【イベントレポート】「もしも投資の無い国に生まれたら?- 自分、お金、社会の本当がわかる」@渋谷教育学園渋谷中学高等学校(前編)
2023年3月某日、WealthPark研究所による中高生向けワークショップ「もしも投資の無い国に生まれたら?- 自分、お金、社会の本当がわかる」を開催しました。このワークショップが目指すのは、これから社会とかかわりながら自分の人生をデザインしていく10代の生徒さんに、投資という社会参加を知ってもらうこと、そして、新しい選択肢にチャレンジする楽しさを感じてもらうこと。そんなこれまでにない切り口のお金と投資の学びに、「自調自考」を教育理念に掲げ、世界に通じる自律型人材の育成を実践する渋谷教育学園渋谷中学高等学校が賛同してくださり、今回の実施に至りました。
中学校1年生から高校2年生までの30名の生徒さんと、クイズやゲームを交えながら自分、お金、社会、世界について一緒に考えた2日間・合計5時間の一部を、前編・後編の2回にわたってレポートします。
●「もしも投資のない国に生まれたら?- 自分、お金、社会の本当がわかる」はこんなワークショップ
《コンセプト》
今回のワークショップで10代の生徒さんたちに受け取ってほしいのは、「投資という社会参加を通じて、新しい選択肢にチャレンジしよう」というメッセージ。WealthPark研究所が考える下記の3つの見解を織り込みながら、明日、そして将来、自分らしいチャレンジをしたくなるように設計しました。
《手法》
アクティブラーニングを中心とし、手を動かし、議論し、発表しながら、答えのない問いに能動的に取り組んでもらいます。学年をまたいだ初対面同士のグループを編成し、お互いを尊重するコミュニケーションのとり方も学んでもらいます。
《構成》
75分x 4限の合計5時間で自分→社会→世界→宇宙と視点を段階的に広げながら、お金や投資について考えや理解を深めていきます。
《モデレーター》
WealthPark研究所の所長/インベストメント・エバンジェリストである加藤航介が担当。ファンドマネージャーとして、個人投資家として、これまで培ってきた世界30ヵ国での豊富な投資の実体験を軸に、投資の本質に迫る本ワークショップを考案しました。
それでは、当日のワークショップの様子をレポートしていきます。
●1限「人生と選択について」
投資とは何かを選択する行為であり、選択をするためにまず必要なのは、自分を知ること。自分が大切にしていること、思い描いている未来や人生、今そして将来の自分の価値(=人的資産)を見つめずして、良い選択はできません。また、自分の人生をデザインしていくためには、自己投資やお金の投資と上手に付き合うことがとても大事。ということで、ワークショップ1日目の1限では、選択について、自分について、丁寧に向き合うことからスタートします。
まずは、「最近の日常生活での選択」、「過去の人生における選択」や、「その選択をする上で必要なこと」を考えてみるアイスブレイクから。こんな一人一人のこれまでのユニークな選択と決断をエピソードも交えて発表してもらい、会場は大いに盛り上がりました。
改めてこうした一つ一つの選択を振り返ってみると、人生は選択の連続であることが浮かび上がっていきます。そして、「放課後の勉強をスタバでするか?マックでするか?」といった日常における選択も、「進学先を渋渋にするか?他の学校にするか?」といった人生にかかわる選択も、決断をするには情報・知識、他人からの支援、そしてお金が必要になるという気づきを得ることができました。
続いて、お金を得る方法を善悪問わず思いつく限り書き出してもらうゲームや、個人や社会が行う身の回りの投資やその目的についてのディスカッションを通じて、投資は他者と共に長期に豊かさを増やす活動であること、世の中は投資に溢れていること、投資は未来にお金を投じることなのだと、理解を深めていきました。
投資の本質が少しずつ見えてきたところで1限の最後に行ってもらったのは、「人生イベントのハピネスチャート」と「大切なものレーダー」の作成。一人一人、自分の人生や価値観について向き合ってもらいました。
完成したものをお互いに見せ合ってみると、全員が二つとないユニークな人生を歩んでいて、誰一人としてまったく被りません。お金や投資は自分の人生をより幸せで豊かにするための手段であるからこそ、自分にとっての幸せや豊かさを理解することが大切なんですね。
「投資とは何らかの選択であり、そうした選択で自分の人生はデザインされる」、つまりは自分が何を選び取るか、何に投資するかで、自分の人生が決まるんだという理解が得られたところで、1限は終了です。
●2限「自分を社会から見つめる」
続く2限では、自分の選択が個人の豊かさのみならず、社会の豊かさと密接につながっていることを体感していきます。ゲームを通じて普段とは違う立場から社会を見ることで、人や社会が豊かになるには何が必要か、一緒に考えていきました。
最初のお題はこちら。
それぞれのグループで議論してもらった結果、「一人一人が望む仕事に就けるようにする」、「全員が最低限の生活ができるように支援をする」、「給食を無料化する」、「裁判の費用を無料化する」といったアイディアが出てきました。さらに、モデレーターである加藤が「差別のない社会」、「豊富な教育の機会がある社会」、「さまざまな人が混じり合える社会」という例も紹介していくと、国が人々のためにお金を投じることは、その社会が成長し、豊かになるためのタネになるというサイクルが見えてきました。
次に投げられたのはこんなお題です。
ここで出てきたアイディアは、「得られたお金のうち最小限は残して、それ以外は投資や寄付を行い、社会のためにお金を使っていく人」、「やろうとしていることを他者に理解してもらい、一緒に歩んでもらえるような、人を惹きつける力のある人」、「唯一性のある人」、「他者に優しくすることで社会を豊かにできる人」などなど。整理していくと、「利他的思考」、「希少価値の高いスキル」、「新しいチャレンジ」といった個人の持つ要素は社会の豊さに貢献するという視点が得られました。
こうして理解できたのは、個人と社会は密接につながっているということ。ある国の「王様」と「平民」という架空の立場に立って社会を豊かにする方法を考えていく中で、正しい投資が人々と社会の豊かさをつくることや、人々によるお金の投資は、労働、納税、投票、寄付・ボランティアと同じように「社会参加」であるという気づきが得られました。
ここで、生徒さんに出したお題を一緒に考えてみませんか?お金の投資が「社会参加」であると聞いてもピンとこないかもしれませんが、実はお金の投資は社会参加の一つである選挙とも共通点があるのです。ヒントは、〇〇は漢字、□□□□□□はカタカナです。
「えー、なんだろう」、「わかんない〜」」と言いながらも、一生懸命考えてくれた生徒さんたち。答えを発表してもらうと、〇〇には1限の頻出ワードだった「選択」を入れるチームが多い中、「応援」を入れたチームがいました。そうなんです、実は選挙もお金の投資も「応援」という共通の役割があるんですね。世の中を変えたいという熱意を持つ若い政治家を応援することが選挙の役割の一つであるように、新しい起業家やビジネスを応援することは投資の役割の一つ。チャレンジャーへの応援に参加できる選挙や投資の機能が社会からなくなってしまったら、何の成長も発展もなくなってしまいます。
そして、□□□□□□に入る言葉としては、「プロデュース」や「カスタマイズ」と答えてくれたチームがいました。これはWealthPark研究所も想定していなかった新しい答え。10代の想像力に逆に唸ってしまいましたが、用意していた答えである「モニタリング」を伝えると、「あー!」という納得の声を上げてくれました。先ほどの「応援」という役割に加えて、大物政治家や大手上場企業といった権力者が資源を正しく使って社会を豊かにしているかチェックするのも、選挙と投資が果たせる役割なんですね。
1日目では、投資は自分の人生を豊かにデザインしていくための手段であり、個人のみならず社会も豊かにしていく手段でもあることを理解しました。お金や投資に関する基本的な考え方を学んだ1日目。2日目は、舞台を世界、そして宇宙に移し、よりアクティブに投資について考えていきます。
ちなみに、宿題はこちら。2日目はどんな内容になるのでしょうか…?