継続的イノベーション

以下は、Ash Mauryaによる「Continuous Innovation」の翻訳です。本人の許可を得て掲載します。

2009年、世界中の起業家たちが後にリーンスタートアップとなる草の根運動に参加しました。リーンスタートアップが成功した理由は、顧客が製品を要求・消費する方法に根本的な変化を引き起こし、それが製品の開発とデリバリーの方法を大きく変えたからです。

すべては顧客から始まる

これまでの製品開発の歴史をふりかえってみましょう。

1950年代:リーンマニュファクチャリングの時代―ムダの排除

20世紀の初頭は工業化の時代でした。カミソリから自動車まで、あらゆる製品が工場で大量生産されるようになっていきました。その後、戦後の厳しい資源制約により、多くの業界がジャストインタイム方式を採用し始めました。大野耐一氏はこの考え方を大きく発展させ、トヨタ生産方式を開発しました。後のリーンマニュファクチャリングです。効率性(ムダの排除)が最も重要な要因であり、圧倒的な優位性は多くのユニットを最も安いコストで生産することから生じるものでした。

1970年代:ウォーターフォールの時代―ステージ化

ソフトウェア/デジタル製品に移行したときの最初のアプローチは、物理的な製品に使っていたプロセスと同じものをデジタル製品にも適用するというものでした。生産サイクルの途中で設計を変更するのはコストが膨大にかかるため、シーケンシャルまたはウォーターフォールの手法で製品を構築しました。これは、要件収集、設計、実装、検証、保守といったステージが明確に分けられている手法です。計画づくりが最も重要な要因であり、圧倒的な優位性は「決められた計画」を(決められた期間内に決められた予算内で)実行することから生じるものでした。

1990年代:アジャイルの時代―反復型

パーソナルコンピューターの普及に伴い、サイクルタイムの長い(数年かかる)ウォーターフォール型の製品開発プロセスでは、顧客の要求に答えることができなくなっていきました。生産サイクルの途中で要件が変化するのは当たり前となり、新しい軽量級のプロセスが必要とされました。その頃、スクラムやXPなどの反復型の製品開発手法がいくつも登場しました。これらは、製品開発サイクルの途中で定期的に顧客フィードバックを取り入れ、漸進的に製品を開発していくというものです。こうした新しい手法は、後に(2001年にユタ州で開催された有名なスノーバード会議で)「アジャイル」と名付けられました。反復が最も重要な要因であり、圧倒的な優位性は要件の変更リスクを管理することから生じるものでした。

2010年代:リーンスタートアップの時代―継続的

そして、世界は再び変化しました……。製品は箱に入れて届けるものではなく、インターネット経由で届けるものとなりました。顧客の需要はさらに高まりました。そして、顧客の声を反映したものを作るだけではもはや不十分となりました。それを作り終えた頃には、顧客が本当に望むものは違ったものになっているからです。この新しい時代において、顧客が望むものを構築する唯一の方法は、継続的に顧客にエンゲージすることです。

私たちは新しい時代に生きている

現代の賭け金は高い

これまでの製品の構築方法は、大きな参入障壁があり、競合が少ないときにだけ機能するものでした。最初に間違った製品を作ったとしても、学習して軌道修正する余裕がありました。

しかし、現代はインターネット、オープンソースのテクノロジー、クラウドコンピューティングにより、これまでよりも安価で高速に新製品を投入できるようになりました。このことは、以前よりも(既存企業とスタートアップの両方の)競合が増えたことを意味します。

現代の「製品」には、ソリューションだけではなく、ビジネスモデルも含まれます。それを構築することがビジネスであり、顧客が望むものを提供できなければ、悲惨な結果をもたらすことになります。こうした新しい現実は、適応できない企業にすでに大きな打撃を与えています。

過去15年間でFortune 500企業の52%が消滅した

その一方で、成功している企業は「優れたアイデアは貴重であり、発見するのは難しい」と認識しています。次の大きなアイデアを発見するには、アイデアを何度もすばやくテストするしかありません。

ある時点で稼働しているFacebookのバージョンは1つではありません……おそらく1万はあります。
―マーク・ザッカーバーグ

この新しい世界では、学習のスピード新しい圧倒的な優位性になっています。高速に学習し、競合を抜き去り、顧客が本当に望むものを構築する企業が、これらを継続的に行うことで、顧客との関係を維持し、ビジネスモデルを繁栄・成長させていくのです。

なぜみんながやっていないのか?

問題となるのは、このように製品を作ることが、まったく新しい根本的に異なるアプローチだということです。私たちは、この新しい働き方に適していない過去のシステムやプロセスに囚われています。静的な計画を実行しながら、高速に学習できるのでしょうか? 軽量な製品開発プロセスに切り替えたとしても、古い世界のツールでビジネスを計画しているのです。

不確実性が高い場合、静的な計画は必要ありません。動的なモデルが必要です。

ここからどこへ向かうのか?

リーンスタートアップのムーブメントがこの変化を引き起こし、初期の原則を整備してくれましたが、いまもなお新しい働き方を実施可能な方法論にするまでの幼年期にいると私は考えています。また、リーンスタートアップだけでは不十分であるとも考えています。

リーンスタートアップの実験駆動アプローチは、アイデアをすばやくテストするには最適ですが、その成功は着手したアイデアによって決まります。よくないアイデアから着手すると、アイデアがよくなかったと(すばやく)学習できるだけです。それでも物事は進展しています。ですが、本当に知りたいのは「優れたアイデアはどこからやって来るのか?」です。

私は、リーンスタートアップの高速な実験のフレームワーク、高速なビジネスモデリング課題の優先順位付けフレームワークを組み合わせたところに、次のイノベーションの三位一体があると考えています。こうした新しい働き方を総称して「継続的イノベーション」と呼びます。

もちろん、すでに継続的テスティング、継続的インテグレーション、継続的デプロイメント、継続的デリバリーなどが存在します。ですが、それらはソリューションを「製品」として扱っています。一方、継続的イノベーションは、動作するスケール可能なビジネスモデルを「製品」として扱っているのです。

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.