TPI Next のアセスメントやってみた

Imashiku Tomohito
WingArc1st Inc.
Published in
Dec 10, 2020

これはウイングアーク Agile and DevOps Stories のAdvent Calendar 2020 第9弾(2020年12月11日)の投稿です!

今まで見たツリーで室内では一番の大きさでした by imashiku tomohito

現在、私は日本科学技術連盟が主催しているソフトウエア品質管理研究会(SQIP研究会:https://www.juse.or.jp/sqip/)に参加しています。その中のソフトウエアテストに関する研究を行うグループに所属しています。このグループでは、ソフトウエアテストに関する問題や課題について話し合い、約一年間かけて研究をおこなっています。

研究テーマとして、テストプロセス改善を簡単にできないかということを考えていて、今回は研究に至る背景やテストプロセス改善技術であるTPI Next の概要と実際にアセスメントしてみて感じた課題について書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

Pre-reseach

研究メンバーはソフトウエアの開発とテストに関わるさまざまな規模・業種のお仕事をされている方々が集まっています。まずは皆さまのお悩みをお聞きしていくところから開始し、研究テーマを模索していきました。

製造系の比較的規模の大きな会社ではソフトウエア開発から検証、出荷・リリースまでにはさまざまな標準化されたルールやプロセスが存在しています。プロセスが存在するのであれば、すべてのプロセスを消化する必要があります。消化することが目的になり、プロセスは徐々に中身のない形だけのものになりつつある傾向があるようです。

逆に製品・サービス自体がユニークであったり、スタートアップのような規模の小さな会社では、独自のルールは存在しているが、テストに関連するプロセスは存在していないに等しく、標準のプロセスを導入した方が品質のいいものを出荷・リリースできることは想定されるが、さまざまな理由から進めることができていないようです。

Software testing process

テストプロセスが形骸化している、または存在していないのであれば、テストプロセスの導入や改善を研究テーマにしてみよう!というのがはじまりでした。

更にメンバーから話を聞いてみると、テストプロセス改善技術であるTMMIやTPI Nextを導入しようとしているが、実際に導入しようとしたり改善しようとすると教科書通りに進めるのは難しく、手間や時間がかかる。または、現場のメンバーは追加の作業が必要になるので、なかなか取り組むことができない。という課題がありそうなことが見えてきました。

テストプロセス改善技術としてTMMIとTPI Nextが存在することはJSTQB Foundation Levelの資格を持っているメンバーは知っていました。TPI Nextはアセスメントすることで、自分たちの組織やチームがどんな状態なのかを把握でき、弱いポイントについて改善方法が記されています。そのため、小さくはじめられて取り組みやすいと思われるので、実際にアセスメントをやってみようということになりました。

Assessment

TPI Nextは、アセスメント用のExcelファイルのツールが用意されています。

上記のサイトからExcelファイルをダウンロードし、Excelファイルを開き質問に回答していくことでアセスメントができてしまうという優れたツールになっています。

質問内容の抜粋です

ということで、早速メンバーでアセスメントをやってみました。上記のような質問が240個ありました。質問の右側のセルに「Y」か「N」または「NA」を入れていきます。次の右のセルには結果についてのコメントを記載していきます。

やってみて分かってきたのですが、質問の内容が結構レベルが高いです。そして、抽象的であるところが多く、質問に回答しコメントを残していくとなると、自分のところはどうかなあ….と考えながらになります。そのため、結構な集中力と時間がかかることになりました。実際のアセスメント時間は組織・チームと質問に回答している個人により差はあると思いますが、おおよそ90~180分かかりました。

長くても180分でアセスメントができるならいいんじゃない!という考えかたもありますが、240個という大量の質問に答えていくのは結構大変だと思います。また実は今回、研究をする上でTPI Nextについての知識を習得するために、教科書を読みました。やはりアセスメントを実施するためには、TPI Nextについて事前の知識が必要になり、知識習得にも時間が必要です。

TPI Next

TPI Nextを利用する本来の目的は、アセスメントをすることではなくテストプロセスを改善することにあるはずです。アセスメントの結果、レイダーチャートで改善が必要なエリアが明らかになります。そのエリアに対しての改善方法について教科書をみて実施していくことになります。

レイダーチャートの例です

TPI Nextでは16のキーエリアがありそれぞれのエリア毎に4つの成熟度レベルが設定されています。アセスメントでの240個の質問は16のキーエリアに分かれていました。質問に回答した結果としてレーダーチャートができあがり、チャートをみると中心に近いエリアが窪んで見えて弱いことがわかります。この弱いエリアに対して改善方法を探っていくことになります。

このように16のキーエリアから自分たちの組織やチームで弱いエリアが分るのですが、それぞれのエリアでさらに4つの成熟度レベルがあります。自分たちの成熟度レベルが4つのうちのどれかを考えることになります。また、成熟度レベル毎に改善方法が複数存在しています。

つまり、どこから手を付けていいのか迷ってしまい、また改善方法があるが実際に実行するとなると結構大変そう。ということで、なかなかテストプロセス改善を進めるのは重いというのがわかりました。

Suggest

取り組みやすいと考えられたTPI Nextでさえも、実行するのはなかなか苦労がいるんだなあとわかりました。そこで、TPI Nextで弱いエリアを簡単に絞り込むことができて、もっと小さくはじめてTPI Nextを本格的に導入したくなるように仕向ける、または小さい改善の積み重ねがTPI Nextを実際に導入していることなる。そんな手法を考えて、提案しようということになっています。

もうすぐ1年が終わってしまいますが研究論文はまだ仕上がっていない状況です……..なんとか論文にして効果的な手法が提案できるように頑張ります!

SQIPソフトウエア品質ライブラリに論文が登録されることを目標に頑張ります!

それでは、アディオス!

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Imashiku Tomohito
WingArc1st Inc.

ウイングアーク1st株式会社でBI製品のサポートを2年経験。その後、同社BI製品のQAを1年半、帳票のクラウドサービスのQAになり約7年経過