誰のためのデザイン?#6
デザインという困難な課題
デザインの自然な進化
良いデザインは進化するものである。
・工芸家たちは良い点は残したまま悪い点を変える
・変更したせいで前よりも悪くなってしまうこともあるが、その場合は次のサイクルで変更されるだけである。
↑「丘登り法」: 暗闇の中で丘にのぼる方法の類推からそう呼ばれる
デザインの進化にさからう力
現代のデザイナーはゆっくりとした注意深い職人の仕事をすることを許されていない
・現代のものは複雑すぎる
・たくさんの変数がありすぎる
しかしちょっとした改善ならできるはず?
→競争原理に基づく市場においては様々な力が働いているので難しい…
・時間の切迫
・他社と比べて目立とうとする
・デザイナーは個性を主張しなければならない
例 : 電話機
タイプライター
・qwertyキーボード
機構上の問題を対処した。iやeのような文字は続いて打鍵されることが多いので反対側に置くなど
フランクマグリン : キーの配置を覚えてキーボードを見ずに文字を打った。最初は注目されなかったが、後の全国コンテストで、その方法が優れているという証明がされ、世界中にqwertyキーボードは広まった。
今では全く関係のない過去の制約に基づいてつくられていて、学習しづらいものであったのに、qwertyキーボードからはなれられなくなっている
・アルファベット順キーボード
学習コストは低く思えるが、何列かに分かれて配置されるので、単にアルファベットを知っていれば良いというものではない。
どこにキーがあるか計算するよりも見る方が楽
・ドボラクキーボード
10%速くなるが、何百万人が再学習し、改造するほどの変化ではなかった
一旦満足のいく製品ができてしまったら、それ以上の変更は生産的ではない。
なぜデザイナーは正しい道からはずれてしまうのか
美しさ第一主義で支配されていたら暮らしにくい
使いやすさ第一で支配されていたら見栄えがよくない
デザイナーが考え違いをしてしまう理由
・デザイン会の褒賞のシステムが美を第一にしがち
・デザイナーは典型的なユーザーではない
テストを繰り返すうちにベテランになってしまう
美しさを第一にするということ
「多分賞でもとってるんでしょう」
例 : 連邦航空局のシアトル支局をデザインする
例 : 導線がめちゃくちゃな博物館
デザイナーは典型的なユーザーではない
私たちは誰でも、日常生活の心理学を作り上げてしまう
無意識下の思考や信念は自分ではわからないので、どうしても意識的な思考をもとに他人の行動を合理化し、説明を後追いでつけてしまったりする。
他人の信念や行動は、人それぞれなので、わかったきになってはいけない。実際のユーザーを研究するにまさるものはない
・デザイナーは、自分で作っている道具に習熟する
・ユーザーが習熟しているのは、その道具を使って行おうとしている作業である
デザイナーの顧客が実際のユーザーであるとは限らない
顧客が政府機関や産業界であると、値段が最重要で購入が決まる
使いやすさは全く考えられていないことが多い
デザインプロセスに問題がある
デザインプロセスの複雑さ
デザインというのは、他と異なったユニークな製品ができるまで制約を繰り返し適用することである
例 : 蛇口
特定の人々のためのデザイン
例 : 左利き用の定規や老人のためのコンピュータ
選択的注意- 焦点の問題
例 : トースターにナイフや手をいれてはいけないのは頭でわかっているけど、いざパンが奥に残っていたときは無意識にナイフで取り出そうとしてしまう
蛇口 — デザインの難しさを示すケースヒストリー
なぜ宿のパンフレットに蛇口の説明が書かれたか
→見た目は単純そうな蛇口だが、一見まわすように見えて実は押す蛇口だった
蛇口のデザインは何故難しいのか
・水の温度とその量、2つをコントロールしなければならない
デザイナーを脅かす二つの致命的な誘惑
時間と経済的な圧力
なしくずしの機能追加主義
こんなこともあんなこともできますというワープロ
例 : emacs
なしくずしの機能追加に対するやり方
・やたらに機能追加しない。きわめて慎重に追加する
・体系化する — モジュール化 複雑なコントロールスイッチも、適切に分割してモジュール化できれば、複雑さにうまく対処できる
謝ったイメージを有り難がる
例 : 法律事務所で機能満載の複写機をありがたがる(ほとんどの機能を使わないのに)
コンピュータシステムの弱点
コンピュータは難しい
コンピュータのデザインに本職がデザイナーの人が関わることは少ない
良くないデザインをする方法
気がめいるリスト
まだ正しい道に戻ることはできる
コンピュータはまだまだ進化の途中
例 : 表計算ソフト
ビジカルク
ゼロックス社からのマッキントッシュ
マウスのボタンの数
コンピュータはカメレオン
探索可能なシステム
1, システムのどの状態においても、ユーザーが何をすることが許されているのかをわからなくてはならない
2, それぞれの行為の結果は目に見えるとともに解釈しやすくてはならない
3,行為は代償無しに実行できなければならない
コンピュータ利用の3つの形
・コマンド(命令)モード — 第三人称的インタラクション
・直接操作モード — 第一人称的インタラクション
コンピュータシステムを見えなくするという原則
未来の見えないコンピュータ
誰もモータを使おうとして台所にいく人はいない。
例 : 私の考える理想のスケジュール帳