を提起し、ヘルスケアを改善し、教育を改革し、さらに組織の効率を劇的に高める力があります。また、逆に貧富の格差を広げ、政府の監視と介入を強めてしまう可能性もあります。

それは単なる技術の変革よりもはるかに多くのことを意味します。ラディカルにデジタルなソリューションを可能にするには、私たちの行動や文化を包括的に変える必要があるのです。

効率的で分散されたデジタルエコシステムは、現在私たちが取り組むべき諸問題の中でも重要な課題であり、今、そして将来のパンデミックに立ち向かうためにも必要不可欠です。

ヘルスケアのデザインに関して、さらに詳しいケーススタディなどはこちらをご覧ください。(英文ページ)

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