国連WFPブログ
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【日本人職員に聞く】―尊厳を取り戻し希望をつなぐ支援

シリア紛争開始から10年、現地で食料支援を続けるWFPの日本人職員石井理江さんにお話しを伺いました。

2020年2月ダマスカス郊外の倉庫 ©WFP

2018年4月にダマスカスに赴任して以来約3年、シリア国事務所で勤務しています。私はサプライチェーンを担当しており、タルトス、ラタキア、ホムス、アレッポ、ダマスカス、カミシュリにある6つの倉庫を含む物流・輸送オペレーションに携わっています。

新型コロナウイルスのまん延と食料価格の高騰で打撃

赴任したころにはほとんどの地域が政権下に収まり、ダマスカス付近では毎日のようにあった砲撃の音が聞こえてこなくなりました。やっとこれで平和になって、子どもたちを安心して学校に送り出せる日常が戻ってくる、と喜んでいたところ経済状況が悪化、新型コロナウイルスの影響も重なり、暮らしが成り立たず、先が見えない状況にあります。現地の人から薬を買うお金もない、子どもを学校に行かせられない、などという話を聞くと、とても辛いです

3月15日でシリアの紛争は10年という節目を迎えますが、現在も1300万人が人道支援を必要とし、1240万人が食料支援を必要としています。病院等も半分近く紛争で破壊されており、コロナ禍ですでに脆弱な医療システムはひっ迫しています。隣国レバノンでの経済危機とインフレによる食料価格の高騰で現地の人は困窮しています。

2020年2月ラタキア港で輸入米の荷揚げ ©WFP

コロナ禍でサプライチェーンも大きく打撃を受けました。人の動きが制限されるにあたって物資の動きが制限され、また国内需要が大きくなるに従い、食料の輸出に制限がかかり、物価が高騰したのです。パンの価格は去年1月から約5倍、燃料費も上昇し、電力の供給も不安定で一日に何時間も計画停電があります。

そんな中、WFPは日本を含めたドナーの支援で毎月約127万食を480万人のシリア人に届けています。ほかにも灌漑施設、パン工場、製粉所などの生活インフラの修復、学校給食、学校に行けない子供たちへの支援、栄養支援プログラムを通じた支援を行っています。

仕事の原動力

実際に現地で、シリア人スタッフと一緒に苦しい思いをしている人たちの支援が出来ることをとても嬉しく思っています。働くこと、食べることは人間の尊厳、また根幹だと思うので、それらの日常と、家族の食卓を取り戻し、希望をつないでいくことができるのがやりがいです。

2021年1月デリゾールで現地の子どもたちと(左)農家の女性と子ども(右)©WFP

先日日本政府の支援を受けたデリゾールの灌漑プロジェクトを訪れた時、この灌漑事業により、用水路で水を引いてくることが出来るようになった農家の方を訪れました。そこで出会った農家の女性は、今回、ユーフラテス川から引いてきた水で農業を再開することができ「農民である自分は、自分の手で、自分の畑で作ったもので今年は家族を養えることが何より嬉しい」と言ってくれました。シリアでは農作業は主に女性が行うのですが、子供も孫を含めて10人いる、と言って握手をした彼女の手は固い立派な働き者の手で、シリアの女性の逞しさを感じました。

しかし限られた予算で1240万人のニーズと実際に支援している480万人とのギャップをどう埋めるのか、いかにコストを削って一人でも多くの人に支援を届けるか、どの人を優先的に支援の対象とするのか、日々葛藤しています。日本の皆さんからの支援で、より多くの人に食糧を届け、また自立出来るよう活動を続けていきたいと思います。引き続きのご支援、感謝いたします。

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石井理江 国連WFPシリア事務所ロジスティックスオフィサー。JPOとしてタンザニア事務所で勤務した後チャド、パキスタン、ローマ本部を経てシリア事務所へ赴任。緊急援助支援に関わる物流業務に従事。

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国連WFPの活動に関する主要な公式発表や、支援活動の現場から様々なストーリーをお伝えします。

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