チーム全体に語りかけるロードマップを作ろう

ustwo Tokyo team
ustwo
Published in
Sep 10, 2021

こちらはustwo Londonの英文記事を翻訳したものです。

ロードマップとはプロダクトをどのように進化させていくかの地図のようなものです。ロードマップを見ればプロダクト、プロジェクトのビジョンや、今後進むべき方向を大まかに把握できます。どのようなフォーマットを取るにせよ、それは全体の戦略や目指すべき場所に向かうために必要な道筋を表すものであるべきです。プロダクト開発を効率的に進めるには、明確で簡潔なロードマップを作ることが重要です。

しかし「優れたロードマップ」とは実際にはどのようなものなのでしょうか?

ustwoはこの一年半、「世界をもっと健康にハッピーにする」というビジョンを掲げたThe Body Coachとのプロジェクトに取り組んできました。私たちは新しいビジネスモデル、サブスクリプション戦略、顧客の進歩をサポートするバックエンドシステム、The Body Coach創業者であるジョーのビジョンを伝えるウェブサイトを開発しました。

さらに新しいアプリをローンチし、それを育て、反復的に改善していきました。

The Body Coachアプリ

プロダクトだけでなく、私たちは定期的にデザイン、開発の仕方を改善できるところはないか振り返り、開発プロセスそのものも進化させていきました。その一環としてデザインの改善を繰り返したのがこのロードマップです。その目的は、チームの全員が今取り組んでいること、次にどこへ進むかを簡単に把握できるようにすることでした。

どのようにロードマップをデザインしたか

シンプルでアクセスしやすいロードマップをデザインするには、何度か実践してみる事が重要です。チーム全員が役に立つと思えるフォーマットになるまで、時間をかけて作りました。考えたのは以下の点です:

  1. 現在何に取り組んでいて、その次に何に取り組む予定かを伝える。
  2. 取り組みの全体像を伝える。
  3. さまざまなステークホルダーがロードマップに簡単にアクセスして理解できるようにする。

1: 現在何に取り組んでいて、その次に何に取り組む予定かを伝える。

プロダクトイニシアティブ

プロダクトイニシアティブとは、これを解決する事で価値が生まれると考えられるオポチュニティ(機会)や目的を達成するために、実験、もしくはソリューションそのものを開発する小さな取り組みの単位です。

ロードマップにはフィーチャーが使われるケースも多いでしょう。ですが成果を重視するためには、フィーチャーよりも「解決すべき課題」としてのプロダクト・イニシアティブを作ります。

Notionで作ったロードマップのプロダクト・イニシアティブの例

プロダクト・イニシアティブのメタデータ

現在取り組んでいるプロダクト・イニシアティブについてステークホルダーが知るべき大事なことは何でしょうか?

このプロダクト・イニシアティブが目指すOKRは何か、なぜこれに取り組んでいるか、どのユーザーストーリーが関連しているかなどが伝えるべき基本の情報です。これらをイニシアティブのメタデータをして入力していきます。

ステークホルダーが興味を持つ情報は他にもあるでしょう。ロードマップを見る人は誰かを理解し、それに応じてメタデータを準備しましょう。

The Body Coachのプロジェクトでは、実にさまざまな部署のステークホルダー達がロードマップを閲覧していました。彼・彼女らは私たちが作るものがユーザーとビジネスにもたらす価値に興味を持っていました。

そこで私たちはプロダクト・イニシアティブカードそれぞれにフィールドを加え、彼らの要望に応えました。具体的には以下のようなものです。

このイニシアティブをリードする人は誰か?

チーム :どのチームがこのイニシアティブに取り組んでいるか

エピック:どのエピックがこのイニシアティブに関連しているか

その他の関連するプロダクトオポチュニティ

ビジネスゴール

なぜこれに取り組んでいるのか:なぜこのイニシアティブがユーザーやビジネスに価値があるのかをシンプルかつ明瞭な英語で書く

主な指標: どうやって成果を測るか?

最終的なフォーマットに落ち着くまでいろいろな事を試しました。みなさんも同じようにやってみてください — — シンプルなデータから始め、ステークホルダーがロードマップを理解できるように徐々に追加、もしくは余計だと判断したものは削除します。

2: 取り組みの全体像を伝える。(現在、次、もっと先)

さまざまなプロダクトイニシアティブを示した私たちのロードマップの折りたたみ版です。各カードを開けると主要なメタデータが表示されます。

こういったロードマップを、日付やタイムラインを用いて管理しているチームは多いと思います。これらはタイムラインロードマップ、もしくはタイムベースのロードマップと呼ばれます。

タイムベースのロードマップは日付、マイルストーン、締め切りを重視します。こういったロードマップを使っていると、チームが機能の納品を成功の指標として捉えがちです。機能をスケジュール通りにリリースできるか、という観点で見るのには役に立ちますが、全体像を把握できず、ユーザーに価値を届ける道筋が見えにくくなってしまいます。

優れたロードマップはプロダクト戦略に対しての進捗を重視します。全体を見る、そして成果を伝えることが重要です。

こういったタイプのロードマップは、プロダクトゴールに向けて必要な取り組み、それに対する進捗を伝えます。これは成果ベースまたはテーマベースのロードマップと呼ばれます。

成果ベースのロードマップを使ったことがある人なら、以下のような時系列をみたことがあるかもしれません。

現在: 進行中の開発スプリントで優先的に取り組んでいるイニシアティブ。

次: これから取り組むイニシアティブ。どのようなものかを定義する必要はありますが、自分たちがこれに取り組みたいとわかっているものです。現在の開発スプリント中にスパイクやちょっとしたリサーチが必要なケースもあります。

もっと先: さらに定義が必要なイニシアティブ。あまり作り込まれてない、さらにリサーチが必要なものです。

当初、この3つの時間軸でロードマップを作りましたが、一つだけうまくいかなかったことがありました。それは、どのように取り組みを追跡し、その成果を忘れずに測定するかということでした。

そこで次の時間軸を追加しました:

クローズ済み: 目標が達成された、もしくは新しい学びがあり方向を変えた。

成果を測定中: ベータリリースされた、または運用中で、データをモニター中。

「成果を測定中」の項目を付け加えたことは大変効果がありました。

以前は取り組んだイニシアティブの成果を誰も追いかけていないという状況が起こりがちで、ロードマップにも記載されていなかったため、定期報告にも入ってきていませんでした。

ロードマップに「測定中」を加えることで、すでに納品した取り組みでもその後のフォローをする事が、新しいイニシアティブと同じくらい重要だと実感できました。リリースされたフィーチャーのパフォーマンスをプロダクトチームがモニターするだけでなく、取り組みの全ての状態がステークホルダーにも可視化されました。

3: 幅広いステークホルダーがロードマップに簡単にアクセスし理解できる

優れたロードマップをデザインすればチーム全体にプロジェクトの全体像を伝えることができるでしょう。でもそれだけではありません — — ほかにも期待できる効果があります:

全員が理解しやすい、唯一の情報源。ステークホルダーは人づてではなくロードマップから直接必要な情報を得ることができます。これによりチーム内の会議の数を減らし、日々の業務へ時間を費やすことができるようになります。チームがフォーカスしていることをステークホルダーも理解しているので質問も減ります。

関連文書へのリンク。OKR、ディスカバリーフェーズやリサーチの記録、関連する他のアクティビティへの参照など、ロードマップがハブとして機能します。

これらの利点をしっかり生かすためには、ロードマップをアクセスしやすくし、人々を巻き込む形で運用しなければなりません。

ステークホルダーとどのように仕事をするか考え、全員がアクセスできて簡単に使えるツールを選びましょう。スプレッドシートやTrelloボードのようにシンプルなものがベストです!私たちはNotionのリンクデータベースのすばらしさと直感的デザインが好きなのでNotionを使っています。CodaAirtableも良いかもしれません。

優れたデザインのロードマップを見れば、プロダクト戦略に向かっての進捗が一目瞭然で理解できます。各プロダクトイニシアティブについて、必要な情報を全員が得られるためにはどのようなメタデータをロードマップに入れたらよいかに注目してください。フィードバックをもらいロードマップを改善して、チームメンバーに役立つようにしましょう。

最後に、ロードマップの見た目についても忘れないでください。おしゃれにする必要はありませんが、全員が簡単に理解できてアクセスできる、シンプルで明確なものにしましょう。

ソースと読み物

https://airfocus.com/blog/what-is-a-roadmap/

https://www.prodpad.com/blog/how-to-build-a-product-roadmap-everyone-understands/

Escaping the Build Trap, by Melissa Perri

Roadmaps Relaunched by C.Todd Lombardo and Bruce McCarthy

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