誰のためのデザイン? #1
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8 min readAug 31, 2014
抄読会: UXKYOTO STUDYで取り上げる書籍「誰のためのデザイン?」の第1章までをまとめました
まとめ
- 世の中にはデザインがひどく、複雑で使いづらい道具がたくさん存在する
- 原則に従ってデザインを行うことで、多くの機能をもつ道具でも使いやすくなるようにデザインすることが可能である
毎日使う道具の精神病理学
これを理解するには工学士の資格が必要です
- よくデザインされたものは目に見える手がかりがあるので、容易に理解し操作できる
- デザインの悪いものには手がかりがない場合や、間違った手がかりがあるので利用者を間違わせたり、あたりまえの解釈や理解の邪魔となる
- 世の中にはひどいデザインのものが多く存在する
- 「誰のためのデザイン?」はこの状況を変えようとする試みである
毎日の生活の中の不満
- ドアやスイッチや蛇口やコンロなどといったものの操作が難しいことがある
- これらのものを理解しやすく、使いやすくする心理学的な原則は存在するはずだ
- 人間がドアに対してできる事は開けるか閉じるかの2つ
- ドアを開けるときに、どちらへ動かせば良いか、どちら側に力を入れれば良いかという2つの問いに直面する
- この問の答えはデザインが与えるべきであり、説明の文字や記号は不要である
- 操作するときに重要な部分は目に見えなければならない、またそれは適切なメッセージを伝えなければならない
- こうした点を可視性と呼び、デザインのもっとも重要な原則の一つである
- デザイナーは利用者にこうした情報を伝えるシグナルを提供せねばならない
- このシグナルは必ずしも美しさを損なうとは限らない
- ドアの押す側に縦長の板をつけたり支軸を見えるようにすることで自然な解釈を与えるシグナルを提供できる
- こうしたデザインを自然なデザインと呼ぶ
- したいことと出来そうなことの対応づけも重要である
- 本書では「自然なデザイン」と「対応づけ」について考察して行く
- 手がかりのない例: 1つのボタンでスライドの前進/後進の操作を行うプロジェクター
- 手がかりのない例: 保留出来ない電話、1. 教示が良くない 2. 操作が可視的でない 3. 操作の結果が目に見えない
- マニュアルを見ても理解不能なほど付加機能が累積し、結局やりたいことに近い1つか2つの設定のやり方だけ可能となってしまう
- 適切なものがちゃんと見えていることで、ユーザーにとってどの部分がどのように機能するか、どのように装置とやりとりすれば良いかの理解の手助けとなる
- 可視性は、しようとする行為と実際の操作の対応づけを示している
毎日使う道具の心理学
- アフォーダンス: 事物の知覚された特徴あるいは現実の特徴、そのものをどのように使う事ができるかを決定する最も基礎的な特徴
- 椅子 — 座る、ガラス — 透き通して見る・壊す
- アフォーダンスはものを利用する際の強力な手がかりとなる
- 因果性の認識: ある行為のすぐ後に起きたことはその行為によって引き起こされたように見える
- 偶然の一致や操作の結果を適切に表示しなかったことから誤った認識を与えることがある
- ものがどのように機能するかについて、目に見える構造(とりわけアフォーダンスと制約と対応づけ)から手がかりを得られる
- 制約: はさみの穴の大きさ
- どのように機能するかという認識を概念モデルと呼び、利用者はお各々の概念モデルで動きをシミュレートしている
理解しやすさと使いやすさのためのデザインの原則
# よい概念モデルを提供すること
- 良い概念モデルがあることで、利用者は自分の行為の結果を予測できるようになる
- 良いもでるがないときには機械的に闇雲に操作しなくてはならず、なぜその通りになるかを説明できずどのような結果が起こるか予想できない
- 概念モデルの理解にはコントロールするための操作とその結果の関係を理解すればよく、物理学や化学の理解は不要である
- 誤った概念モデルを提供する例: 2つのスイッチ操作の対象がまぎらわしい
- 概念モデルはメンタルモデルの一部である
- メンタルモデルはデザインにおいて重要な概念であり、自分自身や他者や環境、その人が関わりをもつ者などに対し、人がもつモデルのこと
- 人は経験や訓練、教示などを通じてメンタルモデルを身につける
- 道具に対するメンタルモデルの多くは道具のふるまい方と目に見える道具の構造(システムイメージ)を解釈することで形成される
# 目に見えるようにすること
- 112個のスイッチをもつ車の方がより少ないスイッチを備える電話よりも学習が簡単で、使いやすい
- 車のスイッチにはコントロール対象物との良い対応づけや自然な関係性があり、ひとつのスイッチはたいていひとつの機能が備わっている
- 車: 良好なフィードバックと理解しやすいシステム
- 電話にはユーザーの操作と結果の間に合理的な関係が存在せず、ひとつのコントロール操作が複数の機能を果たす
- 電話: フィードバックが悪く、求める結果が得られたかどうかわかりづらい
- 電話: システムがわかりづらい
- コントロール手段の数より可能な操作が多い時に問題が起こりやすい、ひとつのスイッチに2つ以上の機能があると覚えるのも使うのも負担が大きい
- ひとつのスイッチにひとつの機能がある場合はラベルを貼ることもできるし、どんな機能を実行できるか見ることもでき、また機能を忘れた場合もスイッチが思い出す手がかりとなる
- 可視性によって何ができるかを思い出すきっかけとなり、スイッチの場所と機能がうまく結びつくことで利用者が記憶しなければならないことを減らせる
# 対応づけの原則
- 対応づけ: コントロール手段とその動きと、それが及ぼす結果の間の関係を表す
- 物理的なアナロジーや標準的な決まりを活かした自然な対応付けを利用すると理解の手助けとなる
- 例: ものを上にあげるにはスイッチを上にする
- 例: たくさんの電灯とそのスイッチの配置パターンを同じに
- できる事すべてが目に見えており、コントロール手段とその表示が自然な対応づけをしていることで道具は使いやすくなる
- 例: 車のスピーカーの前部、後部の切り替えスイッチは左右の対応付けにすべきではなく、前後に動くスイッチであることが望ましかった
- スイッチと機能の間には自然な対応関係であるnatural mappingが必要である
# フィードバックの原則
- フィードバック: どのような行為が実行され、どのような結果が得られたかに関する情報をユーザーへ送り返すこと
- 以前の電話はフィードバックのことを気にしてデザインされていた
- 例: プッシュボタンをおした時の感触
- 例: ボタンを押した時に受話器から音がなる
- 電話のシステムに多くの機能がついかされる一方、フィードバックが少なくなっているために最近の電話システムは学習コストがたかく、使いづらい
あわれなデザイナー
- メーカーは安上がりにつくりたい、販売店はお客さんを呼べる商品を揃えたい、ユーザーが買うときには商品の値段と外見と見栄を気にするが家に帰って使い出すと機能性や使いやすさに注意を払うようになるなど商品に関するさまざまな立場の人の意見は矛盾する
- デザイナーはすべての人を満足させられるかもしれない
- ユーザーをよく考慮し、細かな工夫の施された良いデザインの例もたくさんある
- 例: フロッピーディスク
- 例: マーキングペン
- 良いデザインを提供するためには5,6度ほどの失敗を重ねる必要があるが数回失敗してしまうと、もう一度試そうとならなくなるので、良いデザインがなかなか出回らない
技術の逆説
- 技術の進歩と複雑さのグラフはU字を絵描く
- 初期の道具は複雑で使いづらいが技術の進歩とともに、より簡単で強力なものとなる。その後分野が安定してくると新たな参入者がもっと強力で多機能なものを作り出すので、より複雑で信頼のおけない道具が増える
- 技術の逆説: 機能を扱う操作の数がスイッチの数を超えるとデザインは恣意的なものとなり不自然で複雑となる。本来、さまざまな機能を加えて生活を簡単にしてくれるはずの技術が、道具の使い方の学習コストをたかめて暮らしを複雑にしてしまう
- 機能が増え、操作が複雑になってしまいそうでもデザインの原則に従うことで、複雑さをコントロールできる
抄読会に向けたメモ
- 多機能だけど複雑でなく使いやすい道具にはどのような物があるか