権限委譲は成長への第一歩

個から自己組織への道

だてまき
WingArc1st Inc.
Dec 21, 2020

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これはウイングアーク Agile and DevOps Stories のAdvent Calendar 2020、第2弾(2020年12月21日)の投稿です。

はじめまして。ウイングアーク ソフトウェアプロセス&品質改善部MBQI Gの山﨑です。私事ですが、先日2020年12月9日朝7時に第2子が産まれました。男の子です。母子共に無事で一安心しています。

今は健康第一に、元気で誠実に成長してくれることを願うだけです。父親としては、子どもがのびのびと安全に成長できる環境を用意してあげれるよう努め、自分も一緒に成長していければと思っています。

Photo by Alyssa Stevenson on Unsplash

プロローグ

先日友人と久しぶりにリモートで飲み会を行いました。友人は以前私が居た会社の部下で、最近自身の成長のために新しい会社に転職したそうです。

しかし前向きな転職とは裏腹に、新しい職場がとても辛いとの話でした。友人は業界の知識もあり飲み込みも早く、基本的な業務は十分こなせる人です。転職先は事業拡大で人手が足りなくなったため中途採用されました。

しかし上司が仕事の全容を教えてくれず、他部署からの問い合わせがあった場合も、わからないことが多いため有識者である上司へ取り次ぐ対応を取るしか無いそうです。この状態は数ヶ月経っても変わらず、上司からの簡単な作業指示のみで、業務の流れやどんな業務があるのか教えてもらえず、毎日作業の指示待ち状態。

友人は決して意地悪をされているわけではなく、単純に見た目にも忙しさがわかるような状態で「なにか手伝えることはありますか?」と聞いても「教えたいけど忙しくて、今は指示された業務をこなして報告くれれば助かる」とのこと。

周りの同僚はこの状況を「指示があるまで待っていればいいので楽だ」と言うのです。

権限委譲は自己組織化への一歩

この話を聞いて私は「とてももったいない状況」だと思いました。
上司(管理者)は仕事量が減らないですし、友人(部下)の成長も阻害しています。このような企業・組織は世間一般でも結構あると思います。

「仕事の全容を教えて友人(部下)にも任せる」ことで友人(部下)は

  • やる気がでて経験を積むことで成長を感じられ、より多くの仕事ができるようになります。

上司(管理者)は

  • 「より重要な仕事に集中」できるようになります。

「権限委譲」を簡単に説明すると

一部の役割を部下に任せ、自立性を促し支援をしていくこと

です。権限委譲は管理者にとって必須技術です。企業としても権限委譲を行っていくことで以下のような効果がでます。

  • 企業全体の士気が上がる
  • 多くのスキルを持った従業員が増える
  • 全体のこなせる仕事量が上がる etc..

権限委譲により、従業員全員がオーナーシップを持ち、自発的に意思決定や問題解決を行える組織となっていきます。

権限委譲を妨げる「理由」と「解決への考え方」とは

権限委譲をするハードルとしてよく耳にすること。友人の職場でも話に出ていましたが、その多くは以下です。

  • 「自分でやったほうが上手くできる(早くて確実)」
  • 「権限委譲することで自分の仕事がとられてしまう」
  • 「任せる人材(適任)がいない」

この考えを持つ上司(管理者)は意外と多いと思います。

1つ目:「自分でやったほうが上手くできる(早くて確実)」

これはそのとおりだと思いますが、これを超えられるかどうかが今後良い組織になれるかの境目だと思います。「細かく自分が思う様に管理がしたい(マイクロ・マネジメント)」という背景もあると思います。

権限委譲は「すべてを任せる(手放す)」わけではありません。会社の役割としてやらなければならない業務はそのまま上司がやるべきです。(ハンコが必要なケースなど)それ以外の役割については、部下と話し合い「責任の範囲」に段階を設けて、徐々に委譲していく方法があります。(後述の「権限委譲の方法について」を参照)

2つ目:「権限委譲することで自分の仕事がとられてしまう」

人は自分の範囲を決めて守ろうとします。好きな業務だとよりそうするでしょう。しかし個人としては優れているが、組織の成長には繋がりません。本来管理者は「権限委譲を行い、スキルを持った人をどれだけ育てたのか」が評価されるべきです

3つ目:「任せる人材(適任)がいない」

初めは権限委譲をしてみても思うような結果が出ないでしょう。
そこで「やっぱり自分が厳しく管理しなきゃだめか…」と考えるのではなく「6割できたら最初はよし」と考えたほうが気が楽です。また部下も安心して新しい仕事に取り組めると思います。成功したならば成長を認めてあげましょう。

権限委譲をする際には「失敗しても責めないこと」が大切です。「失敗しても責任を私が持つので、思ったことをやってみよう!」と言えるようになりましょう。

また、権限委譲は特定の人にだけ行ってしまうと個の引き継ぎとなります。できる限り多数の適任者に対してクロストレーニングを行うのが良いでしょう。

もし権限委譲をしなかったら?

部下は

  • この先もずっと上司の指示を待ち、主体的な考えや行動を取らない人材になるでしょう。楽かもしれませんが、組織の成長に繋がる成長を自ら考え行動しなければ評価されないことは理解しましょう。

上司は

  • コントロールできる範囲には限りがありますので、思っている成果が出せず限界を感じることになるでしょう。

上に立つ者がその仕事とそれに伴う権限をうまく委譲し、それを受けた人がさらに下に委譲する。その連鎖がつながって広がると、個人では到底出せない力を組織は発揮します。

企業や組織には「現状維持」はありません。「成長」か「衰退」しか無いです。個のリーダーシップだけで支えている組織は、一見維持しているようですが衰退していると考えてください。

権限委譲は簡単ではないと思いますが、できることで自発的な組織となり、組織全体が成長するはずです。

権限委譲の方法について

「成長につながる権限委譲ができる役割を準備しておくこと」や、「適任者に将来を見据えて自分の考えを共有していくこと」などは前提として重要なことです。

その上で権限委譲をする一つの手法としてManagement3.0では「デリゲーションポーカー」という手法を用いて可視化します。やり方については是非GROW TVにて動画を配信していますので御覧ください。

今回の「マイクロ・マネジメント上司」のケースとは異なり「丸投げ上司」の場合でも「責任の範囲」を組織として明確に決めていくこともできます。

「責任の範囲」は上司(または部下)が一方的に決めるものでは有りません。話し合うことで組織内の的確なバランスを見つけることが重要です。

やってみるとお互いの認識のズレが見えて方向性を決めることに効果があると思います。組織として活動する場合には一度活用してみてください。

業務でデリゲーションポーカーをやった感想

私も現業務を上司である井川さんとデリゲーションポーカーを使ってボードに可視化してみました。

可視化した「背景」と「目的」は

  • 現行プロダクトにおいて、井川さんと私の2名体制でマネージメントを行っているため、関係者に迷わせてしまう可能性がある。
  • 井川さんと私の役割と関係性をボードで可視化することで関係者とのスムーズなコミュニケーションを図れるようにすること。

やってみた感想ですが基本的に両名共にレベル間に大きな認識のズレはなかったです。が、やはり細かなレベルの違いは発生しており、お互いに出したレベルについて「どのように考えていてそのレベルを出したのか」を話し合ったことでお互いの考えが整理が出来たと感じましたし、私への成長と期待も感じられました。当初の目的とは異なった成果も得られてとても有意義なものでした。

自分たちの組織はコミュニケーションを頻繁にとっているから大丈夫と感じていても、意外とずれていることってありますので、ぜひやってみてください。

最後に

これまで記事を書く機会はあまりなかったのですが、自分の成長のためにAdvent Calendar 2020に参加・投稿させていただきました。

大変長い内容になってしまいましたが、本投稿が少しでも「組織活動」のお役に立てれば嬉しいです。

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