【書評】これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング

y_koh
悪あがきプログラマー
7 min readMay 6, 2017

マーケティングって大事そうな気はするんだけど、なんだか難しそう。ちょっと勉強してみようと思ってもちまたのマーケティング本は横文字と理論ばかりで難しい。そんななか、本書では身近な疑問を取り上げているためとても読みやすくなっている。

いくつか用語ベースで認識がはっきりしたものや、新しく知ったものを紹介してみる。

マーケティング

マーケティングとは、「頑張らなくても売れる方法」を整理して、誰もができるようにした考え方なのです。だからビジネスパーソンにとって、必ず役立ちます。

言ってしまうとこれだけ。「売れる方法」と書いてあるので営業だけの話かというと、もちろんそんなことはない。売るために何を作るべきかという商品開発にも深く関わってくる部分。

バリュープロポジション

バリュープロポジションとは、お客さんに提供する価値を決めたものだ。売る側はバリュープロポジションを考え抜くことで、お客さんがお金を出す理由を創り出す必要がある。

既にあるものを作っても売れない。唯一のものでもお客さんが欲しいと思わなければ売れない。本書ではプロダクトの文脈で書かれているけれど、もっと上流で考えると会社の存在意義ともなる。

この用語を初めて知ったのは、数年前に元Microsoftエンジニアの中島さんのメルマガだった。

つまり、バリュー・プロポジションは、企業と顧客の間の「約束と信頼」という関係を定義し、同時に、その企業で働く人たちの行動指針となるのである。

その企業で働く全員がビジョンを共有し、バリュー・プロポジションをしっかりと理解していれば、「何を優先して働けば良いか」がはっきりするし、「自分たちが実際にその約束を果たしているかどうか」の測定が容易になる。

Fedexの場合で言えば、「確実に約束した時間どおりに配送」することが最も大切なことなので、「コスト」と「確実さ」のどちらかを選ばなければならない状況に置かれた時にどちらを選択すれば良いかは明白だし、「自分たちが実際にその約束を果たしているかどうか」は純粋に何パーセントの荷物が約束した時間どおりに配送されたか、を測定すれば良い。

プロダクトであれ、会社であれ、これがふわっとしていると出来上がるものも当然ふわっとしたものになる。

認知的不協和の解消

個人的に一番おもしろかった部分。

多くの人は高いものを買ったあとに、なぜかその商品をググるらしい。たしかに言われてみると自分もそうしている気がする。それもポチってから届くまでの間。

なぜググるのかというと、高い買い物をした後に「本当に買ってよかったのか?」と不安になるそうだ。

マーケティング理論では、この現象を認知的不協和の解消と呼んでいる。 「高い買い物だったけど、いい買い物だった」という思いと、「でも実は間違いだったんじゃないか?」という不安、この2つの認知を解消して「やはり自分はいい買い物をした。よかった」と、自分を納得させるために、人は買った後ほど、広告をシゲシゲとながめたり、商品の記事を読んでしまう。

面白いのはわかるが、これがなんでマーケティングで大事なのか。

なぜなら「やっぱり買ってよかった」と不安が解消されたお客さんは、その後も継続して「顧客」になってくれるからだ。 だから何があっても、こういうお客さんは決して手放してはいけない。商売は販売して終わりではない。販売ははじまりなのである。

この不安を解消すると継続して顧客になってくれるからだ。この継続してがとても大事なポイント。

顧客生涯価値

このように1人のお客さんが生涯にわたり、顧客でいる間に企業にもたらす価値のことを、顧客生涯価値(カスタマーライフタイムバリュー)という。

本書の例だと、ベンツを買った友人が30代〜70代の40年間同じ車種を5回買い換えると、顧客生涯価値は300万円x5台=1500万円になる。

このように、商品単発で考えるのではなく、将来的な価値も考えなければいけない。

もちろん上記を達成するには、他に浮気されずにずっとファンでい続けてもらう必要がある。ではどうすればファンでい続けてもらえるか。それは顧客満足を提供し続けるしかない。

顧客満足についての考え方はかんたん。

顧客満足 = 提供された価値 ー 事前の期待

事前の期待を超えれば良いだけ。

プロダクトアウト

アホみたいに機能てんこ盛りにしたガラケー後期や、3Dテレビのように、「お客さんのニーズに応える」という商品開発の目的を忘れ、商品開発自体が目的にすりかわっていることをプロダクトアウトと言う。

ガラケーや3Dテレビをdisってみたけど、これには耳が痛い人も多いだろう。僕も痛い。

ちょっときつい言い方になってしまうけど、開発側の思い込みやエゴで作ったものがお客さんのニーズが無いものだったら、それはただのゴミ。ゴミならまだ良い。一番困るのが捨てれもしない邪魔なゴミ。

だからプロダクトアウトになってしまうのは可能なかぎり避けなければいけない。そんなプロダクトアウトに陥らないための魔法の言葉がある。

  • 「そもそも、お客さんって誰だっけ?」
  • 「これってお客さんにとって、何がいいの?」

ものづくりに集中していると、途中で道を間違えてもなかなか気づかないもの。だれか一歩引いて危険を察知したらこれらをつぶやいてみると良いと思う。アジャイルで言うとプロダクトオーナーの仕事になるんだろうか。

ただ、毎回危険だからと言ってちゃぶ台ひっくり返してばかりだと何も進まないし、どんどん言えない空気になってくる。だいたいこれに陥るのは最初の認識合わせが足りないことが多い。

そう考えると、企画の段階で上記の質問の答えはちゃんと用意しておくのがベストな気がする。

他のマーケティングおすすめ本

昔読んだこの本もなかなか面白かった。

市場化が進む社会で高く売れるのは、「よい商品」ではなく、「需要に比べて供給が少ない商品」なのです。

こんな感じでズバッと言い切ってくれるところが気持ち良い。

また、「これ、いったい…」がマーケティング用語も交えてプロダクトや顧客の話が中心なのに対して、「マーケット感覚…」はもう少し広い視野で、どういう考え方をすればよいかというヒントをくれる感じで書かれている。

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