EP008_現実か空想か

宇宙飛行士の世界で、ある不思議な現象が起きているらしい。

宇宙のミッションを終えて帰ってきた宇宙飛行士たちは、ある種の人生観の変化がみられるというのだ。
科学的な興味の高かった宇宙飛行士たちが、宇宙という広大で神秘的な空間を体験することで、スピリチュアルの分野に興味を持つなど、宇宙に行く前と行った後では、人間が変わってしまうというのだ。
そういう現象が宇宙飛行士業界で見受けられるのは、なんら異常なことではなく、今ではある種の慣例にもなりつつあるようだ。

なぜそういう変化が起こるのだろうか?
理由は定かではないが、それほど地球を離れ宇宙を体験することは、衝撃的なことなのかもしれない。

これから展開するお話は、宇宙から帰ってきた宇宙飛行士がこんな風にもなるかもしれない、というお話。

裕福な家庭に生まれ、物質的に恵まれた環境で育ったタカは、東京大学を優秀な成績で卒業する。全て両親が示したレール通りに人生を歩み、期待通りの息子で過ごしてきた。
責任感の強さから両親の前では良い子でいなければならない、という感情さえあった。
両親は東大のロースクールに進学することを望んでいたが、幼い頃から不和を見せつけられ、金で物ばかりを与えようとする両親に、嫌気が差していたタカは、世界の真理を求め、いつしか宇宙飛行士という職業に興味を抱くようになった。

人生で初めて両親に反発し、宇宙飛行士を目指すことを決意した。
宇宙飛行士になるには、高いハードルがあり、勉強しなければならないことが多く、フィジカル面でもタフな体力が要求されるが、タカは天性の才能で、3年後に宇宙飛行士となった。

宇宙に行くチャンスはすぐに来た。

国際宇宙ステーション(ISS)に約4カ月滞在する。
その間に行うミッションの目玉は、マウスを利用する実験だ。
マウスを生きたまま地上に戻し、DNAの変化などを調べて老化現象の解明に生かすための実験である。

無事にミッションを終えたとき、ヤツは現れた。

X:お前の性格、変えてあげるよ?
タカ:え?
X:だから~、お前の性格、変えてあげるって言ってるの。本当は変えたいんだろ、
 その真面目な性格~、道を外れたいんだろ?本当は~。
タカ:…。
X:んぁ?そうなんだろぉ?おれ知ってるよ?
タカ:…んま、まぁ、そーかもな…。
X:じゃあ決まり。
タカ:え?ちょっと待って、どういう事?
X:いーからいーから、目つぶって。

タカは言われるがままに目を閉じた。
その瞬間、目を閉じていても眩しい光が立ち込めた。

X:はい、終わり~。お前の性格変わったよ。

Xはそのまま宇宙の果てに消えてしまった。

タカ:(なんだアイツは、なんも変わってねーじゃねーか…)

地球に帰還したタカは、宇宙に行く前とは違っていた。
どちらかと言えば、物静かで寡黙な性格だったタカが、すぐにフザけたがるやつになっていた。
そしてその後、友人のトシとコンビを組んで、宇宙飛行士出身のお笑い芸人として歩んでいくのであった。

「空想か!」

…おわり。

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