『津波のあいだ、生きられた村』が鹿島出版会より9月14日発行です!

饗庭伸・青井哲人・池田浩敬・石槫督和・岡村健太郎・木村周平・辻本侑生(著)|山岸剛 (写真)

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明治・昭和と津波の最高遡上高さを記録した綾里村(現大船渡市 綾里)。この村は津波を、そして津波から津波までの「あいだ」を、どう生きてきたのか。そして、現在もまた「あいだ」にいるという視点に立つとき、復興と将来像、そして記憶の継承はどう描かれうるか。

都市計画・防災・建築史・文化人類学・歴史学など異なる分野の研究者と写真家・建築家・デザイナーなどがゆるやかに連携。村の多くの皆さんのご協力をえて進めてきた数年間の研究と運動のまとめです。

部数が多くありません。皆様、早めにお買い求めください。

↓ まずは表紙をご覧ください。

判型は都市住宅別冊『建築家なしの建築』と同じで、B4変形の正方形(257×257mm)。開けば正方形がふたつ並ぶというワイドな紙面を活用して、テキストとともに豊富な図・表・写真がさまざまなリズムやパタンで畳み込まれています。紙は柔らかく、色味は温かめ。そこにややコントラスト強めに写真や図が印刷されていることもあって、内容がインフォーマティブなだけでなく、視覚的・触覚的にも強い本になったのではないかと思います。

↓ 表紙を含め、グラフページの写真は山岸剛撮影。

↓ 下の見開きすごいです。強烈!!(僕の写真がよくないので、時間をみつけて撮り直しますね)。

↓ 饗庭先生らしいダイアグラムが中野さんのデザインでクールにしあがっているページ。過去半世紀(津波のあいだ)に住宅がどう移動したか、そのパタンを見事に浮き彫りに!

↓ 山口弥一郎の文章から引用されたアフォリズムと、山岸写真の組み合わせが章の扉となっています。

↓ 空間チームによる昭和三陸津波の「高所移転」の復元。地元の方々から提供いただいた写真もあります!

↓ 社会チームが捉えた綾里の社会・文化・信仰・生業などの魅力的な記録!

↓ 避難チームが明らかにした3.11当日の「避難の線」のグラフィック!

↓ 綾里中学校校庭で多くの方々の避難生活を支えた仮設住宅の「解体撤去」を定点カメラで捉えた。我々著者一同も学生ともども何度も泊まらせてもらいました。

↓ 本書は研究だけでなく、むしろ復興のお手伝い、継承の仕掛けなど、いわば「津波のあいだ」の生き方をめぐる実践など「運動」の記録でもあります。

↓ 昭和8年の高所移転時につくられた気仙大工による復興住宅の1棟を借り、伊藤暁設計の展示空間を皆でつくった「綾里と津波 博物館」。この展示物が、本書の核になったと言えなくもないですね。

(最後に)鹿島出版会時代の川尻大介氏担当でプロジェクトが始動した本書ですが、氏はB4変形版で企画を通してくださりテイクオフ!と思ったらすぐに異動になってしまいました。以後は渡辺奈美さんの的確かつ献身的なお仕事に終始支えていただきました。個人的にもご心配をおかけすることが色々ありました。ありがとうございました、渡辺さん!!

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青井 哲人 AOI, Akihito
VESTIGIAL TAILS/TALES: aoi's journal

あおい・あきひと/建築史・建築論。明治大学教授。単著『彰化一九〇六』『植民地神社と帝国日本』。共編著『津波のあいだ、生きられた村』『明治神宮以前・以後』『福島アトラス』『近代日本の空間編成史』『モダニスト再考』『シェアの思想』『SD 2013』『世界住居誌』『アジア都市建築史』ほか