今更聞けない!?情報分析の基本を学ぶワークショップ

はじめに

Natsumi Hamada
workshop design project
14 min readAug 9, 2019

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情報分析と聞いてどんなことをイメージしますか?

情報分析をする際にどんな点に気をつければいいのでしょうか?

情報分析に興味がある、または情報分析は重要であると感じ、勉強が必要だと思いながらもなかなか実践に踏み切れない、そこのあなた!

本文を読めば、何も知らずに分析を行うより無駄のない分析ができるようになるでしょう。

私たち3人は、経済学部に所属する大学3年生です。2019年春に情報分析を学ぶ目的でチームを組みました。私たち自身が本から学んだ上で、「情報分析の基本の基本を学ぶ、苦手な人でも理解できるワークショップを作る」というコンセプトで、講義やワークを盛り込んだワークショップを企画・実行しました。

この記事では、情報分析を行う際の基本と極意、さらに情報分析のワークショップを開催した経験を通して、私たちが得た学びについて綴っていきます。

情報分析とは

情報分析とは、ある事象に複雑に絡み合った複数の要因をひとつずつわけて検証し、最も問題である要因を見抜く行為のことです。

例えば、最近Aというアイスクリームの売上が下がっているという状況があったとします。そこであなたは、アイスクリームAの売上を増やすために売上が下がっている原因を調べ始めました。

なぜアイスクリームAは売れなくなったのでしょうか?

みなさんの頭の中には様々な要因が浮かんでいると思います。
アイスクリームAの値上げ、パッケージの変更、アイスクリームAの売り場の変更、ライバルの新製品アイスクリームBの登場、気温が低くて寒い、など本当に多種多様な理由が考えられますよね。それらは少なからずアイスクリームAの売上高の低下に影響を及ぼしているかもしれません。しかし、どの程度、売上に影響を及ぼしているかはわかりません。また、アイスクリームAの売上を増やすために優先的に解決すべき原因がどれかもわかりません。

そこで、役に立つのが情報分析です。ひとつずつ要因をわけて検証することで一番重要な原因を突き止めるのです。その上で、その原因に対処するアクションや意思決定を検討することで、より効果的な解決策を検討することができます。

さらに、情報分析をすることで、今まで考えられてきたことと異なる事実がわかるケースもあります。その一例として、とある事例を紹介します。

タイタニック号沈没事故を知っていますか?1912年、当時世界最大の客船が沈没した事故です。 事故後、タイタニック号沈没事故の関連書物には、脱出時原則として階層に関係なく女性と子供が優先と記されていました。

では実際に、女性と子どもが優先で助かったのでしょうか。生存者と犠牲者のデータを分析すると、1st、2nd、3rdと3つの階層に分けれていた乗客のランクの中で、1stクラスの生存率が高く、富裕層が優先的に助けられていたことが判明しました。
つまり、脱出時の原則として階層は関係なかった、と記述された関連書物と矛盾しており、それはすなわち、情報分析を行わなければわからなかった事実なのです。

このように、あふれるほどある情報の中から真実を見抜くことで、あなたの知りたい事象や原因を正確に考えることができるのです。

講義を聞いているワークショップ参加者

情報分析を行う際の極意

次に、実際に分析を行う際に、どんなことに気をつければ効率よく分析を行えるのかを説明していきます。ワークショップでは、情報分析を行う際に気を付ける点を、3段階に分けて説明しました。

①分析前での大切なこと

分析をする際に、情報収集をしなければなりません。しかし、いざ情報収集をしようと思っても、膨大な量の情報があり、それら全てを収集するのは非常に困難です。

そこで大切になってくるのが、『仮説』です。

仮説とは、まだ証明されていない自分で立てた仮の答えのことです。仮説を立てることによって、収集すべき情報の焦点や方向性が決まります。その結果、より効果的・効率的な情報収集ができるようになります。

仮説の大切さを知るためのワーク

②分析中に大切なこと

前節では、なぜ仮説が大切なのかを学んでもらいました。 次に、情報分析中に大事なこととして2点取り上げました。それは、「分析目的を明確化すること」、「比較軸を考えること」です。この2点は仮説が立てられていれば、よりやりやすくなります。

分析目的を明確化すること:分析をはじめると、色々なものが見えてきて、たくさんの気付きを得ると思います。一方で、当初知りたかった目的から外れてしまい、ただ分析を行っただけで何も得られなかったということが起こりがちになります。
分析目的が明確でないと、分析すること自体が目的になってしまうのです。だからこそ、何を明らかにして、どのようなアクションにつなげたいのかを意識して分析することが重要です。分析目的を意識することで、やりたいことからぶれずに分析ができるようになります。

比較軸を考えること:分析をしていく中で、様々な情報の中から仮説にそった情報やデータを選んでいく必要があります。1つのデータの中で年齢や時間など様々な要因が複雑に絡み合ってそのデータとなっていることがほとんどです。そのため、仮説を検証するために、どんな要素を比較すべきなのかを考えることが必要です。

例えば、アイスクリームAの売上高が下がっている状況では、アイスクリームBのような競合製品の売上高と比較することもできますし、アイスクリームAの売上高の前年同月比や、アイスクリームAを購入している人の性別や年齢(属性)の比較で比べることもできます。
このように、売上高が下がっているという情報だけでは、考えられる原因が多様に存在します。

もし「新製品のアイスクリームBが最近発売されたため、アイスクリームAを購入していた人がアイスクリームBを購入するようになったのではないか」という仮説を立てたのであれば、分析すべきものはアイスクリームAの売上高とアイスクリームBの売上高、つまり競合製品との売上高を比較するという分析が必要です。
この例では競合商品との売上高の比較でしたが、上述のように、
競合・属性(年齢・性別・地域・商品etc.)・時間・予算など様々な視点で比較することができます。

いろんな視点でデータを分析できるからこそ、分析目的や仮説につながるデータや視点を意識して選び、その中から最も分析に最適な比較軸を選ぶことが大事です。

③分析後に大切なこと

分析は一度では終わりません。仮説の構築→調査→分析→仮説の再構築というプロセスが大事になります。
一度目に立てた仮説が正しいことはまずありません。仮説再構築のプロセスを行うことで、仮説の精度が上がります。 この繰り返しによって、仮説がより原因の核心に迫るものとなり、より効果的な施策やアクションにつなげることができます。

各班で仮説の再構築を行っているときの様子

最後にデータの可視化と回帰分析の2点を取り上げました。

データの可視化とは、表をグラフに置き換え、視覚的にその特徴を把握できるようにすることです。その際、データの種類によって円グラフや棒グラフなどを使い分ける必要があります。間違ったグラフを使うとかえって分かりづらくなってしまうことがあります。例えば、円グラフはデータの割合を示すときに有効ですが、下図のようにデータ項目が多い場合は円グラフは見づらいグラフになってしまいます。

円グラフ 「商品Aの購入者の年代」

今回のように項目の多いデータの場合は、割合を示すデータだとしても、円グラフを使わず、下図のように棒グラフを用いることで分かりやすいグラフにすることができます。 実際に、各年代ごとに主婦/主夫が多いことがすぐにわかります。

棒グラフ 「商品Aの購入者の年代」

また、回帰分析とは、結果に対して要因がどの程度影響しているのかを分析するための手法です。結果を目的変数、要因と考えられることを説明変数といい、説明変数が1つのものを単回帰分析、2つ以上のものを重回帰分析といいます。実際に使用されるのは重回帰分析がほとんどです。

例えば、あるお店の売上(目的変数)の要因を広告回数(説明変数1)、売値(説明変数2)と考えた際に、広告回数や売値がどのくらい売上に影響しているのか、また影響が大きかった場合に目標とする売上を達成するために広告回数を何回にすればよいのか、売値をいくらにすればよいのかを予測するために重回帰分析を使用します。

以上のように、ワークショップでは、分析前、分析中、分析後の3点にわけて、学んでもらいました。

ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。情報分析というと難しそうですが、意識次第で簡単に分析の精度を上げることができます。そんなに難しそうじゃないしやってみようかな、と少しでも思ってもらえたら嬉しいです。

データの可視化についての講義

ワークショップを通して私たちが得た学び

このパートでは、このワークショップを作り上げるまでの裏話と、そこから私たちが得た学びについて記していこうと思います。

今回、所属する研究室(以下ラボ)のメンバーの中から情報分析を学びたい3人でチームを作りました。ワークショップを企画・実行し、「他者へ教える」ことを通じて自らの学びを深めることが目的です。

その中で、他のチームと私たちで大きく違うことは、どのチームよりも多く紆余曲折し、何度もPDCAサイクルを回しながら最終的にワークショップ実施までたどり着いた、ということです。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、 Do(実行)、 Check(評価)、 Action (改善)の頭文字をとったもので一連の流れを一つのサイクルとし、業務を効率化させるフレームワークです。

時系列で見ていくと、最初に衝突した壁は、3人のやりたいことの一致が難しい、ということでした。大枠でやってみたいこと・目標は一致していながらも、そこに至るまでのやり方や、最終的に情報分析を通して何をしてみたいかなどの先のイメージに違いがありました。
それを解決するためにミーティングに多くの時間をさき、3人が納得できる点を探しました。その中で、コミュニケーションやチームワークの大切さやSNS上の文字だけでのやりとりは意思の疎通が難しいということ、またメンバーがそれぞれ忙しい中で電話でミーティングをする時間を合わせること、その時間を確保すること自体の重要性や難しさを身をもって学びました。

5月には、ワークショップを開くにあたり、PDCAサイクルのPlanとして「SDGs(持続可能な開発目標)を取り入れることは企業の成長にどのように有利なのか」をテーマにワークショップを開こう、と計画をしていました。その計画で中間報告を行いました(Do)。しかし、社会人アドバイザーの方に分析方法をはじめとした計画の実現可能性について聞かれ、難しいのではないかといった指摘をいただきました。その後、チームで議論をし(Check)、そもそも誰が情報分析を必要としているのか、何のために私たちはワークショップを行うのかということを改めて考え始めました。話し合いの結果、情報分析を初めて行う学生を対象としたワークショップに方向性をシフト(Action)しました。

7月に入り、変更した方向性を軸に、学生向けの情報分析のワークショップのリハーサルを行いました。その前には、深夜2時までオンラインミーティングを行ったり、リハーサルのリハーサルを行ったり、自分たちで不明瞭な点がないか何度もチェックしてリハーサルに臨みました。

リハーサルに参加してくれた人からは、「情報分析という言葉の堅苦しいイメージよりずっと楽しい、面白いワークショップだった」とのコメントを頂きました。情報分析をこれから始めようとする人たちに向けて、スーパーの牛肉の売上高が下がっている、吉祥寺に花屋を新しく出店するなど、身近に感じてもらえるような題材を取り扱い、ワークやクイズを豊富にして、パワーポイントのスライドも工夫した成果でした。

しかし、課題もたくさんありました。説明が分かりづらい部分があるといった問題や、本番で全く同じワークショップを行うのか?リハーサルに参加したメンバーは本番にも参加するので、もっと改善できることはないのか?といった声です。

私たちはワークショップをリハーサルと本番で完全に変えるといった発想をこの時まで持ち合わせていなかったため、この指摘にとても焦りを感じました。分かりづらかった部分の説明はより丁寧にしたり表現を変えることでクリアできます。しかし、リハーサルに参加してくれたメンバーに、再び本番のワークショップに参加する新たな価値を提供することは容易ではなく、チームでミーティングを重ねました。

そこで、単回帰分析と重回帰分析が実際の生活にどのように役立っているか?というパートを足しました。そのほかにもクイズを足し、劇や小道具を変更し、よりスライドに工夫を凝らしました。リハーサルから本番まで1週間しかありませんでしたが、前回より成長するために今何ができるか、考えて試作を試みた期間でした。

そして本番の日になりました。ほぼ時刻通りにスタートでき、本番での緊張感や焦りもありましたが無事にワークショップを終えることができました。結果として、「リハーサルよりも説明がよくなった」「(私たちのように)前で堂々と発表できるようになりたい」といった嬉しい声をいただきました。リハーサルから本番までの成長の結果だと思います。

しかし、集客の問題が課題として残りました。このワークショップのターゲットである情報分析を初めて行う学生を集めるという点まで十分に対応できませんでした。少しでも早くワークショップのコンセプトを決めて集客すべきであったと感じています。

ワークショップ参加メンバー

さいごに

ワークショップの実施を通じて、「教えなければならないというプレッシャーでいつもより積極的に行動できる」ことを体感しました。また、この経験を通して、チームで話し合うときに相手の意見を素直に取り入れつつ、自分の意見も言うことができるようになりました。最初は何をするにも手間取っていましたが、議事録の書き方やミーティングの進め方の効率が回を重ねるごとに段々と良くなったと実感しています。

このように、たった1回のワークショップの企画・実行をすることで多くのことを学び成長することができました。

私たちのチームはワークショップを実際に行うことができるかと心配される中、紆余曲折がありながらもワークショップとして形にしたことで、私たちは成長できました。それは、ワークショップを開催するにあたって協力してくださった多くの方々、また参加して下さった皆様のおかげだと思います。本当にありがとうございました。

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