WePowerとEleringによるエストニア全土での電力トークン化実験の結果報告

Motoya Tsuchida
WePower
Published in
8 min readOct 26, 2018

--

この結果報告に向けて動いていたことによって、この数週間私たちのヨーロッパとオーストラリアのオフィスはとても盛り上がっています。ようやく、私たちは画期的なエストニアでの電力トークン化パイロットテストに結果をシェアすることができます。

本日、WePowerはエストニアの配電システム事業者(TSO)Eleringとのパートナーシップで実施した、多くの人が注目している全土での電力トークン化パイロットプロジェクト の成功を発表します。これによって、電力セクターにおけるデジタル革命の道を開きます。

このプロジェクトでは、エストニア全国での1年間分に相当する電力消費量と発電量のデータをEthereumブロックチェーンに変換することを含んでいて、その結果は電力産業、そしてブロックチェーン産業の両方にとって、プラスの結果が出ました。

26,000時間、そして24TWh分の電力発電量と消費量のデータは38,973,240,000枚のスマートエネルギートークンに変換されました。

WePowerのチームを代表して、友人、パートナー、そしてトークンホルダーとWePowerコミュニティの皆様からの継続的な支援に感謝します。

実験を行った目的

私たちのミッションは企業にとって直接グリーンエネルギー開発者と取引するための合理的な方法を提供することで、再生可能エネルギーへの転換を全世界で促進することです。現在のマーケットに存在する電力購入契約(PPA)のような金融、そして法的な仕組みは企業のエネルギーバイヤーにとってかなり複雑で、かつ高額です。私たちの次世代のグリーンエネルギー調達と取引プラットフォームは仮想PPAを使い、これは通常なら完全に新しいレベルに到達するために何年も必要となるプロセスです。

契約プロセスを単純化し、合計量の中から最低0.1%の少量から契約を行う機会を提供することで、WePowerはこれまで参加できなかった購入者にPPAマーケットを開放します。 当社は、全ての会社が規模にかかわらず、費用対効果の高い代替可能な方法でより環境に優しくすることを可能にしています。

エストニアでの全国電力トークン化パイロットによって、WePowerのプラットフォームのコアとなるブロックチェーンで、私たちの最初のグリーンエネルギーオークションを実施するためのしっかりとしたインフラとなり、さらにセカンダリーマーケットにおける大規模な電力取引機能の開発を可能とする、Ethereumの技術的なスペックについてテストすることができました。

テストの主要な成果

電力マーケットにとって、ブロックチェーンソリューションの最大の問題点はスケーラビリティの欠如です。さらに、パブリックブロックチェーンと中央集権型のITプラットフォームを組み合わせる参照アーキテクトの欠如という問題もあります。

成功するために、私たちが必要とするのは以下です。

  • 現実的ながらも、プライバシー関連の規制を完全に遵守するテスト環境の設計
  • WePowerの中央集権プラットフォームとパブリックブロックチェーンの間にある非同期統合レイヤーのテスト
  • 全国規模でのWePowerの取引プラットフォームを運営するのに必要な処理能力のテスト

面白いデータとして、もしもデータセットの最適化をしていなかったら、6.132億データポイントの格納にはだいたい14年かかり、2億1000万ユーロが必要になります。WePowerの行ったデータ最適化に関しての技術的な詳細はテクニカルレポートをご覧ください。

なぜエストニア?

エストニアはすでに素晴らしい電力データインフラを持っています。EleringのEstfeedというシステムはWePowerにとって完璧なスケーラブルなデータブリッジとして機能しました。Estfeedデータ取引プラットフォームによって、最終消費者、発電事業者、そしてネットワークオペレーターがe-Eleringを使って、誰とデータを共有して良いかを選択できるようになることで、セキュリティを強化し、エネルギーメーター(電力やガス)の消費データへのアクセスを認証することができます。

Eleringによって提供されたデータは、ポストコード内のすべてのメーターポイントからの1時間当たりの消費データをまとめることで、匿名化されました。本質的に、近隣からのデータはすべてまとめられることで、誰のデータなのかを特定することができなくなっています。

「将来のクリーンで、安全なエネルギーはイノベーティブなソリューションと消費者からの支持にかかっています。しかしながら、多くの国における障害はエネルギーデータへのアクセスがないことです。Estfeedはエストニア内でのデータアクセスを可能とし、現在はこれを世界規模で行おうと動いています。WePowerの概念実証はデータへのアクセスがどれぐらいイノベーションに重要なのかを示しています。」 — Taavi Veskimägi Elering CEO

結果と結論

26,000時間、そして24TWh分の電力発電量と消費量のデータは38,973,240,000枚のスマートエネルギートークンに変換されました。

Ethereumは複数年に渡る契約に対応するのに十分なほど技術として成熟しています。確かにまだ開発段階のブロックチェーンの中に有望な代替となるブロックチェーンがありますが、まだ初期段階ということで典型的な電力契約の持続期間に関しては懸念点があります。

Ethereumのパフォーマンスはこのステージにおいて、WePowerが再生可能エネルギー調達と/取引プラットフォームを運営するのに十分な結果を出しました。ハイブリッドプラットフォームアーキテクトは現在のビジネスニーズのために要求されるコストパフォーマンスで運営することができます。とはいえ、将来的に要求されるパフォーマンスを満たすために、より大規模な取引プラットフォームを運用するためのより効率的なシステムを見つけるために、他のブロックチェーンやDLTソリューションの検証を検討する必要があります。

このプロジェクトについてWePowerのCTOのKasparと話している動画です。

「この規模と野心をもったプロジェクトはこれまでなく、その複雑さとエネルギーデータが高度な機密であることから部分的にも試されたことがありません。ブロックチェーンの基盤となる原則は信用であることから理想的なテクノロジーで、この業界に革命的な透明性を持ち込むために取り組むことができるものです。プロジェクトでは、データを共有する手段としてのブロックチェーンの理解を深め、エネルギー業界で必要とされる革新の道を切り開いていきます。」
— Kaspar Kaarlep WePower CTO

専用ページからプロジェクトについての詳細をご確認ください。

https://wepower.network/tech/

パイロットテストにおける全てのステップについて記載したテクニカルレポートもあります。

この20ページにおよぶレポートはWePowerのエンジニアが実験をどのように実現し、さらに次のステップについての情報や今後の機能に関しての予定についてのより深い理解を可能とします。

このレポートの要約はこちらからどうぞ。

私はこの画期的なブロックチェーンのパイロットテストを成功させたチームをこれ以上ないぐらいに誇りに思っています。これから、WePowerの研究開発チームは大規模なコモディティ取引のためのWePowerのプラットフォームをさらに最適化するために要求される機能に注力していきます。具体的には、電力とエネルギー価格の決済や相殺契約などです。ロードマップはWePowerが完全に機能する仮想ユーティリティに成長するのをサポートするコンセプトへの道を示しています。

必須の機能をカバーしたら、電力市場の動きをより深く見ていきます。Eleringとのパイロットテストの第二段階の一部として、私たちはセカンダリースマートエネルギーコントラクトの市場の動きを様々な側面から見ていきます。

Github上のWePower テストベッド

最後に、私たちのディベロッパーが専用のGitHubページを開始し、ここで技術的な発見を共有しています。ぜひ、他のブロックチェーンプロトコルの開発者からのフィードバックを頂けると嬉しいです。気軽に質問、意見を待っています。

--

--