はしだ くみこ
W.L.S. MOMO
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3 min readDec 2, 2016

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野球少年の憂鬱

のんびり、ほっこり

6年生のO君は身体は細くて身長も低く、
決して運動神経が良い方ではありません。

どちらかというと不器用な方です。

それでもお父さんの影響もあり、野球が大好きだったので
2年生になると地域の野球クラブに入りました。

それから5年間ずっと続けて来ました。

家族も協力してくれて、当番の日には母は小さい妹を連れて
日がな1日グラウンドで過ごす日々でした。

素振りの練習やランニングも
毎日欠かさずしています。

高学年になると土日、祝祭日は全て
野球の練習や試合です。
学校以外で人生の一番多くを
野球のグラウンドで過ごしているのです。

でも続けて来た割には上手くないらしく
あまり活躍できないそうです。

それでもやはり野球が大好きなので
どんなに厳しくてもひたすら続けて来ました。

そんな彼を見ていて
本当に偉いな〜と関心していました。

あと少しで中学生。
部活は当然野球部かと思っていました。

ところが
「うーん、バトミントンかな〜」

意外な返事が返って来ました。

「エッ?!野球しないの?」

てっきり続けるものだとびっくりして聞き返しました。

「だって野球やってると家の中がざわざわするからな〜」

つまり、野球のこととなると父親の熱が入りすぎて
とにかく容赦ない駄目出しをされるそうです。

もともとそんなに上手くない彼を
そうとうきつく叱ったりアドバイスをするのだそうです。

試合ともなると、上手く活躍できなかったりヘマをすると
両親揃ってあれこれあれこれお説教が始まるらしく

これが”家の中がざわつく”現象のようです。

「それでも野球好きなんでしょ?
中学校の野球部ならもうそんなに言われなくなるんじゃないの?」

ところが最近の中学の野球部は、部員が集まらず
試合ができないのが現状だそうな。

あれだけ野球している子が多いのになぜ?

野球を本格的にする上手い子達はみな
地域などの少年野球チームに所属するので
中学の野球部には入らないのだそうです。

彼の望みはただ同じ年齢の子たちと一緒に
野球をやって楽しみたいだけなのに。

「先生、今日な、中学見学行ってきてん。」

「へー、どうやった?」

「それでな、中学のバトミントン部は女子しかなかってん・・・」

彼の苦悩はまたしばらく続きそうです。

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はしだ くみこ
W.L.S. MOMO

ラーニング・ファシリテーター、コーチ。子どもの頃のコンプレックスから「なぜ人の能力には差があるのか」を追求して来ました。本当に必要なのはメソッドやノウハウではなく”学びが起きる場”そして人と人との有機的なつながり。理想のコミュニティ、ムーミン谷を目指しています。ワンダフル・ラーニング・スペース・モモ代表。