1人ビジネスでもスキャナ保存できるか?
スキャナ保存制度では、原則として、①領収書などの書類を受け取る人、②書類をデータ化する人、③データと書類現物が一致しているか確認する人の三者によるチェック体制が必要となります。
これは、社内での内部牽制を前提とした「適正事務処理要件」を満たす必要があるためです。
しかし、個人事業主や法人代表が1人で経営を切り盛りしているような「1人ビジネス」であってもスキャナ保存制度を導入することはできます。これは平成28年税制改正の恩恵ともいえます。
改正された電子帳簿保存法では、小規模企業者(中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模企業者)である場合、いわゆる「適正事務処理要件」について、税理士などの税務代理人が定期的な検査を行うことによって、相互牽制の要件が不要とされました。
つまり、顧問税理士などが定期的なチェックを行うことを前提にスキャナ保存制度を導入することが可能となります。また、必ずしも記帳や税務申告を担当する顧問税理士である必要はありません。定期チェックだけを委託するという契約も考えられます。
スキャナ保存制度の導入について専門家のサポートが必要な場合には、筆者が運営する下記サイトでも相談を受け付けています。
なお、電子帳簿保存法のQ&A(電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】)では、下記のような解説がなされています。合わせてご参考にしてください。
【問46】
私は、1人で建設業を営んでいます。この度、国税関係書類(契約書、領収書)のスキャナ保存を始めようと考えていますが、1人では、適正事務処理要件を満たすことはできないのでしょうか。【回答】
国税関係書類の受領等から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの各事務の一部及び定期的な検査を外部の者に委託するなどの対応をすれば、規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)イ及びロの各要件を満たすことはできます。なお、「1人」であれば、小規模企業者に該当することから、定期的な検査を税務代理人に依頼することについて税務署長の承認を受けている場合は、相互けんせい要件は不要となります。
【解説】
規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)に掲げる事項(①相互けんせい、②定期的な検査、③再発防止策)について規程を整備するとともに、これに基づき事務処理を行うことが要件とされています。①については、同号イにおいて、「各事務について、それぞれ別の者が行う体制」とされていることから、「1人」で各事務を行う場合には、この規定の要件を満たさないと考えられます。
しかしながら、「別の者」について特別の制限が設けられていないことから、外部の者を別の者と解することができるため、明確な事務分掌の下に、各事務の一部について委託し、別の者が行う体制としているのであれば、この規定の要件を満たすことはできると考えられます(どの事務を別の者が行うかについては、【問48】を参照願います。)。
また、②については、事務を担当している者が定期的な検査を行った場合、仮に紙段階で改ざんが行われているときには、自ら検査をしてもチェック機能が働かないこととなるため、「1人」で各事務を検査することは認められないと考えられますが、各事務の検査を外部の者(各事務を担当する者以外の者)に委託していれば、この規定の要件を満たすことはできると考えられます。
なお、③については、上記により外部の者に委託している場合で、外部の者が同号ハに定める「当該各事務に係る処理に不備がある」と認めたときは、委託されている外部の者から同号ハに定める報告が行われる必要があります。
ただし、平成28年度の税制改正により、小規模企業者の特例が新設されたため、小規模企業者については、定期的な検査を税務代理人が行うことにより、適正事務処理要件のうち、相互けんせい要件(①)は不要となりました。