プロジェクト・アマタがブルンジの学校給食にとって重要な理由

新たに始まった国連WFPとパートナー企業ケリー・グループによるプロジェクトによって、ギテガ県の子どもたちへの持続可能な牛乳供給が拡大します。

ベルナデットとイザクも「プロジェクト・アマタ」の支援対象の酪農家です。Photo: WFP/Irenee Nduwayezu

ブルンジ中部のギテガ県ブゲンダナで酪農を営むイザクは次のように語っています。「私が所有する家は、酪農で建てたものです。牛を飼っていなかったときは、貧しい生活でした」

イザクと妻ベルナデットの生活は、乳牛とそのミルクに依存しています。そしてこのミルクは、コミュニティの他の世帯の生活を支えているのです。イザクはこのように述べています。

「小さな子どもがいる人々は私たちのところにやってきて、赤ちゃん用のミルクを500ミリリットルあるいは1リットルほど分けてほしいと頼むのです」

ブルンジは現在、牛乳消費頻度が1人当たり1カ月約2杯と、東アフリカで最も少ない国です。牛乳はめったに手に入らず、手に入るとしても高価なものなのです。

ホンジュラスでの「プロジェクト・レーチェ」の成功を受け、国連WFPは、香味料や栄養剤の開発を行うグローバル企業ケリー・グループとともに、1月に開始した「プロジェクト・アマタ」を通じてイザクとベルナデットのような小規模酪農家を支援しています(アマタとは、ブルンジの公用語であるキルンジ語でミルクを意味する言葉です)。

このプロジェクトでは、酪農家や集乳センターなどと緊密に協力し、必要性の高い設備や研修を提供しています。研修内容は、家畜への最適な給餌や世話の方法から加工や流通に至るまで、家畜の管理や牛乳生産における主要分野を対象としています。

「アマタ」とはブルンジの公用語キルンジ語で「ミルク」を意味します。 Photo: WFP/Irenee Nduwayezu

「乳牛と子どもに恵まれますように」―これはブルンジで広く使われる祈りの言葉。牛乳やバター、チーズを生み出す乳牛が、最も弱い立場に置かれている人々に生命線を提供し、人々が家族を育て、養うために必要な栄養と収入をもたらしてくれるからです。

しかし、国内総生産(GDP)が世界で2番目に低いこの国では、栄養と収入が不足していることが多いのです。今日、ブルンジの人口1100万の半数以上が慢性的な栄養不良の影響を受けており、多くの人の生活は貧困ラインを下回っています。

その影響は、特に若年者にとっては壊滅的です。栄養状態の良くない子どもたちは感染症にかかりやすく、学業への悪影響も深刻です。

贅沢品ほどの価値があるもの

学校で給食と牛乳が提供されると出席率が上がります。Photo: WFP/Irenee Nduwayezu

国連WFPはブルンジ国内で100万人以上を支援しており、その半数は学齢期の子どもたちです。

しかし、ニーズは非常に多く、ブゲンダナのある小学校で校長を務めるリベルテ・ビガバさんは「朝、学校に来る前に食事をしない生徒がまだたくさんいます」と話しています。

「子どもたちがこの学校で食べ物や牛乳を摂ることができないと、彼らの集中力を保つのが難しくなります」

国連WFPの学校給食支援は、子どもたちが学校に通う動機付けになっていますが、リベルテさんによれば、「食べ物が足りずドロップアウトしてしまう子どももいる」ということです。

国連WFPの支援を受けていない学校のドロップアウト率はさらに高くなっています。

牛乳はブルンジの子どもたちが摂取することのできる数少ない動物性たんぱく源の一つです。 Photo: WFP/Irenee Nduwayezu

牛乳はブルンジの子どもたちが摂取することのできる数少ない動物性たんぱく源の一つです。また、栄養不良が原因の「発育不全」の撲滅にも役立ちます。発育不全とは、身体および認知機能の発達が阻害されることで、人間としての成長可能性が奪われてしまう悲惨な状態です。

そのため、「プロジェクト・アマタ」では、国連WFPのこれまでに行ったプロジェクトの実績を基に、学校や地域コミュニティにも働きかけ、多くの生徒が牛乳を飲めるようにするとともに、栄養不良解消の重要性について意識向上を図る方針です。

小規模酪農家にとっての大きな課題

小規模酪農家の生活は厳しいものです。イザクとベルナデットは毎日、日の出前に起きて乳牛の世話をします。

仕事は大変ですが、長時間労働というよりも、道具や専門知識の不足から生じる課題も少なくありません。

このことは特に衛生面について当てはまります。二人が最善の努力をしているにもかかわらず、彼らの作るミルクが必要な衛生基準を満たさないことがあり、集乳業者から買い取りを拒否される恐れもあるのです。

これでは、イザクとベルナデットの収入は少なくなり、必要としている人々に届く牛乳も減ってしまいます。

プロジェクト・アマタでは、ギテガ県全域の酪農検査業者向けに研修を行っています。Photo: WFP/Giulio D’Adamo

ただ、このほかにも問題はあるのです。

ブルンジの多くの酪農家とは違い、イザクとベルナデッタはまだ国連WFPからの支援と研修を受けておらず、生産を増やすための手段を持っていません。

このような手段としては、乳牛用飼料の量と質の両方を改善することのほか、乾季に備えるための保管スペースの整備などがあります。

「私たちは、1年を通して乳牛に餌を与えられるようにするための技術を学ぶ必要があります」とイザクは言っています。

このプロジェクトでは、アイザックとベルナデットのような酪農家1000人に、まさにそのような知識を身につけてもらうことが狙いです。ケリー・グループは、同社の乳製品、栄養、加工に関する能力を共有してくれており、プロジェクトの完璧なパートナーです。

しかし、生産量が増加したとしても、バリューチェーンの次の段階である輸送で問題が生じることも多いのです。

輸送:バリューチェーンにおける弱点

ブルンジでは、たいていの場合牛乳は自転車で運ばれます。

酪農家から集乳業者へ、集乳業者から加工工場へ、あるいは販売業者から購入者へと、牛乳は非衛生的な状態で輸送されることが多いのです。自転車に据え付けられた容器はかなり熱くなり、牛乳はその中で何時間もバシャバシャと揺られることになります。

ブルンジでは、購入される牛乳の実に80%が、自転車による移動販売で売られています。こうして販売される牛乳は、人間が飲用するには安全でないことも少なくありません。

ブルンジでは牛乳はほとんどすべて自転車で運ばれます。Photo: WFP/Giulio D’Adamo

酪農家は自転車にも頼らざるを得ない状況です。イザクは自身が所有している容器を使い、牛乳を地域の集乳業者のところまで運びます。

業者は牛乳を検査し、合格であれば、業者が自転車で集乳センターに届けます。

イザクは次のように話しています。「輸送の道のりは長く、2時間以上かかります。そのため、冷蔵庫に入れる前に牛乳が腐ってしまうこともよくあります」

つまり、イザクとベルナデットの牛乳が集乳業者に受け取ってもらえたとしても、集乳センターの段階で受け入れを拒否される可能性もあるということです。しかし酪農家には、このずさんな長いバリューチェーンのどこに弱点があるのかを特定することができない場合が多いのです。

そのため、プロジェクト・アマタでは、国連WFPとパートナーがブルンジでこれまでに実施したミルクプロジェクトの実績を戦略的に活用し、酪農家や集乳業者が牛乳を安全に輸送するための機器の特定と供給に取り組んでいます。

この写真のような加工工場が酪農家から買い取る牛乳は、厳しい品質基準を満たしていることが必要です。Photo: WFP/Giulio D’Adamo

生産能力、安全基準、輸送、入手可能性:プロジェクト・アマタは、こういった牛乳生産におけるあらゆる側面を強化し、ブゲナダ県の13万人をはじめとする多くの人々の栄養不良対策の一助となることを目的としています。

これらの課題にいかに対処するかは複雑な問題ですが、一つ確かなことは、イザクとベルナデットのような酪農家がその答えの一部だということです。

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