#01 語られにくい都市・地域

ユノ
What is the city, region and town?
4 min readJan 27, 2018

都市・地域を説明する際、わたしたちはどのように語るだろうか。

そこが「発展」しているならば、雑談レベルでも数量データを用いた本格的な解説でも説明しやすい。新しい施設が増えたとか、人口がどれくらい増えたとか、体感的にも数値的にも明確な変化が感じ取られる。

他方、「衰退」している場合も同様に説明しやすい。「発展」と真逆の条件を発見すれば済むからだ。人口が減っていることを「創造的過疎」と称してPRポイントにしている徳島県神山町の例を見てもわかる通り、極端な衰退はむしろ、その地域の個性を際立たせる要素にもなりうるのだ。

「発展・衰退」の議論では発展=都心、衰退=地方という二分法が適用されやすい。それは概ね納得がいくが、では都心と地方の中間地点は、どう扱えばよいのだろうか。都心と地方は分断・孤立して存在しているのではなく、その間にも地域は連続した面として続いている。都心と地方を具体的に「都心からの距離」で区切るのは難しい。都心と地方の間にある地域には、都心・地方ほど極端な発展・衰退の様相を見せていない場所も存在しているのではなかろうか。だが極端でないからこそ、そうした地域を説明するのは難しい。

また、その都市・地域が自分の住まいがある場所ならば、「住みやすいかどうか」も重要な基準となるだろう。東洋経済新報社やSUMOなどが「住みやすさランキング」を発表しているのも、「住みやすさ」が人が都市・地域を語る上で重要な基準になっていることを感じさせる。

しかし、「住みやすさ」を言語化するのはなかなか難しい。「住みやすさランキング」では人口あたりの医療施設の数等、数値でわかる情報からランク付けをしているらしいが、必ずしも数が多ければそのサービスの質が上がるというわけではない。また、数値情報によるランク付けは、どうしても上位に来る都市・地域が偏りがちだ。

例えば、自分が住んでいる都市・地域が「住みやすさランキング」の何位に入っているか、知っている人がどれくらいいるのだろうか。無論、ランキングを見て住まいを決めた人は知っているはずだが、少なくとも私は、自分が住む地域が上位に入っているのを見たことがない。

そもそも、個人的には市区単位で住みやすさを示していることにも違和感を感じている。確かに、数量データでランク付けするのであれば、行政データが豊富にある市区町村毎で区切るのがわかりやすい。しかし、ひとつの市区町村の中でも住みやすいエリアと住みにくいエリアは混在している。同じ市区町村内でも場所によって地価が異なるのも、それを示しているし、単に家の近くを散歩していても、少し歩くだけで住宅街の雰囲気が変わるというのはよくあることだ。

こうした考えから、「発展/衰退」「都心/地方」あるいは既存の「住みやすさ/住みにくさ」の軸では特徴が見出せない地域が存在するという確信をもった。

現在の評価軸では個性・特徴を見出せない地域を、ニュートラルな意味合いを持たせて「中間地域」と仮称しておく。私は、こうした「中間地域」に特徴を与えるための新たな視点を見出したいと考え、卒業研究の枠を利用して調査を行うことにした。

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ユノ
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文章を書いたり、写真を撮ったりすることが好きです。