ギークが世界で安全に感じることを助ける:私の使命 by Kent Beck

以下は、Kent Beckによる「Help Geeks Feel Safe In The World: My Personal Mission」の翻訳です。本人の許可を得て掲載します。

キャリアを開始してから25年が経ち、ついに私の使命がわかりました。パターン、xUnit、TDD、エクストリームプログラミングなどに続くものです。一歩離れて「これらがピースになるパズルは何か?」と問うことができました。

私は(みなさんの多くがそうであるように)新しいマクロ経済環境において、キャリアにおけるリスクの高い決断をしようとしています。これから進むべき地図をできるだけ明確にしたいと思います。

そこで、私の使命を分析してみます。

助ける

私は誰かに何かを感じさせることはできません。私ができることは助けを申し出ることです。まずは、私自身が自分に正直に生きることです。それができたときに、誠実に何か書いたり話したりできるのです。

「助ける」の基準を設定すると、進捗を確認したり、自分の功績を主張したりすることが難しくなります。実際のインパクトは、認知的なインパクトとはトレードオフの関係です。やれやれだぜ。私は実際のインパクトにフォーカスします。誰かが功績を分け与えてくれることに期待しましょう。

ギーク

GeePaw Hillはギークを「技術的に高度であり、創造性が高く、また、その両方になることを強く望んでいる人物」と定義しています。つまり、みなさんです。時には(私のように)改善すべき社会課題を扱うこともあります。

私の仲間には、ギークを助けることから、世界を助けるところへ移行した人もいます。私には荷が重すぎます。私は自分が使っているものであれば、自信を持って言うことができます。世界を相手にするのは無理そうです。

私の言うことが(XPが一時期ビジネスコミュニティで流行ったように)世界に届いたならば、それは素晴らしいことです。しかし、それはあくまでもボーナスです。私の使命はギークを助けることです。

感じる

私の使命は感情にフォーカスすることです。ギークは思考することが得意だからです。もちろん完璧ではありません。賢いからといって、正しいわけではありません。ギークの大きな欠点は、感情のコントロールにあります。

私は感情に押しつぶされそうなときに「論理を挿入する」ことを学びました。注意力欠陥でさまざまなことに気を取られそうになったときには、自分に「わかった」と言い聞かせ、ひとつのことだけに集中するのです。

安全

私のキャリアの目標は「調和」です。

  • 安全なときに安全だと感じること。
  • 安全ではないときに安全ではないと感じること。そして、それに対応すること。

私は感情と事実が一致しないことがよくあります。たとえば、パーティーに行くと、すぐに圧倒されます。すべての人、すべてのことに注意を向けようとしてしまうのです。安全なのに、安全だとは感じられません。

その逆もあります。口が達者で不誠実な輩と話していると、安心するのです。興奮することもあります。私を傷つけても構わないと思っている(あるいは実際に傷つけようとしている)人を相手にするのは、安全ではありません。どちらも感情と事実が一致していないのです。

世界で

私は変わっているのかもしれません。それでも、私は人類の一員です。人類の過ちの責任の一端を担っています。社会的なつながりがあるからこそ、完全な私になれるのです(やはり霊長類です)。幸せな隠遁生活を送ることもできるかもしれません。しかし、それでは完全にはなれません。

また、私のもうひとつの使命を見失ってしまうでしょう。それは、私と似たような人のことを、私とは違う人に説明することです。私たちは誰もがみんな違います。しかし、共通点を見つけることはできます。

私の使命は、私の能力とニーズが交差するところで、世界や人々に接することです。

使命

私の使命は「ギークが世界で安全に感じることを助ける」です。私がこれまでにやってきたことにも合致します。

  • パターン:問題と解決策から何度も発生する部分を取り出し、ユニークな側面を明確にする。
  • xUnit:心配事を自信につながるテストに変換する。
  • TDD:厄介な問題を「テスト・コード・設計・テスト・コード・設計」の流れに分解する。
  • エクストリームプログラミング:安全な社会的相互作用のリズムと構造を作り、(コードに関する)問題解決につなげる。
  • 3X(Explore/Expand/Extract):罪と罰を一致させる。厳密性、創造性、安全性、計画立案、反応性は、やりすぎても、やらなさすぎてもいけない。

あなたの使命

大学で最初のCSの授業を受けたあとに「プログラミングのやり方を変えたい」とつぶやきました。私の使命はそこから始まっていると思います。しかし、全体像が見えてきたのは、実際に仕事を始めてから数十年後のことでした。これからキャリアを開始する方に(もちろんキャリア10年や20年の方にも)アドバイスがあります。

意識の高い言葉を並べるよりも、もっとプログラムを書きましょう。

パズルのピースがそろったら、あとはピースを並べ替えて、出てきた絵を目にすればいいのです。

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角 征典 (@kdmsnr)
ワイクル株式会社:ブログ

ワイクル株式会社 代表取締役 / 東京工業大学 特任講師 / 翻訳『リーダブルコード』『Running Lean』『Team Geek』『エクストリームプログラミング』他多数