情報デザインのワークショップ #1
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8 min readAug 10, 2014
抄読会: UXKYOTO STUDYで取り上げる書籍「情報デザインのワークショップ」のChapter 1までをまとめました
本書の構成
以下の4章から構成される
第1章. 情報デザインとワークショップ
第2章. コミュニケーションデザインをワークショップで学ぶ
第3章. サービスデザインをワークショップで学ぶ
第4章. 情報デザインのワークショップの手法
Chapter 1サマリー
- 現代が抱える複雑な課題を解決するために領域横断的な手法や知識を用いて情報デザインを行う
- 情報デザインを学ぶ方法は大きく2種類(知識・実践による学び)があるがワークショップによる学びを交えて総合的に学ぶことが望ましい
- デザインワークショップを通じて限られた時間の中でコラボレーションを行うことで組織的かつ創造的に解決策を生み出すことができる。また形式によって実験的に物事を問い直すタイプのワークショップも存在する
- 多様な参加者によるコラボレーションを効果的に行うため、ファシリテーターを介在させることでワークショップを活性化させる。一方でファシリテーターは中立に努め、参加者の主体性を尊重しつつ自身のデザイン知識を活かしてワークショップの質を高める
Chapter 1: 情報デザインとワークショップ
情報デザインとは
- 最終的なモノの形態や色彩を決定する前段階の製品やサービスなどの企画までをも含めた概念
- 定義: 1980年代後半から発達した人間中心デザインの総称
- 製品の外観や美しさより使いやすさ、分かりやすさを求め情報機器の操作部分を人間中心にデザインするインターフェースデザインが発達
- 1980年代後半から操作が複雑な、インターネットなどの情報通信技術やパソコン、携帯電話などの機器が普及したため
- 2000年代に入ると使いやすさや分かりやすさだけではなくユーザー体験・経験のデザインやユーザーに提供するサービス全体を再構築するサービスデザインが求められた
- 情報デザインは人間の生活体験・経験に関わる問題を解決して、うれしい体験を生み出すための手法
- 情報デザインにはコミュニケーションデザイン、サービスデザインの両方が必要
- 複雑な現代社会の種々の問題を解決する役割を期待されている
- 複雑な課題に取り組むために、人類学や社会学、心理学、プログラミング、デザインなど学際的な知識・手法を取り入れて情報デザインを行う
- IDEOやd.schoolでは異分野の知見を動員するためにワークショップ形式のデザインスタイルを用いており、こうした手法をデザインシンキングと呼ぶ
- 企画段階では非デザイナー以外の多くの専門家が関わり情報デザインを行う(形状や動作のデザインを具体的に決定するのはデザイナーの力が必要)
- ワークショップの成果物は企業戦略や教育、政策など多くの分野にわたって一般の人々の参加が必要なため、専門家だけでなく一般のユーザーが情報デザインにかかわる
- 情報デザインではチームの一員として活躍するために自分のスキルアップが必要であるとともに、メンバーを尊重し協調することでうまくチームワークする必要がある
情報デザインの活用事例: 企業のサービス開発
- 株式会社mixiでは開発メンバーと母親たちでワークショップを重ねノハナ(現在は関連会社として独立)を開発
- ワークショップを行うことで、母親は仕事や子育てのため忙しく写真を撮影してもプリントする時間がないとわかったので、当初予定していた写真共有サービスからフォトブックサービスへと方針転換することができた
- 開発チームはユーザーストーリーマッピングやKA法などの情報デザイン手法を用いてサービスやアプリケーションの開発を行った
- アプリケーションの画面仕様と機能要件はホワイトボードを用いて、マネージャー、デザイナー、エンジニアが話し合って決定
- ユーザーストーリーマッピングなどが描かれた大きな紙をオフィスの壁に貼ったままにすることでチームメンバーが常に見られるようにし、情報共有に利用した
- ワークショップ内で試作品を利用してもらうことで開発にフィードバックした
情報デザインの活用事例: 住民活動のグラフィックファシリテーション
- 起伏のある高台に建てられた団地で、コミュニティバスが必要とされていたが、住民たちの活動によりバスの巡行をスタートさせた
- 住民たちは多くの乗客を集めるためにどうすればよいかを話しあうためにワークショップを開催した
- グラフィックファシリテーションによってワークショップ内の議論のプロセスや全体像を参加者に共有した
- プロセスを客観的に見ることで議論を冷静に振り返る効果もあった
- こうしたワークショップからバスでの買い物ツアー企画や広報誌を発行などが生まれバス利用者拡大の活動方針の合意を形成した
情報デザインを学ぶ
- 大きく分けると知識による学びと実践による学びの2点から情報デザインを学ぶことができ、知識による学びと実践による学びの中間に協働による学び(ワークショップ)がある
- 情報デザインはこれらの手段で総合的に学ぶのが好ましい
- 参加者たちから刺激をうけながらデザインを学ぶことができるので、ワークショップは情報デザインを協働して学ぶ場として非常に適している
なぜデザインワークショップを行うか
- デザインワークショップ: ワークショップを通じてデザイン活動を行うこと、以下の3つの特徴がある
- 1. 複数人による同時的な取り組み
- 2. 社会に位置づけることを志向した明確なアウトプットがある
- 3. ファシリテーターが場作りを支援する
- ワークショップを通じて実験的に物事を問い直す
- 限られた時間のなかで効率よく学習できる
- 創造社会のムーブメント
- コラボレーションを行うことで組織的かつ創造的に解決策を生み出す
- 多様な視点を考慮する
デザインワークショップの活用方法
- デザインワークショップにはさまざまな形式があり、それぞれ重視するポイントが異なるため参加者の温度感を統一しておく必要がある
- 災害時の初期の問題発見に利用
- 積極的に人々を巻き込む手段
- インクルーシブデザイン
- 例: ストーリーウィービングブックレット
- 学びの場での利用
デザインワークショップを実践するときのポイント
- ファシリテーションや個別の学びを連結させるプロセスに配慮する
- 加えて、参加者のレディネスやリフレクション、社会への還元にも配慮しておく
- ワークショップでは参加者が知識やスキルを出し合ってお互いに学び合うことで成果を最大化できる。そのため場作りを支援するファシリテーションが重要となる
- ファシリテーターは参加者の主体性を尊重しつつ場を活性化させる
- 参加者が継続的に学ぶために一つのワークショップの成果物を次回に活用するなど、プロセスを意識してワークショップの連続性を設計する
デザインワークショップの準備
- 場作り: 準備の中で最重要、必要なものが途中で不足しないように、また参加者にプロトタイピングの余地を残して置けると良い
- 参加メンバーの選定: さまざまな立場の参加者が萎縮せずに参加できるようにする
- プログラム: 目的を達成するための手順と時間配分を意識する、参加者たちがお互いに影響を与えながらそれぞれの力を出せるように配慮する
- アイスブレイク
- 時間が押したときを想定しておく
- スタッフの役割: ファシリテータとスクライバー
- ファシリテータ: ワークショップの目的を理解し参加者の意識がまとまっていくようグループワークや議論を支える、また中立な参加者としてデザインの知識を総動員してワークショップの質を高める。単なるタイムキーパーとなってしまわないよう気をつける
- スクライバー: 議論や活動の流れを構造的に視覚化し、参加者がいつでも自分たちの活動をふり返れるよう支援する
- ファシリテータはスクライバーの表現を確認しながら進行の管理を行う
輪講向けメモ
- ファシリテータの役割について振り返る
- アイスブレイク
- デザインワークショップを行って解決すべき問題はどういったものがあるだろうか