意味論的転回 #4

moret
UXKYOTO STUDY
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9 min readJan 11, 2015

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抄読会: UXKYOTO STUDYで取り上げる書籍「意味論的転回」の3章前半部分(p85~p118)をまとめました。

人工物が使用される際に持つ意味

「人工物が持つ意味はその使用にともなって変化する」

  • 学習に応じた変化
  • 異なる種類の使用(高価なディナー皿を飾る)

第3章ではこの理論が持つ重要な語彙を説明する。これらの語彙は分析と概念化、人工物のデザインに用いる。道具箱と似ている。

3章の展開は以下のとおり進む。

  • 3.1: インターフェースを新種の人工物として提示
  • 3.2: 人工物の使用可能性における脅威としての混乱
  • 3.3: 使用の3つのレベル<認識>
  • 3.4: 使用の3つのレベル<探求>
  • 3.5: 使用の3つのレベル<信頼>
  • 3.6: 使用のためのデザインの原則

3.1: インターフェース

  • インターフェースは新種の人工物である。
  • 機能の詳細が理解されることが無いようなものを使用できるようにすることがインターフェースの目的の一つ
  • コンピュータが持つ特性のうちユーザーに関することを切り出して実用的な言葉でインターフェースを表現したことで情報社会への以降が実現した
  • インターフェースはポスト工業化時代のプロトタイピング的人工物である
  • インターフェースを意味論的転回によって、技術と人間の相互作用全てに一般化(インターフェースの例: 文字盤、リモコン操作、椅子に座っていること、はさみで切ることなど)
  • インターフェースは人間の認知や物理的性質によって説明できず、それら間に起こる相互作用によって説明できる
  • 人体はインターフェースの一部である

インターフェースが持つ2つの中心的特性

  • 相互作用: ユーザーの見るものに反応してそれを変化させること
  • 力動性: 人間と機械の個々の組み合わせが発展し、時空における運動を創造すること

インターフェースの概念

  • ○ ユーザーの概念が機械の領域へ / 機械の構造が人間の認知へ入りこむ
  • × コンピュータが計算したものをモニターに表示するプログラム部分(プログラマーが好むインターフェース概念、人間の認知が果たす役割を認めてないので×)

インターフェースは「人間の行為者と、人工物との間の長期にわたる、理想的には内発的に動機づけを与える相互作用」である

人間の世界と物質的な人工物の世界は異なる作用の仕方を見せる。人間をデザインすることは出来ず、機械は意味を認識できないため。機械は人間を拡張するが、視覚など他の期間は制約を受ける(電話の例)

インターフェースの生じ方

  • 観察者の立場(インターフェースの外側)から: インターフェースは一連の人間の行為に人工物の反作用が続くもの。
  • ユーザーが理解すること(インターフェース)の内側から: インターフェースに関わる者は自分が特定の感覚-運動系の協調にあることを理解し、内発的に動機づけをする感覚の連なりを持続するように行為、または外発的に動機づけられた感覚をもたらす。(運転の例: 運転の意味は感覚-行為-感覚という系列をコンテクストに配置することで発生する。人工物の出力を完治したあと取れる行動の範囲を知ること / ある行動がその直前の感知内容をその行動によって次の出力へ変更できると知ること)
  • 良好なインターフェースが発生する例: 本を書くとき、コンピュータで書くとき、はさみを使うとき

人間は自分のインターフェースの有意味性を保つように行為する

  • どの瞬間においての人工物の使用における意味は、ユーザーが想像可能な行為とその行為の結果として期待できる感覚の範囲である
  • 使用のコンテクストでは意味は状況依存的なものであり、可能な行為と期待される感覚を相互作用の過程のなかに位置づけ、ユーザーにその過程がどのように続く可能性があるか示す。
  • ユーザーが行き詰まったとき、何をすればよいか想像できないとき、陥った状況から抜け出す方法が分からないときなどこうした状況のときに意味を喪失している
  • 人間のはインターフェースの有意味性を保つように最善の努力を行うため、デザイナーは物質面からこれをサポートしなければいけない

3.2: 混乱とユーザビリティー

機能停止: 感知された感覚と現実に持つ感覚とが著しくかけ離れているときに生じる。機能停止に陥るのはインターフェースの有意味性である。(道具が壊れるなど、ハイデガーの言う機能停止とは異なる。)

  • 誤操作、不正確さ、ミス、御用、注意力散漫、ジレンマ、行き詰まり

混乱: 経験された感覚と予期された感覚とが適合しない時に発生

  • 意味の喪失からの回復: 休止して私たちが向かい合う人工物についての概念を再構築することで回復へ向かう
  • 普段、使用に際して人間は実在の姿を知ることができず、自分なりの実在に頼っているが、混乱が生じるときにのみ実在を目の当たりにする
  • なぜ間違ったかについては明らかにならず、ただユーザーが不適切だと明らかにする

混乱の発生に対する2つの説明

  • 人間の考えとこの考えに基づく行為を非難する説明(誤操作、不正確さ、ミス、御用、注意力散漫、ジレンマ、行き詰まりを説明する)→ 学習の促進
  • ユーザーが思っている方法で役に立たなかったことに対し人工物を非難する説明 ← 学習したくない表れ

混乱における要点

  • ユーザーは意図してミスをすることはない
  • 混乱の原因はいつも事後に見つかる
  • 混乱がよく起こるということはその混乱を解消するチャンスである

提言: 人工物はこのようにデザインすべき

  • 混乱によるユーザーへの影響を最小限に
  • 回復または修正可能に
  • 混乱は学習のチャンス

ユーザーフレンドリー: 混乱が生じないこと

  • ユーザーがインターフェースにもたらす意味を予期する
  • ダメな例: ガラス張りのドア
  • 混乱の代償の大小(ミサイルが誤って発射されてはならない)

インターフェースデザインが達成すべき点

  • ユーザーにとって混乱を危険性の低いものとする
  • ユーザーに混乱から簡単に修復できるものとする

人工物への注意の向け方と使用のサイクル

  • 道具的存在者(没入) → 混乱 → 事物的存在者(注意)
  • 道具は「目的を達成するため」に利用する
  • 道具の利用がうまくいく時: 透明、暗黙、当然、没入
  • 当然・没入(信頼) → 混乱 → 理解(探求) → 注意
  • 混乱が生じるとユーザーは実際にはインターフェースがどのように働いているかを理解しようとする
  • 認識: あるものが何であるか、どんなことに用いるかを正しく見定めること
  • 探求: あるものに対してドノように向きあえばよいか、それはドノように働くか、特定の効果を得るにはどうすればよいか理解すること。デザイナーはユーザーが楽しんで探求できるようにデザインすべき
  • 信頼: あるものをとても自然に扱い、その利用によってもたらされる帰結を感知するのに注意を向けられること
  • 完全に信頼している状態をフローと呼ぶ
  • ユーザビリティとは小さな混乱すら生じさせないという持続的な信頼を意味する

ユーザビリティを達成するためは信頼に注目しがちだが、3つの注意の向け方全てを意識して人工物をデザインすべき

3.3: 認識

認識: 再び認識すること。あるものをその種類から(何に使用されるかという観点から)見定めること。認識は必要性や関心が動機となり、利用者が持つもろもろのカテゴリーが形成する概念体系に基づく。

  • × アナリグノーシス(この認識はアリストテレスが考える根本的な知識の変化ではなく、人工物のカテゴリーに関わるもの)

3.3.1 カテゴリー

  • 人が対象を認識するとき、その対象がどれくらい典型的なのか、あるカテゴリーの理念型(プロトタイプ)にどれくらい似ているかによる
  • カテゴリーの成員であることは属す/属さないの二者択一でなく程度問題である
  • 理念型はそのカテゴリーの中心点
  • 類似 — 逸脱
  • 我々が認識しようとする対象はカテゴリーの理念型と相対的になる
  • 理念型は単純な、骨格のようなものであり、本質である。また理念型は冗長性や物質性をもたない
  • 人間は経験から理念型を蓄えており物事を認識する際に理念型からの逸脱に注目する
  • インド統一を目指すガンジー: デザインから地域性を排除し理念型に近い人工物を利用
  • 理念型に近い人工物は遠い人工物とくらべて短時間でより確実に認識される
  • 理念型は視覚的なものに限定ではない(例: 映画の登場人物)

逸脱の種類

  • 大きさ: その範囲内で人工物が形づくられる
  • 特性: 無くても人工物が何であるか変わらない、付加されたもの

3.3.2 視覚的なメタファー

  • メタファーは新しい現実を想像する力を持つ
  • メタファーは詩人、発明家、政治家の道具
  • メタファーの本質は「ある種のものを別のものの視点から理解し経験すること」
  • メタファーを利用することで新しい技術を理解しやすく提供できる
  • メタファーによって人工物を認識する際に、もっと慣れ親しんでいる別の人工物の大きさや特性という視点からサポートする

例: パソコン = タイプライター + テレビ

  • パソコンは新しい人工物だったがこのメタファーによって神秘性を取り払え、だれでも利用可能にした
  • デザイナーの発想(カラーテレビ → カラーのディスプレイ)
  • PC(ノートパソコン)は今や他の人工物とは独立して認識される

メタファーのもたらす理解とその過程

  • 問題となる人工物に利用可能な理念型がない
  • 構成部分の大きさと特性が相互に関わって、コンテクストへという往復によって人工物をテストする
  • 手元にある人工物とのインタフェースにおいてテスト
  • 例: 手術用具、コピー機

その他メタファーがもたらすもの

  • メタファーは感情を伝える(公衆電話)
  • メタファー方向性を提供する
  • メタファーと遊び心

3.3.3 魅力

  • ユーザーとなり得る人にとって特定の人工物に魅力を感じるようにさせる
  • 魅力は相対的な質

魅力をもたらす一般的な対象

  • 真新しさ
  • 適所性
  • 単純さ
  • 統一性
  • 規則性
  • 対称性
  • 釣り合い
  • グリッド
  • 意図的

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