グループメンバーで協働関係を築くための活動

吉田千鶴
WingArc1st Inc.
Published in
Dec 22, 2022

これはウイングアーク Agile and DevOps Stories のAdvent Calendar 2020、第16弾(2022年12月22日)の投稿です。

皆さまこんにちは、ウイングアーク1stのソフトウェアプロセス&品質改善部 BDQIグループに所属する吉田千鶴(よし)です。

去年のアドベントカレンダーでは”イロカイ(プロジェクトに依存せず、品質について興味があるメンバー同士が話し合える場)”についてご紹介しました。その中で「私の所属するチームでは、QAメンバーそれぞれが異なるプロジェクトを担当しており…」と触れましたが、その数か月後。チーム制がなくなり、異なる製品の担当チーム同士が合体し、一つのグループとして生まれ変わりました。

そのグループのマネージャーとなった当初は、この融合した2つのチームをどうやってまとめていけばいいのか悩んでいました。しかし結局のところ一人の力ではなく皆の力で、メンバー自身の力で協働関係を築き上げ、一つのグループとしての活動が、現在は行えつつあるように思います。
今回はこの約1年の活動を通して、合体したチームのメンバー同士がどのような交流を行い、関係性を高めてきたのか、紹介させて頂きます。

まだまだ活動途中ではありますが、チームやグループの関わり方について悩まれている方へ、一つの参考になれば幸いです。

※ 外部コーチとしてご協力くださっているAkiさんとぐっさん、支援頂いた社内の方々、共通の目的達成を目指して今現在も努力してくれているメンバー全員に、心からの感謝を込めて。

1.最初に勇気を出す…ということ

2022年4月。実はこの時点では、私は複数のチームが合体して一つのグループになったことに対しての説明会を、私自身が開催する必要があるとは、考えておりませんでした。
なぜなら上長からも説明がありましたし、グループの今年度の目標自体は示しており、かつチームという垣根がなくなったものの大きな枠では変わらない、と考えていたためです。
しかし、それが”思い込み”であったことに1on1やリーダーズ・アクライメーションというワークを通じて気づきました。

リーダーズ・アクライメーションは、私は”メンバーの願いを知る”ためのワークだと捉えています。
方法は、グループのリーダーはあえて席をはずし、ファシリテーターとメンバーだけが集まり、グループの現状やリーダーに対しての”Mottoポイント/Goodポイント”を語り合う。リーダーは後日、ファシリテーターを通じて、匿名のフィードバックを受ける、という内容です。

プロセス改善に日々取り組んでおられるあらかーさんから、このワークをやってみませんか?と打診があった時。
正直に言えば ”やりたくないな…” と、思いました。
フィードバックされることへの怖さもありましたし、またフラットな関係性を目指したかったため”リーダーに対してモノ申す”のようなワークは逆効果になるのでは、という悩ましさも感じたためです。
しかし信頼できるファシリテーター(あらかーさん・Tさん)がいることや、メンバーのことを信じて「やってみます」と答えました。

(参考資料)ファシリテーターの方が作ってくださったフィードバックのポイント

結論から言えば、やってみて良かったです。
Mottoポイントに対しては、リーダーに対して改善してほしいというメンバーからの声であるため、吟味しつつも意識する必要があると考えました。またGoodポイントは今後も継続してほしいもの、として受け止めました。なかには「チームが融合したけれど今後どうなるの?」といった声もあり、私自身の言葉でグループとして目指したい方向性を示す必要性があると再認識し、皆で一緒に考えてこのグループを育てていきたい、という思いも改めて感じました。そのため最初のスタートとして、やって良かったように思えます。

2.目指す方向性を示し、次の活動につなげる

5月頃、受けたフィードバックに対するアンサーとして「グループ内キックオフ」を行いました。グループが融合した目的である”担当プロジェクトを超えた連携をし、必要時に助け合える関係性となる”という話や、目指したい方向性、みんなで一緒に考えていきたいこと等を伝えました。

定例などを通じて少しづつ語ってはいたつもりでしたが、資料を作り、発表することで、きちんと整理された情報となったため、その後の話し合いにも繋がりました。

またキックオフ実施後、振り返りも行いました。
目指したい方向性や関係性について各自が” 納得したのか、理解できたのか、期待を持ったのか。モヤモヤしていることはないか”など、変則的ですがFun/Done/Learnのアクティビティをベースに話し合い、キックオフの内容を各自がどのように受け止めたのか、認識を合わせました。

認識を合わせた結果、ここから次のアクションとして、それぞれのメンバーから”グループ活動してやりたいこと”の意見も上がってきました。たとえば「新しくグループでのグランドルールを作る」、「それぞれのプロジェクトのプロセスを6月までに可視化し、グループ内で共有する」などです。その後、次のアクションで上がったものは週1回の定例やグループ内ワークで、各メンバーが動いて解消していく流れが出来てきました。

3.コーチの力を借りるのも一つの手

2022年6月。上記の通り認識を合わせて、次のアクションを決める流れ自体はできつつありました。しかし普段プロジェクトで関わっているメンバー同士でタッグを組んだりと、あまり話せていないメンバー同士の関わり合いは、まだ薄い状態でもありました。
私自身は2つの旧チームのメンバー両方との関わり合いを始めていました。そのため私とそれぞれのメンバーとのつながりは出来かけていましたが、旧チームメンバー同士の連携はまだ弱い状態、とも言えるかもしれません。

Jumpei Itoさんに「横連携し、必要時に助け合える関係性となるためにも、もう少しメンバー双方向の連携を深めていきたい」と相談した際に「システムコーチングを受けてみては?」というお話が出ました。

システムコーチング※とは、複数の人の関係性に対して行うアプローチとして開発された、組織と関係性のためのシステムに着目したコーチングのことです。※ Organization & Relationship Systems Coaching® 登録商標
従来のコーチングは1対1で行うのに対し、共通の目的を持ったグループメンバー全員に対して「理論教育・エクササイズ・対話」を通じてまとめてコーチングを行い、別々の個性や強みを持った個々人が、一度にグループとして成長していくための支援をしてくれる内容、とのことでした。

アジャイルやエグゼクティブコーチ、システムコーチなどでご活躍されているAkiさんから直接お話をお伺いして「これだ!」と思いました。
なぜなら各メンバーがそれぞれ担当するプロダクトに集中している現状、プロジェクトに直結しない対話が不足しているように思えたこと。またメンバー自身が自分たちで「自覚的」かつ「意図的」に関係を創り上げていくことが望ましい、と考えたためです。

Akiさんとぐっさんのお二方にご協力いただき、グループ全員で計4回の研修を受けることにしました。またシステムコーチングを受けるにあたり、受けることにした背景の説明や、目的をメンバーに伝えました。

4.システムコーチングを皆で受けてみた

システムコーチングの研修は、これまで計3回受けました。1回3時間、約1.5か月に1回ほどのペースです。内容としては座学のみのセミナーよりも、自分たちで考え、対話して進行していくグループワークが多いように思います。
コーチであるAkiさんとぐっさんが研修を通じてグループメンバーの状態を観察し、内容を決めてくれますが、参加者である我々は受身ではなく、自ら参加し、しっかりと向き合い、対話していく態度が求められます。
ここではシステムコーチングの中であったワークの一部と、また1–3回を通してどのような変化があったのかを、ご紹介したいと思います。

◆ システムの1次、2次、エッジ

1.このシステムの今はどんな状態なのか
2.このシステムの未来はどんな状態なのか
3. 1から2に向かうためにどんなエッジ(心理的ハードル)があるのか
上記についてグループで対話し、現状を明らかにするためのワークです。
メンバー間で、お互いが助け合えるグループに現在なっているのか/向かっているのか/将来どうなりたいのか/そのための障害があるのか、などを話し合い、またエッジを解消するための具体的なアクションを実行することを考えます。ここで考えたアクションを宿題として、次回の研修までに取り組み、気づいたことを発表したりしました。
私たちグループでは「助け合いたいが、メンバーのことが知らない」ことが一つの課題である、という意見がでました。そのため「得意分野を共有しあってスキルマップを作る」、「お互いの特性を知って、相互(自己認識も)認識を持つ」などのアクションが出ため、システムコーチングの後にグループ内でワークを別途行い、Wevoxで受けたMBTI診断結果などを共有しあったりもしました。

◆ DTA(Designed Team Alliance)

DTA(日本語:意図的な協働関係作り)では、この研修を通して、また望む関係性を構築するために「 1.どんな雰囲気、文化にしたいですか? 」「2. このシステムが難しい状態となったとき、どう関わりたいですか? 」ということを考えていきます。メンバーと”一つのグループとして助け合える関係性となること”を目指す場合1,2についてどうしたいか、という視点から対話し、様々な意見が飛び交いました。

1回目では「発言・気持ちを受け入れる(受け入れてほしい)」といったワードがよく出ました。2つの異なるチームメンバー間で、横のつながりが少ない状態であるため相手のことをあまり知らない。接点が少ないメンバーの性格が分からないから発言が受け入れられるのか不安、という思いが、一部のメンバーから出ていました。

1回目と2回目の間で、こちらも話し合った結果をもとに具体的なアクションを実行しました。メンバー間の不安も薄れたためか、2回目は普段静かなメンバーも色々とは発言してくれるようになりました。
面白かったのは1回目と異なり「受け入れる」というワードがなくなったこと。逆に「発言を促す/話を聞いてみる/気持ちを伝える」と、双方向に努力をしよう、という方向性が出てきました。自分たちで関係性を作っていきたい、という思いが多少なりとも出てきたように思えます。

◆ メタスキルのワーク

1回目と2回目はZoomで行いましたが、3回目はメンバーで本社に集まってグループワークを行いました。グループワークの中でも、多数の笑顔が飛び交った”メタスキル”のワークを紹介します。
メタスキルのワークはシステムコーチングではなく、プロセスワークの知恵であり、出典元はアーノルド・ミンデル博士のプロセスワークです。メタスキルはハードスキルやソフトスキルとは異なり、スキルを発揮するためのスキルのことを指します。問題発見力やチームワーク力など、訓練や実践の中で身につくものです。

我々で選択した”グループ助け合い”という点をテーマに7種類のメタスキルを上げて「助け合うことに対して、尊重するとはどういうことだろうか」と、考え、メンバーと話し合い、身体(ジェスチャー)で表現をしていきます。このワークを私自身のイメージで表すのであれば、メタスキルがどういう意味を持っているかをグループメンバー皆で考え、納得感をもって行動しよう、という内容だと思いました。
一緒にジェスチャーを作り上げる過程が楽しかったのですが、それだけでなく、今後は”今回のプロジェクトではこのメタスキルが大切”など呼びかけることもできそうだと思いました。

◆ システムコーチングで起こった変化

プロジェクトや業務とは別の視点から対話を行っていく中で、これまで所属していたチーム文化の違いから、ちょっとした言葉の定義の捉え方の差であったり、認識のすれ違いが起きていたことに気づきました。

昨年までも共通点探しゲームなど、チームリーダーが主体となってメンバー間の関係性を高める活動自体は行ってきたりもしていたのですが、外部のコーチの協力や第三者の力を借りることで、リーダーもメンバーの一員となってフラットに考えあうことが出来たことは、大きいように思えます。また一つの”助け合う”というテーマをどんどん深堀して進めていくなどの手法は考えたことがなかったため、その点でも参考になりました。

さらに業務の中でも、これまでやり取りをしていないメンバー間で新たに関わる機会も増えてくるようになった結果、メンバーの意見も受信→発信→双方向などにどんどんアップデートされていったことも、改めての気づきがありました。

5.最後に

唐突ですが…私は、ハイキューなどチームスポーツの漫画が好きです。
試合中にミスがあってもみんなで助け合い、1つのボールを繋いで、繋いで1点を取る。自分では達成できないことは他の選手の協力を得て、相互に協力し合う。仲間を大切にしあって士気を高め、勝利という一つの目標に向かって全員で取り組むことで、最高のパフォーマンスを生み出しているのだと思います。

BDQIグループメンバーは、担当プロジェクトは異なれど、品質改善という、同じ目標や目的達成のために集まった人員です。前提として個人の実力は必要ですし、スキルを磨くことも重要です。しかしそれだけでなく、共通の目的意識を持ったメンバー同士が連携し、時には役割を超えて動くことで “ 個人では無しえない規模の仕事で成果を出す” ことや、強いグループができるようになるとも思います。自分では達成できないことは他の仲間に相談したり、必要かつ可能なら相互に協力し合うことで、一体感が生まれ、成長にもつながるように思えます。

これからも最良のパフォーマンスが発揮できるグループを目指して、頑張っていきたいと思います。

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