リスクに備える 過程決定計画図

Kazuki Yasuno
workshop design project
6 min readNov 28, 2019

通勤電車の遅延、商品の品切れ、交渉の決裂など私たちの日常生活や仕事の中には突然生じる予想できないリスクが常にあります。
突然のアクシデントに対処できないでは済まされないケースも多々あります。その結果プロジェクトが失敗してしまったり、信頼を失ってしまう場合もあります。

そこで今回は、日常生活や何かの仕事を進めるうえで生じる、リスクを対処するためのツール(やり方)をご紹介します。このやり方を覚えれば、リスクを予測し、的確な対策を練ることができます。

今回は、読書猿『問題解決大全 — ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール』 より、「過程決定計画図」というツールをご紹介します。わたしたちが独自で考えた事例を参考に説明します。それではさっそく、ルールとやり方を手順に沿って説明していきます。

ツールの概要:過程決定計画図とは?

まず、過程決定計画図とはどんなものなのか説明します。これは現状から目指すゴールまでの過程を図面として作成することで、その過程の中で生じる様々なリスクを予測し、あらかじめ対応策を練ることができるというツールです。以下で詳しく説明していきます。

ルール:過程は【状態】【対策】【分岐】で作成する。

過程を作る際のルールをご説明します。過程は、□(四角)○(丸)◇(ひし形)で構成し、これらは下記のように分類されます。

□(四角) :対策→その段階で取るべき処置や行動。

○(丸) :状態→対策によって引き起こされた状況。

◇(ひし形):分岐→対策の結果として経路がYES or NOに分かれる箇所

例えば図1の例を挙げると【おつかいを頼まれた】という状況から【近くの八百屋に行く】という、スイカを買うための対策をします。そして、その対策がうまくいくか、いかないかの分岐が出来ます。今回は分岐としてスイカが売っていないかもしれないというリスクを予測したため【着いた八百屋にスイカがあるか】を設定しました。Yesと仮定し、次には対策として【スイカを購入する】を設定しました。ここでは、所持金に対してスイカの金額の方が高いというリスクを予測し【お金が足りるのか】という分岐を設定しました。そしてお金が足りた場合、【スイカをゲット】という状況に至るという過程が出来上がりました。

図1:スイカを買いに行く

手順1:スタート(現在の状態)とゴール(結果)を定めよう。

それでは、実際の手順について説明していきます。

最初に、スタートとゴールを定めます。
これから何かを計画する際は初期状態を、すでに何らかのトラブル等が発生した場合は現在の状況をスタートとします。

今回の例では、身近な事例(図2を参照)として【学校の1限目に間に合わない】という状況設定で進めていきます。事例では、1限目に間に合わない原因である【寝坊した】という状況をスタートとし、【1限目に間に合う】をゴールに設定します。

図2:スタートとゴール

手順2:1番シンプルな過程でゴールへとつなぐ。

次に、設定したスタートとゴールを一番シンプルな過程でつなげます。ここの過程というのは、ゴールにたどり着くまでに必要な手段や経るべき段階、状態のことです。

図3のように進めていきます。例えば画像2の例を挙げると【寝坊した】という状況から【ご飯を抜く】という、時間を短くするための対策をします。そして、その対策がうまくいくかいかないかの分岐が来ます。今回はその分岐としてご飯を抜くことに対してお母さんの承諾が得られないというリスクを予測し【お母さんの承諾】の有無を設定しました。Yesと仮定し、次には【電車に間に合う】という状況が訪れました。
しかし、その電車が何らかの理由で遅延し予定時刻までに到着しないというリスクを予測し【予定時刻に到着?】という分岐を設定しました。
そして予定通り到着した場合、【1限に間に合う】という状況に至るという過程が出来上がりました。

図3:シンプルな過程

手順3:分岐から別のルートを作成する。

最後に手順2で考えた分岐から別の展開を考え、それぞれに対策と状態を加えていき、新たな分岐からまた対策を練るということを繰り返します。

図3のように様々な展開を予測し、対応していきます。展開した先で設定していたゴールとは異なるもう一つのゴールが出現した場合は、そちらもゴール2として書き加えます。

図4を例に説明すると、分岐の【お母さんの承諾】が取れなかった場合に次なる対策として【走る】を設定したり、分岐の【予定時刻に到着?】がNOであった場合にバスに乗るなどの新たな対策を設定しています。そして、その対策もできなかった場合には【遅刻】という新たなゴールに行きついてしまうという図になっています。

図4:分岐からの展開

実行するうえでの注意点

このツールを使用する際に特に注意してほしい点が2点あります。

1点目は、リスクをできるだけ出すことです。このツールによって、様々なリスクを事前に予測することができます。しかし、「これはさすがに起こらないだろう」と可能性の低いリスクを削ってしまうとリスクに対応できる幅が狭まってしまいます。できるだけ多くのリスクを挙げることを念頭に進めてください。

2点目は、仮定決定計画図の作成を一度で終わらせないことです。プロジェクトが少し進んでからもう一度作成することで、前回では見えてこなかったリスクを予測できる場合があります。プロジェクトの進行と並行して、改良を加えていくことで、新たなリスクや問題点、注力しなくてはいけないポイントなどがより正確に分かり、さらに質の高い過程決定計画図を作り上げることができます。

最後に

今回ご紹介したツールを上手に活用できれば、突発的なトラブルにもスピードを落とさずに対応することや力を注ぐべき対策を見分けたりすることができます。

実際に私たちのラボで行ったプロジェクトでも、仕入れた商品が売り切れなかった、予定していた相手へのインタビューができなくなったなどのリスクやトラブルを事前に予測できずに、その対策をどうしようと考え、立ち止まることがありました。このツールを上手に活用できれば、突発的なトラブルにもスピードを落とさずに対応することや、力を注ぐべき対策を見分けたりすることができ、私たちのプロジェクトで生じたリスクも事前に予測し、対応を練ることができたと思います。

このツールがみなさんが仕事を進めるうえでの一つの手段として活用して頂けたら幸いです。

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