Ethereum 2.0の概要とスケジュール

Shusetsu Toda
10 min readJul 12, 2021

--

Ethereum 2.0の概要と今後のスケジュールについて解説していきます。

出典: https://ethereum.org/en/assets/

Ethereum 2.0の目的

Ethereum2.0はスケーラビリティ、セキュリティと保守性の3つを上げることが目的です。

Ethereumは、さまざまなプロジェクトをスマートコントラクトを通して動かしています。全てのプロジェクトは同じネットワークを使用しているので、人気なプロジェクトがあればあるほど需要が増え、ガス手数料が高くなりトランザクションがブロックに含まれる時間が長くなっていきます。

これが、スケーラビリティに関する大きな問題です。

ブロックチェーンは非中央集権化が目的の一つなので、単純に要求するマシンのスペックを上げたりパラメーターを上げることは思想に反するのであまり推奨されません。そのため、マシンのスケールアップよりも上手くスケールアウトする方法が必要になります。

また、スケーラビリティだけでなく需要が上がれば上がるだけセキュリティも重要になってきます。さまざまなプロジェクトがEthereumで動くと、ネットワークの総合の時価総額も上がり、攻撃が成功した時の被害も大きくなりえます。ですので、攻撃される頻度も需要に合わせて大きくなりえます。

さらに、技術は常に進化していくので、それに合わせてネットワークを変化させていけるという事も重要です。

実際に、それがどの様にして達成されるのかを解説していきます。

PoS(Proof of Stake)への移行

まず、大きな変更の一つとしてProof of Work (PoW)からProof of Stake (PoS)への変更があります。

Ethereumは、主に4つの理由でPoSに移行を決めています。

  • 大きな電力や資源を使用しない
  • ネットワークにブロック作成者として参加するハードルが低い
  • 中央集権化になることに対してより耐性がある
  • シャード技術により適している

Proof of Work (PoW)は、Bitcoinでも使用されている仕様で大きく分けて2つのコンセンサスメカニズムで動いています。複雑な数学的問題を説いたアドレスがブロックを作成出来るということと一番多く”Work”を持っているチェーンが正しいというルールです。ここでのワーク(Work)は、複雑な数学的問題を解くことです。PoWでは、マイナーが大量の電気とコンピュータを使用して仕事をする代わりに、報酬としてトークンが与えられます。一方、Proof of Stake(PoS)は、複雑な数学的問題を解くかわりにトークンを担保にして、担保の割合に応じてランダムにブロックの作成者が選ばれるようになっています。

PoSでは、工場や特別なハードウェアは必要ないので、参加するためのハードルが大きく下がります。必要なのは、ブロックを処理出来る性能のマシンと常にネットワークを維持できる環境と担保のトークンのみです。参加のハードルが下がるので中央集権化に対しての耐性があると考えられています。

シャードとは、一つのデータを複数にデータを分割しつつ同期をとるという手法です。そのシャードを実装するためには、さまざまな要素が必要になってきます。PoSに移行することにより規則的なブロックの作成間隔やブロックのファイナリティ(ブロックがReorgによって削除されないこと)が追加しやすくなるのでスケールするためには必要な点となっています。

各フェーズについて

Ethereumのアップデートはフェーズ毎に切り分けられていて、それぞれが新しいネットワークもしくはハードフォークが予定されています。

ビーコンチェーン (2020)

ビーコンチェーンフェーズは、過去にはフェーズ0と呼ばれていました。2020年年末に完了したこのフェーズの目的はビーコンチェーンをリリースすることでした。ビーコンチェーンとは、シャードで分散されたデータの中心の存在でシャードとコミュニケーションをとりデータを同期する役目があります。また、このビーコンチェーンは、PoSで既に稼働しています。

このビーコンチェーンが正式にリリースされるためには、 十分なセキュリティと非中央集権化の為に少なくとも 合計524288 ETH が少なくとも 16384のユニークなアカウントからステーキングされる必要がありました。

このフェーズ自体は現在使用されている通称ETH1には特に影響はありません。ステーキングされているETHは、ETH1では使用できずマージ以降に使用できるようになる予定です。

マージ (2021/2022)

マージフェーズは元々はシャードが複数作られてからマージされる予定でしたが、順序が逆になることが決められました。このマージは2021/2022に予定されています。このフェーズは、過去にはフェーズ2と呼ばれていました。

このフェーズでは、正式にETH1がシャードとなり、ビーコンチェーンに繋げられます。それと同時にETH1のコンセンサスメカニズムがPoWからPoSへ変更になります。

複数のシャードが作られるのが後になったことにより、シャードによるスケーラビリティの解決が後に回されることになりました。優先度が下がったのは、Layer2ソリューションが発展してきたことにより、今後しばらくはロールアップなどのLayer2ソリューションでスケーラビリティがある程度解決される見込みがあるためです。

シャード (2022)

シャードフェーズは、フェーズ1とフェーズ1.5と呼ばれていましたが、マージの優先順位が上がったため、最後のフェーズとなりました。シャードとは、データベースを水平に分割し管理する手法のことを言いますが、これは中央集権化をさせないようにスケールさせるためにはとても重要です。

複数のシャードチェーンが作られるため、各シャードのデータは少なくなります。Ethereumのバリデーターは、一つのシャードの情報のみを使ってシャードチェーンを維持するのでマシンのスペックやデータのサイズの要求が下がります。最終的には、複数のシャードチェーンが同時に稼働するので、シャード分だけ同時にブロックが生成されます。つまり、シャード分だけ処理できるトランザクションの数が増えていくことになります。

このフェーズは、さらに2つのバージョンに分かれています。

バージョン1は、データ利用可能性(Data availability)と呼ばれています。このバージョンでは、合計64のシャードチェーンが作られる予定です。しかし、元々のETH1チェーンのみがスマートコントラクトなどを実行し、データのみが分散化されている状態になります。スケーラビリティは基本的に、マージフェーズと同じく、Layer2が使われる見込みです。

バージョン2では、データのみを保持していたシャードがスマートコントラクトなどを実行出来るようになります。しかし、本当に64のシャードチェーン全てがスマートコントラクトを実行する必要があるのかなどまだ議論が続いています。

バージョン2に関しては、まだコミュニティ内で議論されていて、研究開発もまだ進める必要があります。

予想されている性能

プロジェクトが進むと同時にさまざまな技術が議論されるので、正確に性能を測ることは出来ませんが、シャードバージョン1とLayer2ソリューションのロールアップを組み合わせることにより、毎秒100,000トランザクションが可能であると言われています。

特に、zk-rollup(Zero Knowledge rollup)をスマートコントラクトに対応することができれば、待ち時間がなくトラストレスにオフチェーンで性能が大幅にあげられるようになります。

他のプロジェクトとの違い

さまざまなプロジェクトがEthereumのスケーラビリティの問題を見て解決しようと立ち上がりました。その中でも、大きな流れはLayer2の解決法とSidechainなどのインターオペラビリティを活用した解決法になっています。

現在の代表的なLayer2の方法は、Optimistic Rollup / ZKRollupになっています。これらは、ブロックチェーン上以外(オフチェーン)でトランザクションを実行して、その結果を証明できる形でブロックチェーン上に保存するという手法です。

サイドチェーン/インターオペラビリティは、別のブロックチェーンを作りそれらに処理を分散したうえで、複数のブロックチェーンのコミュニケーションを成り立たせるという手法です。こちらは、主にPolkadot、CosmosやLiskが採用している手法です。

Ethereum2はサイドチェーン/インターオペラビリティの一種で、複数のチェーンを同時に動かしながら完全に同期させる作りになっています。特に、特徴的なのは全てのチェーンは同じプロトコルで動き同じ情報を共有出来るという点です。

実際には、Ethereumでもレイヤー2の方法で直近はスケーラビリティを向上させて、その上で、完全な形のETH2 (フェーズ2後)になることで大きなスケーラビリティを手に入れることが出来るようになっています。

まとめ

Ethereum 2.0 は長年議論され、ついに2020年末にはPoSで動くビーコンチェーンも動き出しました。

Ethereumは、DeFiの人気によって2021年始もガス手数料も大きく上がりスケーラビリティの必要性がより鮮明になりました。Ethereum1.0と2.0のマージは現状予定通り進んでいるようなので、期待は出来そうですが実際のスケーラビリティには影響はなさそうです。

現状、スケーラビリティに関してはLayer2ソリューションのRollupに期待が持たれています。

参考文献

株式会社VIPPOOLはブロックチェーンのコンサルティングからコントラクト開発、マイニングハードウェアの販売まで、ブロックチェーンに関するトータルソリューションを提供しています。お気軽にお問い合わせください。また、VIPPOOLでは技術BLOGも運営しています。

--

--

Shusetsu Toda

Lead developer @LiskHQ Blockchain, Web, Game engineer / developer in Berlin, Germany. University of British Columbia Grad, Ex-Cyberagent