[x-Music Lab 21春] 2021年上半期の音楽との対話の記録と、Clothes Synthesis

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x-Music Lab
Published in
Jul 24, 2021

環境情報学部2年 柴田

私は今学期、本研究会x-Music Labの一員として、音と音楽の狭間における表現についての研究や、未知なる音楽の創造を目標に活動させていただいた。その活動の記録と学びについて、以下に記していく。

新規生ワークショップ

今学期前半に4週間にわたって、既存生の先輩方や講師の方に頂いたお題を基にしたワークショップに参加させていただいた。各週に行ったワークショップのお題は以下の4つである。

1.新規生4人でSFC Campus内の音を聴く。

2.音と音楽の境界にある音を探して録ってくる または 作ってくる。そのうえで、それに基づいた自分の中の音楽の定義(仮説)を書く。

3.第2回のワークショップで立てた仮説を元にxな作品を探す。

4.とにかく自分がやったことないⅹな演奏をしてみる。その上で自分の中の「音を奏でるとは何か」を定義してみる。

日常にありふれた音を聴くところから始まり、音楽の定義に向き合いながら、実際に自分でも音楽を生み出していくこの活動を通し、この研究会で活動する際の一つの道筋を得られた。自分の中での音・音楽に対する姿勢に大きな変化もあった。

現在、自分の中の「音楽」とは、耳から伝わる波によって何らかの感情を呼び起こされるという、精神的な指向を持つものである、と言える。ワークショップやその他の活動を経て、意識を変えることで音として捉えられるようになった音があった。今まで無意識に聞き流していたような、音として捉えられていなかった音が、楽しい、面白い、または言葉で表現できない情動として押し寄せて来る体験をした時に、自分の想像以上に世界中の音が音楽になり得ると感じた。音と音楽の狭間には、どう聴こうとしているかや、どのような心理状態にあるかといった、聴く側の姿勢・文脈が関わるのではないかと考えるようになった。

私が最初に音と音楽の狭間として挙げたのは波の音だった。これは小さい頃から良く聞いていた音だったが、いざ心を作った状態で海へ赴くと、癒され、落ち着き、耳障りが良く、もっと聴いていたいという気持ちにさせられた。

今学期の活動を通して、他にも鳥の鳴き声、人々の話し声、電車の走る音など、環境音に音楽を感じるようになったことが何度もあった。その時私は特に、リズムと音色を、以前よりも敏感に感じていたように思う。自然の中にある、不規則だが偶発的なグルーヴ感を含んだ音の連続だったり、意図的ではないものの緻密で繊細な質感を持った音、または意図的に生み出された音を、耳で捉えられるようになった。リズムと音色という要素は、私がこれから自身の中での音楽の領域を広げる際に、大切な観点になってくると思う。

xな演奏として私が行ったのは、フラメンコのパルマ(手拍子)だった。フラメンコ音楽と言えば、フラメンコギター、パルマである。フラメンコにおけるパルマはただの拍手ではなく、リズムと2つの音色を持っており、それだけで十分に音楽と言えるものだ。この研究室に入るまで音楽だと感じたことのなかった拍手と、パルマの間にあるその違いを、実感することができた。意図して鳴らそうとすることで音楽性を帯びる音や、他の音を排除することで新たに残る音楽は、世の中に多く隠れているのではないかと思った。

Clothes Synthesis

新期生ワークショップを終え、ともにこの春学期からx-Music Labに所属することになった神田さん、長瀬さんとともに、展示を目標とした作品制作を行うことになった。作品内容やテーマについて何度か議論を重ねた結果、服×動きから生まれる音を追求することに決定した。

Clothes Synthesisとは、身体運動によって服が生み出す音から、新しい音楽の可能性やアルゴリズムを見つける作品である。

例えば、服が関節を抑えることによって可動域が狭まり身体表現が限定的になったり、身体の運かし方によって服の布が擦れあって生まれる音が変わったり、服と身体運動、そこから生まれる音は相互に制限し合い循環している。この3つの要素の関係は、簡潔化すると下の図のようにまとめることができる。

現在私たちは、服・身体運動・音の関係性について、条件を変え試行を繰り返しながら探っている。また、パフォーマンス中の制限や表現の変化のルール作り、音処理や音響環境を含めた作品の構成決定に向けて議論と実践を重ねている最中である。

ここから、今までに作成したClothes Synthesisのプロトタイプを紹介していく。

プロトタイプ1

手法:

1回ずつiPhoneを右腕・左腕・右脚・左脚・胸ポケット・お腹に順に装着し、それぞれの場合で同様のダンスをしながら録音する。

録音した音源そのものや、その音源にエフェクトをかけて処理した音源とダンスの動画を組み合わせる。

服:

布の半袖とパンツ/羽織のような袖の広がった上着、裾の広がったパンツ

動き:

コンテンポラリーダンス

プロトタイプ1は、服の擦れる音が実際にどのようなものなのか、ダンスの動きとどのようにリンクするのかを、まずは試行してみるということを目標に行った。

①の動画は録音音源にReverbをかけたもの、②の動画は録音音源にResonatorをかけたものを使用している。

振り返りとして、エフェクトで加工した音よりも服の擦れる生音を使用した方が服のダイナミクスをより感じられて面白い、動きが自由すぎて制限や制限からの解放が感じられず3要素(=服・動き・音)の関係性が浮き彫りになっていない、即興性やダンサーの生命性(癖や動きの選択の特徴)が薄いといった意見が上がった。

プロトタイプ2

手法:

プロトタイプ1と同様

服:

シャカシャカした素材の服/大きな一枚の布

動き:

始めは手を通さずに服を被った状態から始まり、身体表現をしつつ服を着ていく/布を被った状態から始まり、身体表現をしつつ布から逃れようとする

プロトタイプ2では、服の生音に注目し、特徴的で

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