第三者検証と、社内QA検証の違いをフラットな目線で考察してみた

テストベンダー出身者シリーズ Vol.1

Hiroyuki.Ito
WingArc1st Inc.
Dec 10, 2021

--

こちらはウイングアーク Agile and DevOps Stories のAdvent Calendar 2021、2021年12月8日の投稿です。

はじめまして、こんにちは。
ウイングアーク1stに今秋入社した伊藤寛之と申します。 私はdejirenというプロダクトで検証を担当しています。 dejirenとはバーチャルアシスタント作成し、チャットやクラウドサービスに連携して業務を手助けするプロダクトです。 さまざまな使い方ができる魅力的なプロダクトなので気になった方はぜひアクセスしてみてください!

さて、私の初回の記事は第三者検証と社内QA検証の違いについてお話しさせていただきたいと思います。
私はもともと第三者検証の会社出身で、ベンダーという立場から検証をしたいという思いからウイングアーク1stへ転職しました。
なぜそう思ったのか、またベンダーという立場から検証する意味とは何か、書いていきたいと思います。

第三者検証とは何か

製品に対して第三者的な立場から客観的に検証を行い、品質状況を報告するお仕事です。
第三者とは言いますが、製品を使用するエンドユーザーの立場から見た検証という意味合いが強いです。
製品の開発者としてではなく製品を使用するエンドユーザーの視点で、先入観なく客観的な見地から欠陥を発見することを目的として活動するものです。
その他、使用感(ユーザビリティ)や魅力的品質を考えた要望を出すこともあります。
この辺りが第三者検証会社が標榜するところだと思います。

第三者検証に求められていることとは何か?

それは不具合の検出、品質状況の客観的なデータとしての成果物です。
成果物は第三者検証の手を離れてオーナーにゆだねられ、不具合対応の方針・リリース可否が決定されます。
(そのほか求められるものは専門性から来る知見であったり、不具合修正後の対応もありますが省略)

ここだけ聞くと「ん?それは別に社内のQA検証チームと同じでは?」 と思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かにやっていることの一部は同じです。 では何が決定的に違うのか。
それは「何のために検証を行うのか」という目的が異なると考えています。
第三者検証の目的は
「不具合を検出。そのデータをオーナーに提示すること。 判断材料を提供すること」です。
社内QA検証、社内の人間として検証を行うことの目的は
「より良い製品をユーザーに提供する」という基本的なマインドです。
このように立場が違うと目的も違ってくると思います。

立場や目的が違うと何か変わるの?

出来ることが変わってきます。
私が社内QA検証を目指した理由はここにあります。
例えば、ユーザーからすると不満に思うであろう挙動だが開発者は対応にコストをかけたくない、という事象があります。
不具合報告チケットで言葉を尽くして重大性を訴えることはできますが、最終的にはやはり判断をオーナーに委ねることになります。
それに対して代案を提示したり、改善案を積極的に渡していく、仕様を一緒に決めていくといった踏み込んだお話がしやすいというのが社内QA検証チームです。
もっとこうした方がいいんじゃないか、こういう動きをした方がエンドユーザーにベネフィットがあるんじゃないか、といった提案をしていくことができるのが社内QA検証チームの強みだと思っています。
特に仕様を決めていくという、上流に関わることは第三者検証では難しいと思われます。
限界があって踏み込めないという感じで一方的に書いてしまっていますが、もちろんこれは第三者検証としてオーナーから望まれる形であるので別に悪いことではありません。
もちろんオーナーから望まれればオンサイトで上流に入っていくような検証の形や、開発プロセスの改善の形を取ることもできる第三者検証会社もあるため、あくまでわかりやすい一例と思ってください。

私はこの壁を越えていきたいという思いがあった

photo by https://pixabay.com/

この壁を初めて越えたいと思ったのは、前職(第三者検証)のとある現場でゲームの開発に携わっていた時で、そこではサービスをより良いものにするためなら立場の垣根を超えて何でも意見を出すことを求められる場でした。
第三者検証と言えば、オンサイトで参加している場合でも「外部の人」という雰囲気であることが多いので少し珍しいことです。
そこで一体何をやっていたかと言うと、上流に食い込んで要件定義、仕様の決定にかんでいくということをしていました。
正直これは私の(第三者検証の)担当範囲ではないなと思うところもたくさんありました。笑
上流に食い込むのはいち検証者としては願ったり叶ったりなことではあるのですが、通常は契約の範囲外であったり、役割として望まれていなかったり、いろいろと障害があることが多いと思います。
私の場合もやはり外部の者として制限があったので対応に悩むことも多く、じゃあいっそ、ということで目的を「より良い製品をユーザーに提供する」に据えて踏み込んでいきたい思いがあり、私はベンダー側に入ることを目指しました。

第三者検証の良い点

前述のものだけでは第三者検証はマイナス面が目立ってしまうので、第三者検証としての良い点も挙げていきたいと思います。
まず第三者検証という存在の良いところは開発とのパワーバランスなど開発体制に圧倒されず、結果そのものを提示できるということだと思います。
プロダクトやプロセスに対する品質を余計な情報に左右されず客観的なデータとして伝えることは、一般のお客様からのフィードバックに一番近いのですからこれはかなり大事なことです。

次に第三者検証として働くことの良いことは1社に縛られず幅広い製品・サービスに触れることができ、ノウハウの蓄積ができること、専門であるだけあって高い検証技術を持った方が身近にいるために学びが多いこと、などです。 個人的には単純に幅広い製品に関われること自体が楽しいということもあります。笑

以上が私から見た第三者検証と社内QA検証との違いになります。
検証という職種でも立場によってできることは違っていて、仕事を達成する目的やマインドは異なるというお話でした。

--

--