誰のためのデザイン #7

satoshi murata
UXKYOTO STUDY
10 min readOct 26, 2014

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7章「ユーザー中心のデザイン」

# サマリー

  • 難しい作業を単純なものにするための7つの原則
  • わざと使いにくくする
  • デザインと社会

# ユーザー中心のデザインをしよう

ユーザー中心のデザインとは、ユーザーが何を必要としていて何に興味を持っているのかということを基本に置く考え方。製品を使いやすく理解しやすいものにするという点に重点がある。

本章は、これまでの原則の要約・議論、道具のデザインに対しての提案の章

## デザインは次のようでなくてはならない

  • どんな行為ができるのかを簡単にわかるように
  • 対象を見えるように
  • 現在の状況を評価しやすく
  • 自然な対応づけを尊重しそれに従うように

→ 1: ユーザーが何をしたら良いかわかるようにしておくこと。2: 何が起きているのかをユーザーに分かるようにしておくこと。この2つを確実に守ろう。

# 難しい作業を単純なものにするための7つの原則

  1. 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する
  2. 作業の構造を単純化する
  3. 対象を目に見えるようにして、実行のへだたりと評価のへだたりに橋をかける
  4. 対応づけを正しくする
  5. 自然の制約や人工的な制約などの制約の力を活用する
  6. エラーに備えたデザインにする
  7. 以上のすべてがうまくいかないときには標準化する

pp. 309-335 で以上のことを説明している

## 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する

  • 作業を行うために必要な知識は外界にある
  • それが使える時は、人は良く学習し安心する。
  • どんな行為をするとどんな結果が起きるかについての情報の間の関係が、自然かつ容易に解釈できるようなときだけその知識は役立つ。
  • 頭のなかの知識と外界の知識の間を簡単に行き来できたり、統合するのも容易にしておくべきである。そのいずれかの使いやすい状態の知識が使えるようにしてくべきである。

### 3つの概念モデル

  • デザインモデル
  • ユーザーの持つモデル
  • システムイメージ
  • メンタルモデル

### マニュアルの役割

マニュアルは思ったほど役に立たない。ユーザーの多くはマニュアルを読まない。

もっとも望ましいのはマニュアルをつくってからそれにしたがってデザインすること。テストユーザーはマニュアルとテスト段階のシステムを同時に使うことができる。

## 作業の構造を単純化する

  • プランニングに時間を掛けたり問題解決に努力しなくてすむ。
  • 複雑すぎる作業は、大抵の場合、新しい技術を導入して構造を組み直すことができる。
  • 人間の記憶力や同時にいくつの思考ができるかなど、人の心理的側面にデザイナーは注意を払わなくてはならない。

### 新しい技術の主たる役割は作業を単純にすること。技術をつかった4つの方法:

#### 作業は以前と同じままで、メンタルエイドを利用できるようにする

例: メモ。タイマー、メモプログラム、アラームプログラムなど

メモをとれるし、思い出させてくれる。

#### 技術を使ってこれまで目に見えなかったものを見えるようにし、その結果としてフィードバックや対象をコントロールする能力を向上させる

例: 自動車や飛行機の機器類、顕微鏡、望遠鏡、テレビ、カメラ、マイク、拡声器

実際に何が起こっているのかを表示したり、ユーザーのメンタルモデルに合致する作業イメー〜じを提示することが出来るようになった。理解や操作することも容易になってきている。

##### 上の二つはメンタルエイドは思い出すきっかけとして使われている

記憶するための道具を人の外部に作ってやることによって記憶の負荷を減らしている。

より重要なことに頭を使いたいのであって細かい仕組みに浪費したいのではない。

#### 作業は以前と同じままで自動化を進める

単純化には危険もある。作業は本質的には変わらなくても、作業の細かな部分が失われる。

例: エンジンをうまく使うドライバー

例: 自動航行装置、冷凍食品

自動から手動までの間を選択できると良いだろう

#### 作業の性質自体を変更する

例: 靴紐とマジックテープ

デザインのトレードオフ

例: デジタル式の時計

作業を単純化することが必ずしもそれ自体で長所だというわけではない

### コントロールをなくしてはならない

自動化(オートメーション)には良い点もある。しかしユーザーからコントロールを奪いすぎてしまうとしたら危険である。

自動化過多

  • 頼りすぎてしまうと、その装置なしでは何もできなくなってしまったり、突如不調になったりした時にどう対処していいかわからなくなってしまう可能性がある。
  • システムは必ずしも私たちが欲しているとおりには動作してくれないことがある。
  • 人がシステムに使われる立場になってしまって、起こっていることをコントロールしたり、それに影響を与えたりすることができなくなる

コントロールの階層

## 対象を目に見えるようにして、実行のへだたりと評価のへだたりに橋をかける

実行側:なにが実行可能か、どうやったらよいか

評価側:行った行為がどんな効果を及ぼしたのか

  • システムはユーザーの意図に合致するような実行可能な複数の行為を用意しておくべきである。
  • システムの状態の手がかりをユーザーが直ぐ分かって解釈できるように。意図や期待に合致する形で表示すべきである。
  • システムの状態自体も目に見え、直ちにかいしゃく可能であるべきである。ユーザーが行ったことの結果をはっきり示すべきである。

例: CDプレーヤーのリモコン

## 対応づけを正しくする

自然な対応づけを活用すべきだろう。

  • 意図とその時点でユーザーが実行できる行為の関係
  • ユーザーの行為とそれがシステムに及ぼす影響の関係
  • システムの実際の内部状態と目で見たり聞いたり感じ取れたりするものの間の関係
  • ユーザーが知覚できるシステムの状態とユーザーの欲求・意図・期待の関係

例:コントロールスイッチ

ユーザーの行為のうち、もっとも重要なのはその行為をしたことによって何が起こったのかを評価するところである。タイミングよく結果がフィードバックされる必要がある。

## 自然の制約や人工的な制約などの制約の力を活用する

制約を活用して、ある場面においては、あたかもただ一つのことしかできないとユーザーに思わせなくてはならない。

例:レゴのオートバイ

## エラーに備えたデザインにする

エラーが起こる可能性があるとしたら、そのエラーは実際に起こると考えたほうが良い。なんらかの操作をしてももとに戻すことが容易であるようにしておくべきだ。元に戻せない行為はやりにくくしておくようにすると良い。

##以上のすべてがうまくいかないときには標準化する

どうしても恣意的な対応づけをしなくてはならなかったり、問題が残ってしまう時は最後の手段として標準化という方法がある。配置や表示を標準化する。関連のある行為は同じように機能するようにする。

標準化のすばらしいところは一度学べばそれで済むこと。

難しい点は合意に達するまでが大変だということ。また、標準化のタイミングも難しい。できるだけ早めの標準化が良いが、新しい技術を取り入れる事ができる時間も必要。

ユーザーを訓練しなければならない。

標準化が本当に必要なのは、必要な情報のすべてを外界に置くことができない場合や自然は対応づけを活用することができない時に限る。

例:時計

### 標準化と技術

例:車

標準化は文化的制約の一側面。

例:コンピュータ

### 標準化の時期

早過ぎると技術の初期段階にとどめてしまうことになる。ルールは非効率であったり、エラーを起こしやすくしかねない。

遅すぎると各種のやり方ができてしまって国際的な標準に合意をとりつけられなくなるかもしれない。

例:メートル法

例:時間を表す単位

# わざと使いにくくする

どのようにして、秘密やプライバシー、情報の保護などの必要性と折り合えるのか。

例: イギリスのステープルフォードにある学校のドア

使いにくく作ったほうが良いものは驚くほどたくさんある。

リスト: 使いにくく作ったほうが良いものリスト

例: 英国鉄道の列車のドア

理解しにくくしたり使いにくくしたりすることを目的としてデザインされるものもたくさんあるが、デザインの原則を知っておくことが大事である。

  1. わざと難しくデザインする場合でも完全に難しくしてはならない
  2. 難しくするためにはどうしたら良いかを知っておく必要がある

リスト: 使いにくくするための原則

一つの危険をなくそうとしても受けた安全のためのデザイン上の仕組みがその代わりのもう一つの危険を引きおこすようになるというのはしばしばある。

例:道路に穴を開ける時

例: 学校のドア

例: ダンジオンアンドドラゴンズ

### 簡単に見えるものが簡単に使えるとは限らない

例: 最近のオフィス用電話機、自動車のダッシュボード

例:サーフボード、アイススケート、平行棒、角笛

一見単純な道具でも、様々な種類の行為を行うことができる。

コントロールスイッチの数が増えれば、使いやすさは向上することもあるし減ることもある。

外見の複雑さはコントロールスイッチの数で決まる

使いやすさは関係のあるスイッチを見つけやすいかどうかとその機能を実行するのが容易かどうかという2つの要因の組み合わせで決まる。

→スイッチの数は機能の数にあわせ、表示パネルは機能別に構造化するようにすると使いやすい。ある時点で使われないスイッチを隠すとこの相反する二つを同時に満足させることができる。

# デザインと社会

道具の変化が社会に大きな変化を及ぼした。

## 文章を書く方法が文章のスタイルにどう影響するか

羽ペンとインクからキーボードとマイクへ

間違えを気にせずタイプできるようになった一方で考えたりプランを建てたりすることにはあまり時間を使わなくなったようである。

一度に見える量の限界

## アウトラインプロセッサーとハイパーテキスト

### アウトラインプロセッサー

文章構造をみたり操作したりできるようになった。

ある技術が導入されることによって、それは使われるようになる、それが使われなくなる

### 複雑で多面的なハイパーテキスト

読者は自分にとって関係が深かったり興味があると思える順序で対象の文章を追いかけることができるのである。

文章の体系のなさをまさに活用してアイデアや考え方を意のままに並べることが出来るようにしたものである。

自由が余分にあることは要求されることも余分にあるということ。読者が楽をするためには筆者が苦労する必要がある。

# 未来の家庭――くつろぎの場所か、いらいらの種か

例: 賢い家と知識の家

情報バス、コントロールの手間

例: 最新のレーザーディスク

# 毎日の道具のデザイン

デザインが社会に影響を与える。誰もが同意するとは限らないゴール。デザインが政治的な意味での重要性をもつことがある。

毎日の作業が困難なのは作業自体が複雑だからなのではない。それは作業を行うために恣意的な関係や恣意的な対応付けをまなばなければならないからであり、実行する際に正確さが必要となることがあるからである。

良いデザインは制約を活用している。

適切なデザインをして、エラーの原因の一部を取り去ったり小さくしたりする。そうすればエラーの発生や規模を小さくすることができるだろうし、エラーが生じてしまった場合でもそのことに気づきやすくなるだろう。

適切なデザインは私たちの生活の質を変える。

## これからはあなたの番である

使って、声をあげてほしい。楽しんで、嬉しく思ってほしい。良いデザインをもたらしてくれた人には、心のなかで賞を贈ろう。花も贈ろう。

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