[x-Music Lab 21秋] Sonic Aquarium -Resonance-

Ayaka Sakakibara
x-Music Lab
Published in
Feb 5, 2022

今期はSonic-Aquarium-Resonance-の作品制作を行った。

以下にその作品の概要などを記載していく。

研究概要

Sonic-Aquarium-Resonance-は魚と人間の間でセッションを行う取り組みです。この作品に取り組む上でのきっかけは水槽や水族館での魚の鑑賞体験は主に視覚に限定されており、聴覚からの情報はほとんど入ってきません。また、陸の動物では人間は相互にインタラクションを取ることができますが、水中生物ではそれが難しく、私たちは一方的に魚を視覚から鑑賞する、という鑑賞体験になりがちです。そこで私たちは,人間が魚に介入し視覚だけではなく聴覚でも鑑賞できる仕組みを作り,それを使って音楽演奏をしたいと考えました.このプロジェクトでは魚の中でも金魚を用いて研究しました。金魚は音楽を聞き分けることができるほどの聴覚能力を持っていることが先行研究からわかっています。私たちはこの聴覚能力を応用してどのような音が金魚を刺激させるのかを検証・選定し,その音を使ったセッションを設計しました。金魚の水槽中の位置をパフォーマンス空間にレーザーを使って示し,それをパフォーマーが追いかけて近づくと,水槽中の水中スピーカーから金魚を刺激する音が鳴り,金魚が刺激されるます。パフォーマンス空間に配置されたスピーカーから音が刺激された金魚の動きに応じて鳴ります。このように金魚とパフォーマーは追う・逃げるという行為から生成されるサウンドを変化させることで演奏となります。演奏の音は金魚の位置,どの程度刺激されたか,そしてパフォーマーとの距離によって変化します. 金魚の位置はパフォーマンス空間のサラウンド環境の定位に同期していて、これにより金魚の動きを音で感じやすくなります。 刺激の程度が大きいほどリズムは速くなり,金魚とパフォーマーの距離が小さいほど音量は大きく,音色は様々なエフェクトが作用し,音が重ねられ豊かになっていきます。そのため,パフォーマーの金魚を追うタイミング,歩く速さがパフォーマンスの肝となります。

プロジェクトでの私の役割は、サウンドデザインと金魚の刺激音の選定を行いました。

サウンドデザイン

金魚の水槽中の位置,金魚の速度,パフォーマーと金魚の距離の3つを指標として設計した。

サウンドの旋律はドローン音楽を設定し、金魚の距離などによって緩やかな音色の変化、音量変化を設定した。この旋律はパフォーマンス開始と同時に流れ始め、終了時に止まるようになっています。金魚とパフォーマーの距離がある一定以上小さくなったとき、金魚へ刺激音を流すために必要な距離に近づいていることを知ることができる音が流れる。この音はより金魚とパフォーマーの距離が近づくとその音は打楽器の音から音程を持った音に変化していく。

金魚が音に刺激されたとき、パフォーマー側には音のフィードバックが返ってくる。この音は金魚がどのくらい刺激を受けたかによって変化する。どの程度の刺激を受けたかは、金魚の泳ぐ速度によって決定し、その速度が大きいほど刺激を受けたと定義する。この速度が、演奏者側に流れる音のリズムと同期している。

また,旋律・リズムの生成とそのトリガーはMax for LiveのMax Midi Effectを用いて制御している.音の定位は,Surround PannerのX軸とY軸のパラメータを金魚の位置に当てはめ、金魚の位置と音源の位置を同期させることで設定した。https://www.ableton.com/en/packs/surround-panner/

サウンドのエフェクトはパフォーマーと金魚の距離によって設定した。EQは距離が近づいた時に60kHzの低音が鳴るように設定し、距離が遠い時は0Hzに設定した。ChorusのDry/Wetでは音の厚みを変化させ、近づいた時に音圧が大きくなる。 音量自体も距離によって変化しており、-24dbから0dbまでで設定し、距離が近づくほど音も大きくなる(Figure 4). これらのエフェクトの設定によって,金魚へ近づいていることがパフォーマーに伝わりやすい.また,max for live のLive APIを用いて人間と魚の距離の数値をAbelton Liveのインストゥルメント・エフェクトのパラメータにマッピングすることで制御している.

刺激音の設定

どのような刺激音を設計するかだが,先行研究では金魚を使った実験を行っており,金魚は500Hz以下の低周波の持続する刺激音に反応することがわわかっている.この研究を参考に実際に金魚に水中スピーカーで刺激音を聞かせて実験を行ったところ,300Hz以下の数秒持続する音を複数回連続で再生すると最も反応した.この結果を元に金魚が誘引されやすい音を3つ選定した(Figure 2)。そして演奏者が金魚にある一定以上の距離に近づくと選定した3つの音のうちいずれかがランダムに再生され,金魚を刺激するようになっている.また,音の再生時間,再生回数はMax for Liveを使って制御している.

以下にデモ動画のリンク

まとめ

自分の好きな水中生物の作品を作れたことが良かった。環世界や人間以外のものに対しての興味がより湧くきっかけにもなった。

反省点として、人間と金魚がセッションする仕組みの種類や方法をリズムやエフェクトに頼ってしまったな、というところがあり、演奏方法についてもっと深くまで掘り下げられたなと思った。また金魚を空間の中心に置いていたので、周りから見ている人は実際の金魚の動きを見ることができず、金魚をプロジェクターで写すなどの魅せ方もあったと反省している。

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