誰のためのデザイン? #5
抄読会: UXKYOTO STUDYで取り上げる書籍「誰のためのデザイン?」の第5章「誤るは人の常」をまとめました
第5章: 誤るは人の常
人が犯すエラーのもっとも基本的な形にスリップとミステークが存在する
- スリップ: 自動化された行動から生じる。ゴールを達成しようとしてあまり意識せずに行った行為が途中で脇道へ入ってしまうようなエラー。ゴールは適切だが実行時に起こる誤り。
- ミステーク: 意識的によく考えることで生じる。人はものごとを誤って一般化することで関係ない事柄を関連づけて考えてしまうため、誤ったゴール設定をしてしまう。
スリップ
日常起こるたいていのエラーはスリップであり、注意不足によって起こる。高次レベルを意識するために低次の身体の動きを無意識的に正業する必要がある ex. ピアノ演奏
- スリップの型
- 乗っ取り型エラー: 2つの行為のうち一方に習熟している場合、慣れていない行為から自然と慣れている行為へ乗っ取られる ex. 似ている知った曲を演奏してしまう
- 記述エラー: 意図された行為が他の行為と似た場合におこる ex. トイレに服を脱ぎ捨ててしまう
3.データ駆動型エラー: ex. 電話番号の代わりに部屋番号をダイアルしてしまう
4. 連想活性化エラー: 頭の中の連想によって誤った行為が引き起こされることがある ex. 受話器に向かって「どうぞお入りください」と叫ぶ
5. 活性化消失エラー: 何をすればよかったか忘れる
6. モードエラー: あるモードでは適切な行為が他の行為では違う意味を持つことによって起こるエラー
- スリップを見つけ出す: スリップはゴールと結果が明らかに食い違うのでフィードバックがある限りはエラーを簡単に見つけることができる
- 一方で行為のレベルに注目しなければどうしてエラーが起きているか把握できないこともある(どのレベルでエラーが起きているか把握する必要がある)ex:鍵が開かない → 他人の車だった ><
- デザイン上の教訓
- スリップを防止する: ex. オイルやバッテリー液の色を変えたり注入口の大きさや形を変えることで注意をうながす
2. スリップエラーを修正する: ユーザーの意識は「削除する」という行為であり、どのファイルなのかは頭に入らない ex. 「最重要書類を確かに削除しますか」→ 「はい」→ ><
→ 削除ではなく一時的な保管場所へ移動する
ミステーク
ミステークは不適切なゴールを選択するために起こるエラーである。これらのエラーは人間が体系的に分析してものごとを捉えると言うよりはこれまでの記憶や経験にたよって判断することで起こる。人は記憶の共通点を過度に一般化してしまう。
- 人の思考のモデル
人の思考は生活経験に強く依存しており、論理とは程遠い存在であるスキーマ理論(フレーム理論)と呼ばれるネットワーク化した記憶同士の連合関係が人の思考モデルの妥当な把握とされている
- コネクショニストアプローチ: 思考の多くはパターンマッチングシステムから生まれる。このシステムは過去の経験に類似するようなところに強引に答えを持っていたりする。似たようなできごとは合成され一つのプロトタイプに束ねられる。
作業の構造
- 広くて深い構造: チェスのデシジョンツリーは広く深い
- 浅い構造: アイスクリームショップにおける注文の選択肢は多いが何度も選択肢する必要がなく構造としては浅い
- 狭い構造: レシピ本に載っている料理方法は選択肢の数は1つか2つである ex. レストランのコースメニュー、自動車の起動手順
- 日常の作業の性質
日常生活で行うたいていの作業構造は浅いもしくは狭いことがほとんどである。浅いまたは狭い場合、頭をあまり使わなくてすむ。普段と異なる作業としては長い文書や旅行の計画、知的ゲームなどがあるが、一般的に広く深い構造は余暇活動の中にあることが多い。人はレクリエーションのためにわざわざ複雑で困難なアプローチを取る。
意識的な行動と意識的でない行動
意識的な行動と意識的でない行動のどちらもが洞察による飛躍や創造性を発揮する。また両方でエラーや失敗を引き起こす。
- 意識的でない行動: パターンにマッチする。意識的でない行動は努力せず自動で行える人間の強みである。
- 意識的な行動: 意識的な思考はやり方を検討し、比較や合理化を行う。さまざまな選択肢を考慮するので時間や努力を要する。
私達は現在の状況と一致する例を過去から見つけ出すのは得意だが、そこで見つかる例は1.標準化されるもしくは 2.他からかけ離れているためいびつである。
- エラーを正当化してしまう: ex. 飼い犬が吠えているのをなだめる(家の中には泥棒が)、警報がなっていても自分の中で納得してしまう
- 社会的圧力とミステーク: 飛行機の燃料を無駄にしてしまう(と処罰される)
エラーに備えてデザインする
- エラーの原因を最小化する
- undo
- エラーを発見しやすく、訂正しやすくする
- ユーザーがエラーを犯しているという考え方を変える → ユーザーは不完全にもゴールへ向かっている
- どうエラーに対処し、どう対処しないか: ブザーの例、警告音は解決策となりえないので適切にデザインされるべき
- 強制選択法: ある場面で失敗すればそれ以降のステップが実行されないような一種の物理的制約(ex. 車に鍵をかけるにはキーを車のそとへ持ち出さないと行けない)
- 強制選択法を用いても利用時のコストが高いと無効化される可能性がある(ex. ブザーのなるシートベルト)
- インターロック: 操作の順序を強制する(電源を切らないとレンジの扉を開けない)
- ロックイン: ある操作を誰かが止めてしまわないように起動させたままにする(ファイルを保存する前にワープロの電源を落とせない)
- ロックアウト: 危険な行為が生じるのを防止する(非常時に地下階へ降りてしまわないようにする扉)
強制選択法は強力だが誤ったデザインに組み込まれるとたちまち面倒なしろものとなる。
何かを忘れてしまう例(良い強制選択法を考えてみよう)
デザインの基本的な考え方
デザイナーは「エラー or 正解」という二分法で考えては行けない。起こりうるエラーはすべて起こると考えてデザインを行う。
これまで学んできた原則
- 知識を外界へおいておく
- 制約の威力を用いる
- 実行と評価のへだたりを狭める