自社向けのOSS入門資料に抜けていた視点に気が付いた話
これはAgile and DevOps Transformation Stories in Wingarc1st Advent Calendar 2023の2023/12/19の記事です。
はじめに
ウイングアーク1st SPQI部にてQA担当しています高橋です。SVFやinvoiceAgentといった帳票製品の品質保証業務と並行して、社内の全製品を横断したOSSの管理業務も行っています。
今回はそのOSS業務に関連して、新しくトライしてみたことを通じて気づいたことを書かせていただきます。
以下の写真は今年のSPQI部箱根合宿(めちゃくちゃ楽しかった!)の時の1枚です。合宿の様子やその舞台裏について以下のブログもご覧ください。
OSS勉強会
毎年、新入社員や中途入社員向けの「OSS初心者向け勉強会」の講師を担当しています。OSSって何?から始まり、OSSを自社製品に組み込む上でのルール(OSSガイドライン)を理解してもらうことを目的とした内容です。
今年もそろそろ実施時期が近づいてきたころ、学生向けのオンラインセミナーでOSS入門の講師をしてみないか?という社内からのオファーがありました。
過去に経験が無いのでちょっと不安もありましたが、社内向けの勉強会資料のブラッシュアップもできるかもと思いトライすることにしました。
誰でも参加OK
まず、学生向けのセミナーということで、できるだけ多くの人に受け入れてもらえるように、OSSについての知識が無くても興味がわくような内容にしようと決めました。
つまり、”完全な初心者向けのOSS入門”的な位置づけにしようということです。セミナーのタイトルは以下のようにしました。
「ソフトウェア開発にかかせない、OSS(オープンソースソフトウェア)入門」
また、セミナーの開催告知の中で対象者は「前提知識無しでOK」とすることで、できるだけ参加のハードルを下げることを意識しました。
社内OSS管理業務
ところで、私は社内において以下のようなOSS管理業務を担当しております。
1.新人、中途入社員向けのOSS勉強会の講師
2.社内の全部門向けにOSS運用に関する社内ガイドラインの周知
3.OSS管理ツール「FOSSID」の操作手順書作成やパッチ適用のメンテナンス
4.新たなOSS脆弱性発見時、開発担当部署への周知と対応検討依頼
5.自社製品へのOSS利用に関する社内からの問い合わせ対応
特に5番のOSSに関する問い合わせ対応は、様々な種類が存在するOSSライセンス文の解釈に関する見解や社内のOSSガイドラインに照らし合わせた場合の利用可否に対する正確な判断が求められるところです。
不定期に発生する問い合わせに対し、基本的には社内での対応を行っていますが、解釈に意見が分かれる場合には社外のOSS専門コンサルタントからの第三者視点の意見も考慮したうえで最終判断を行う場合もあります。
聞き手の立場に立って見直そう
当初、社内向けの勉強会資料をほぼそのまま流用できるかなと甘く考えていたのですが、はじめてOSSを知る人向けとしては煩雑な内容でこのままでは理解してもらえないと思い、1から作り直すことにしました。
社内向けの教育資料は以下のような構成になっていました。
1.OSS利用の企業戦略
企業がOSSを利用するメリットの説明
2.OSS利用時のコンプライアンス問題
海外でのOSS関連訴訟の実例
3.OSSガイドラインの必要性
社内で統一されたガイドラインに基づいた運用が必要
4.OSSライセンス種別の具体例
コピーレスト、非コピーレフトの代表的なライセンスについて
5.GPL系ライセンスの伝搬範囲
GPL系ライセンスのOSS利用時のGPL化の伝搬範囲の判断基準
6.OSSセキュリティ
OSSの脆弱性リスクへの対応方針
あらためて社内向け資料を見返してみると、主に「OSSを利用するときにはライセンスに気を付けよう」という視点からスタートしており、そもそも「なぜOSSを利用するのか?」「開発者にとってOSSを利用するメリットや意義」という視点は抜けていることに気が付きました。
何となく、なぜOSSを使うかなんて当たり前だから書くまでもないよね、と決めつけていたのですが、今回のセミナー参加者(これからソフトウェア開発に関わろうとする方)にとっては必要な情報だと思い直しました。
そこで、今回は以下のような4章構成としました。
1. OSSってなに?
2. 身近にあるOSSにはこんなものが
3. ソフトウェア開発に使用するメリットとデメリット
4. 気を付けたいOSSのライセンス基礎
1~3は社内向け資料にはなかった追加要素で4はライセンスに関する最低限の注意喚起となっています。
OSSがどんなものかを知ってもらい、ソフトウェア開発に利用するとこんなに便利なんだよ!ということを伝えたい内容にしました。
資料を作成する上でのこだわりポイントは以下の2つです。
- 枝葉末節はバッサリ削って、重要なポイントのみに絞る
- 専門用語はできるだけ使わずに、分かりやすい表現にする
OSSの前提知識がない聞き手にとっても理解しやすい内容とするため、簡潔に分かりやすくという点を重視しました。
セミナー本番
セミナー当日、参加ハードルを下げたおかげか、50名以上の参加者があり非常にうれしかったですが、同じくらい緊張もしました。
実施後のアンケートでは以下のようなプラス、マイナスさまざまな意見があり、その一つ一つがとても自分自身の今後の励みになりました。
「ストーリーベースで実践的なポイントや自分でも学べることが多かった」
「OSSを用いた開発は面白そうだと思った」
「もう少し踏み込んだ解説をしてほしかった」
「授業の密度が少し少なく感じました」
今回のセミナーで自分がこだわった分かりやすくの部分については、「わかってくれてありがとう!」と満足した半面、簡単すぎて退屈という意見もあったので、もう少し詳細な内容に踏み込んでもよかったかなと思う部分もありました。
最後に
普段の業務でも様々なドキュメントを作成することがありますが、見直すの面倒だし以前と同じフォーマットでいいか・・・という方向になりがちな私がいます。
今回、学生向けのセミナー講師という新しい体験を通じて、「いままで当たり前だった内容を見直す」ことの重要性をあらためて実感しました。また、要点を絞り一番伝えたいポイントを正確かつ簡潔に伝える、ということも心掛けて日々精進します!