デリゲーションポーカーを大掃除に使ってみた
こちらはウイングアーク Agile and DevOps Stories のAdvent Calendar 2021、2021年12月20日の投稿です。
ウィングアーク1stの ソフトウェアプロセス&品質改善部の竹原と申します。
デリゲーションポーカーについて
今年ももうすぐ終わり、そろそろ来年度のことについても考える時期になってきました。
年度が替わるとともに、部署移動などの組織変更がある企業も多いのではないでしょうか。
新しい組織で、上司や部下が変わった際に、 「上司にどこまで聞けばいいんだろう?」と思ったり、逆に部下に「もうちょっと自分で考えてやってよ!」って思ったことはないでしょうか?
そんなときに、おすすめなのがデリゲーションポーカーです。
デリゲーションポーカーとは、7枚のカードを利用して、各メンバーがどの作業に対しどのような権限を持つのか、という認識をすり合わせ、権限委譲を行うワークです。
利用するカードは、以下の7種類です。
1指示する(管理者が意思決定する)
2説得する(メンバーを説得し、管理者が意思決定する)
3相談する(メンバーと管理者が相談し、管理者が意思決定する)
4合意する(メンバーと管理者で一緒に意思決定する)
5助言する(管理者がアドバイスをし、メンバーが意思決定する)
6尋ねる (メンバーが意思決定し、管理者にフィードバックをもらう)
7任せる (メンバーが意思決定する)
やり方は以下のような流れになります。
- ポストイットなどを利用して委譲したい課題を洗い出します。
- 上記で洗い出した課題に対して、各自でどのカードを出すか決めてから、いっせーのせで同時にカードを出します。
- カードの数字がずれているという事は、お互いの期待値がずれているという事です。どのような事を期待してカードを出しているのかお互いに話し合いを行います。
- お互いが納得できたら、ポストイットに決定した数字を記載して記録を残します。
- 2~4を繰り返します。
弊社のyoutubeチャンネル「GROW TV」でもデリゲーションポーカーを実践している動画がありますので、良ければ見てみてください。
社内での利用例
私が初めてデリゲーションポーカーを実施したのは、数年前の組織変更後でした。
それまでと扱う製品は変わらず、作業内容も同じでしたが、 上司が変わりました。
最初のうちは、忙しい上司に細かく報告してみたり、この報告いらなかったかなぁ…などと試行錯誤しながら仕事をしていました。
そんな状態がしばらく続いた後、上司からデリゲーションポーカーをしてみようと提案されたのです。
実際にデリゲーションポーカーを通して認識合わせをしてみると、思っていたよりも、部下たちで考えて進めることを上司は望んでいるとわかりました。
また、別の事例もあります。
弊社ではマニュアルをベースとしたユーザビリティの検証を実施しているのですが、ユーザビリティテストの担当者と製品の検証担当者の間で、どこまでおまかせしたいのか認識があっておらず、作業が滞ってしまったことがありました。
その時にも、デリゲーションポーカーを利用することで、お互いがどこまで権限を持つのかの認識合わせができ、次からの作業は問題なく進みました。
プライベートでも使えます
そんなデリゲーションポーカーですが、実は、応用すれば、プライベートでも使えるということがわかりました。
私の家庭で年末の大掃除の担当を決める際に、実際に利用してみたので、その時のことを少し話したいと思います。年末で忙しい時の大掃除は喧嘩になってしまう事もあると思いますので参考になればと思います。
大掃除でイライラしてた
11月のとある休日、私は自宅の大掃除を始めていました。
ところが、ふと見ると、妻が寝ている。
「12月は忙しいから、早めに大掃除しよう」って伝えたのに…と、1人でイライラしていました。
翌日、会社でそのことを愚痴っていると、「それって認識ちゃんとあってるの?」とフィードバックをもらいました。
目からうろこが落ちました。 自分は、「大掃除を早めにしたい」ということだけは伝えていましたが、分担やスケジュールなどは何も伝えておらず、自分が勝手に大掃除を始めて、勝手にイライラしているだけだったのです。
そこで、認識合わせのために、デリゲーションポーカーをやってみようと思い立ちました。
デリゲーションポーカーをやってみた
まずは、以下のようにデリゲーションポーカーをやる目的について話しました。
・掃除する場所など、分担が明確になっていない。
・掃除する予定がわからないと、イライラしてしまう。
・それを解消するために、デリゲーションポーカーをやりたい。
・デリゲーションポーカーは権限の委譲(上から下に渡す)だが、今回は分担を明確にする対等な関係での移譲(対等な関係受け渡し)である。
私の説明に対して、妻の反応は以下のような感じでした。
・何を怒っているのかわからなかった。
・デリゲーションポーカーが何かはやってみないとわからないが、解決しようとしてるのはわかったのでやってみよう。
ということで、妻の合意のもと、実際にやってみることにしました。
最初に、大掃除の内容をポストイットで書き出しました。
話しながら書くと、お互いが引きずられてしまうので、まずは各自で書き出しをします。
次に、大掃除をする場所ひとつひとつに対して、どこまで何をするのか、を説明していきます。
ここで認識のずれがあれば明確にします。
例えば、台所の掃除に冷蔵庫の中の掃除は含まれるのか?シンクやコンロの掃除は含まれるのか?などです。
その後、デリゲーションポーカーのカードをいっせいのーせで同時に出します。
今回は、7が私が完全にやる。1が妻が完全にやる。中間は一緒にやる。の3種類としました。
出したカードの数字がずれている場合は、何故この数字を出したのかをお互いに説明して、納得するまで話し合い、移譲(対等な関係受け渡し)度合を決めていきました。
カンバンにしてみた
こうして、大掃除の分担について決めることができました。
せっかくポストイットに書きだしたので、進捗状況がわかるように、そのままカンバンとして利用することにしました。
上の方が私のタスク、下の方が妻のタスクです。
このような形にすることで、協力して実施する掃除がわかるようになり、年内で残っている週末の計画も立てられるようになりました。
ちなみに、直接壁にポストイットを貼りたくなかったので、下記のシートを使いました。静電気で貼り付けられますし、ホワイトボード用のマーカーの利用もできますので便利です。
結果
この記事を書いている段階では、まだ大掃除は終わっていませんが、認識を合わせることができたので、イライラする事なく掃除を進められています。
これを機に、一時期に話題になった「見えない家事」(明確な名前はないが発生している細かい家事)についても、見える化したうえで、分担を決めることができるのではないかと思っています。
また、カンバンにすることで進捗も見えるようになり、順調に進んでるから安心できますし、進んでいないときは、分担を変えるか?などの相談もできるようになりました。
大掃除に限らず、仕事やプライベートでの揉め事の大半は、お互いの認識があっていないことが根本的な原因であることが多いように思います。
この記事を読んだ方の中で、認識の齟齬でお困りの方は、デリゲーションポーカーを一度試してみるとよいのではないかと思います。