UXデザインは「伝わる仕組み」を考えること

Mario Kazumichi Sakata
UX Tokyo
Published in
4 min readSep 7, 2014

(ものが)どこからどのようにして生じたというのか?ものから、ということも考えることも、わたしはおまえに許さぬであろう。なぜなら、ということは語ることも考えることもできぬゆえに。またそもそも何の必要がそれを駆り立てて以前よりもむしろ後に無から生ずるように促したのか?かくしてそれは、まったくか、まったくかのいずれかでなければならぬ。
無からは何も生じない

ユーザエクスペリエンス・デザイン(User Experience Design)はユーザー観点でサービスや製品の提供価値を記号にあらわして表現し、伝えることであり、「伝わる仕組み」そのものをデザインすることです。

ここで、キーワードを2つ取り上げたいと思います。

記号にあらわす

先ずひとつは「提供価値を記号にあらわして表現する」ということ。言うならば、ウェブサービスや製品の設計や制作、開発に携わっている方々は皆表現者です。ウェブサービスや製品、アプリは担当しているサービスや事業を記号化したものに過ぎません。

日常生活で良く目にする駅構内の記号のように、記号はそもそも人に伝えるために存在しています。これはウェブサービスや製品、アプリも同様です。

伝わっている「つもり」の例

人に伝える

もうひとつは「伝える」ということ。記号化するだけではなく前述したように正確にメッセージが相手に伝わっていなければ記号としての役目は果たせていません。

よって、表現者は自社のサービスや製品の提供価値をユーザーに正確にかつ的確に伝えることが求められています

サービスや製品の魅力は、ユーザーにちゃんと伝わっているだろうか?
どうすれば、この魅力を伝えることができるだろうか?

「伝える仕組み」及び「伝えるための仕組みや物語」を考えることは、ユーザエクスペリエンス・デザインそのものです。

そして冒頭で取り上げた2つのキーワードは我々人間が普段から行っていることです。特別なスキルを持っている人のみが行えるものではありません。

大切な人の誕生日や記念日に渡すプレゼントは「記号」です。そしてそのプレゼントはあなたの「伝えたい気持ち」をあらわしたものです。大切な人に気持ちを伝えるためにどのようなプレゼント(記号)を渡せばいいのか、いつ、どこで、どのように渡せば伝わるのか、あなたはきっとそのようなことを考えていると思います。結果としてお相手の体験(エクスペリエンス)は充実したものになるでしょう。

デザインの行為は相手にプレゼントを渡すことと似ている

ありとあらゆるユーザーの周辺環境を考慮し、表現者としてユーザーとの最適な接点を模索し、記号化する―小難しい話がなされることが多いユーザエクスペリエンス・デザインですが、こういうことだと思います。

日本人の皆さんは、「ハチ公」の物語を知っていますよね。学校の先生や親たちは、子供たちにハチ公の物語を語り聞かせます。なぜでしょうか。犬好きだから? 違いますよね。ハチ公の物語の核心は、忠誠心です。忠誠心の大切さを子供たちに理解させるために、ハチ公という「物語」にそれを包み込むのです。製品についても、それと同じことが必要なのです。
経営をクリエイティブにする「共感」「実験」「物語」デザイン経営の権威、米IDEOのトム・ケリー氏に聞く

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Mario Kazumichi Sakata
UX Tokyo

Staff UX Designer based in Tokyo. Born in Brazil, raised in US. Father of two.