「会話」のテクニック、学びませんか?

Marin Suzuki
workshop design project
11 min readAug 21, 2020

大学生がオンラインでワークショップを開催してみた

1.はじめに

私たちのゼミ活動は、一般的なゼミとは異なりゼミのメンバー同士で輪読をしたり、ある分野の研究を行ったりするのではなく、自ら課題を発見し、プロジェクトを実践して社会に価値を生み出すという事を目的に活動している。

そのことから私たちは「ゼミ活動」ではなく「ラボ活動」と呼んでいる。

私たちはプロジェクトの一つとして今回WSDP(ワークショップデザインプロジェクト)に取り組んだ。WSDPでは、同じような分野に興味を持ったメンバーが、特定の分野について文献などを読み学び、その学びを第三者に伝えるワークショップを開催する事で自らの学びを深めるというものである。

私たちは「人間行動」という分野に興味を持つメンバーが集まり、その中でも「会話」を取り上げた。このトピックを選ぶ際に「この先10年後も役に立つこと」というアドバイスを受け、社会人になってからも役に立つと考えた。また、それぞれのメンバーが初対面の人と仲良くなるためにはどうするべきなのか、良い関係性を築くにはどうするのが良いのかを考えた。そして、話し合いを進めていく中で全てにおいて大切なのは「会話」であるという事にたどり着き、私たちは「会話」についてのワークショップを開催した。

2.WS内容

どんな人を好くのか

まず、私たち人間はどのような人を好むのかについて紹介したい。結論から言うと、人は類似性を見つけるとその人を好む。このお互いの類似性というのは、友情が成立する確率に正比例すると言われている。つまり、似ていれば似ているほど友達になりやすいということだ。逆に、非類似性を見つけるとその人に対して嫌悪感を抱いてしまう。心理学用語に、ラポールという言葉がある。これは、心と心が繋がる状態を指し、自分と類似性のある人に対して好感を持った時にこのラポールが生まれる。つまり、「お互いの共通点が心と心を繋ぐ架け橋」になるという事だ。

では、どのように共通点を見つけていけば良いのか。ここからその方法について紹介したい。初対面の人とは、共通点を段階的に見つけていくのが効果的。その段階というのが「共通点を見つける3つの切り口」だ。所有・行動・あり方、この3つである。1つ目、所有とは持っている物の事。これは子どもの例に当てはめると良く分かる。「ゲーム機を持っていないと友達に仲間外れにされるから欲しい」。誰もがこのような状況は想像できるのではないか。たかが持ち物だが、共通点という大きな力がある。2つ目、行動とはやっている事。仕事や趣味、住まいも含まれる。地元が同じであったり近いという事で、親近感がわき話が盛り上がった経験がある人は少なくないだろう。最後に3つ目、あり方とは考え方・価値観・性格・ビジョンなど、人の内面を表すもの。これは、目には見えず抽象度も高いため、見つけるのは難しい。しかし、見つける事で深い関係を築くことができる。

まとめると、私たちは類似性のある人を好むので初対面の人とは共通点を見つける事が大事である。その際、まずは当たり障りのない所有そして行動、それから徐々にあり方の切り口から見つけていくのが効果的だ。

雑談の続け方

皆さんは、初対面の人と話していると話す事がなくなり、気まずくなってしまう経験を1度はしたことがあるのではないか。このセクションではそのような問題を解決していく2つの方法を皆さんに紹介したい。

1つ目は縦横の質問だ。まず横の質問とは話の幅を広げる質問である。例として、他には、例外は、別の見方は?などが挙げられる。横の質問は相手の視野を広げたり、視点を転換させたり、感情の状態を調べたりするときに使える。縦の質問は、5W1H(誰、何、いつ、どこで、なぜ、どうやって)などを使ってある特定の話題について深堀する質問である。縦横の質問を使うことによって、自ら話題を提供しなくても聞く側のポジションを取ることで話を盛り上げる事は十分できる。

2つ目は過去・現在・未来3つの質問だ。相手の話を広げ、例え知らない話題でも通用するマルチな質問の作り方を紹介していきたい。まずは、過去・現在・未来とはどのような事なのか説明する。過去は何でそうなったのかなどのそれが起こった原因や背景。現在とは、今どうなっているのかなどの現況。未来とは、これからどうなるかなどのそのことによる影響。この3つの質問を使えば、あらかじめたくさんの話題を仕入れておく必要はない。となると、一見共通の話題がなさそうな相手に対しても、臆することなく話しかける事ができるようになる。これにより雑談のハードルを下げる事ができる。

雑談において重要なのは質問するという行為である。どんな話題に対してもライトな質問を出せる事、詳しくない話やよくわからない話題になっても話を広げられる事が重要だ。今回紹介した事をぜひ意識していただきたい。

聞く態度

ここから、話し手がどのような欲求を持って話すのかマズローの欲求5段階説を用いて考えていく。私たちは、人間が会話に重きをおくようになるのは低次の欲求(生理的欲求、安全欲求、社会的欲求)を満たした時ではないかと考えた。低次の欲求が満たされた人間が次に持つのは承認欲求である。これは「誰かから認められたい」という誰しもが持つ欲求だ。つまり、話し手は自分の話に関心を持ってほしいから話すのではないだろうか?そこで、話し手の欲求を満たすために聞き手が示すことのできる態度について考えた。今から私たちがたどり着いた3つのポイントを紹介する。

1つ目はリアクションだ。人間が言語チャネルよりも非言語チャネルを優先する傾向がある事は世界中で実験され、証明されている。自分で制御しづらい非言語チャネルは会話において重視されるのだ。そこで、我々はリアクションに注目した。普段の会話において、人の体は思っている以上に動いていない。微笑む、頷くといったようなリアクションは少し大袈裟にしてみてほしい。そうする事で話し手にもリアクションが伝わって、「自分の話を聞いてくれている」と感じさせることができる。

2つ目は合いの手だ。合いの手には「話して良いですよ」と話を促す効果がある。いきなり否定的な言葉を使うことは避け、同意や共感を示す。それだけで、会話のリズムが整い、話し手は話しやすくなるのである。

3つ目は会話における相手のタイプを見極めることだ。人には好きな会話のタイプがある。はっきりとした受け答えが好きなのか、ノリと論理性のどちらを大切にしているのか、といった事を意識しながら話を聞き、相手のテンポや言い回しに気を配ってみてほしい。

3. オンライン上でのワークショップの開催

開催場所

私たちがオンラインでのワークショプを開催するにあたって最初にグループワークができる媒体を探すことから始まった。候補に上がったのが、ZOOM, special chat , Discordである。その中でも通信環境と利用の容易さを考えたところZOOMに決定した。

グループワーク

グループワークでは3–4人のグループにブレイクアウトルームを使い振り分けた。私たちは共同ホスト機能を使い、すべのグループを行き来できるようにした。それによりどのように話が進行しているか、全てのグループに目を配る事ができたと考える。グループワークをやるにあたり重要なのは明確に指示を出す事であると感じた。

進行

進行はイントロダクションをした後、説明→グループワークを3回行った。各セクションで画面共有機能を使った説明した。その後学んだ事を次のグループワークで実際に試してもらう構成にした。これにより、オンラインでありがちな聞いただけで終わってしまい、何も身につかないという結果を防ぐ事ができた。

4.プロジェクトを通して学んだこと

1つ目に、「予定を立てる大切さ」である。プロジェクトを運営する上で、長期の予定を立てる事はとても大切であった。まず、予定を立てるためにタスクのリストアップをした。そしてそれをグループ化し、並行できるもの、そうでないものを考えて大まかなスケジュールをカレンダー化した。我々は途中で大きくプロジェクトのテーマを変更したため、改めて決めなければならない事が多くあった。しかし、事前に立てていたスケジュールのおかげで「ワークショップの開催が間に合わない」という最悪の事態を回避する事ができた。

2つ目に、オンラインでいかにしてコミュニケーションを取り、プロジェクトを運営していけば良いか、という事である。私たちは初め、全員で作業する事を重視していた。そのためミーティングは、不定期で深夜にかけて長時間行っていた。それにより、少しずつメンバーに疲れが溜まり、作業効率が下がってしまった。そこで、slackというチャットツールを活用し、進捗や問題点を共有しながら各自での作業時間を増やす事にした。次のミーティングの日程と内容を予め決めておき、各自がそれに合わせてスラック内で意見を出し合う事で、ミーティングも一気にスムーズになったように感じる。オンラインで全ての作業を行う時、「いつでも家にいるからミーティングできる」という考え方は、効率を下げ、健康にも影響を及ぼすので危険だ。チャットであっても各自が意識的に反応を示す事で、活発な活動を行うことができ、作業効率の向上に繋がると実感した。

5.集客

今回のプロジェクトで課題として残った事は、「集客」だ。

コロナウイルスの影響でオンライン授業になり、大学1年生は友達作りができておらず困っているのではないかと考えた。そこで、友達作りを手助けをするために、自分たちの大学の1年生をWSのターゲットにした。

まず、実際に行った集客方法とその結果について。宣伝開始は本番の2週間前を予定し、それに向け宣伝画像と文章、参加応募用のグーグルフォームを作成した。各自で大学内の友人に依頼をし、友人が所属しているサークルや部活動の1年生に向けてこれらを流してもらう、という形をとった。しかし、結果は0人。そこでターゲットを変更し、大学生なら誰でも参加可能なWSにした。だがそれでも、ラボ生以外の一般の参加者は5人という結果だった。

この結果に対して、「本当に1年生にとってこの機会は必要だったのか」考えなければならない。何らかの方法で、既に1年生は友達を作っていたのかもしれない。逆に、オンライン授業なので、まだ大学の友達を作る必要は無いと考えていたのかもしれない。ターゲットを決める前に、1年生の友達作りに関して、正確に状況を把握しておくべきだったと感じている。

必要があったとすると、解善策に「宣伝開始を早めること」が挙げられる。2週間前だと予定が既に入ってしまっている可能性が高い。また、コロナウイルスの影響で例年通りにサークルや部活動の新歓ができていなかった。そのため、団体に所属している友人でも1年生と関りが少なく、宣伝を流してもらえないという状況だった。これは予想外であったため、早く宣伝を開始すれば、素早く状況を把握し新しい対応をとる事ができたのではないかと考える。

6.最後に

私たちが初めて取り組んだWSDPは、全て手探りの状態から始まった。運営の大変さや集客の難しさなど多くの学びを得たと同時に、達成感を感じる事ができた。これからもこの学びを活かし、様々な場所で積極的にプロジェクト活動を行っていきたい。

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