[x-Music Lab 22春]藤家大希

藤家大希
x-Music Lab
Published in
Jul 29, 2022

今学期の活動方針

私は22年の春学期からx-Music Labに所属していただいたので、先輩方の発表からメソッドやアイデアを学ばせていただいたことと、新規生ワークショップが主な活動内容となった。

●新規生WS1

お題

・家とSFCの間で聴こえる音を言語化して記録する。
・グループメンバーでSFCの指定されたポイントを周り、そこで聞こえた音を言語化して記録する。

概要

私の場合は住んでいる場所とキャンパスの移動に徒歩2分もかからないので、SFC内部での音の体験に集中して取り組みました。
レコーダー等を使って録音するのではなく、自分で音を言語化し、それを他のメンバーと共有して、再度音を聴いてみるという試みです。より主観的な体験が求められていると思います。

結果

「木の葉が風に吹かれて擦れる音」「鳥が鳴く音(声)」「工事現場の衝突音」「人の話し声」など、音の発信源が分かりやすくて簡単に言語化できるものにばかりを意識してしまうことが分かった。また、視覚的な情報にも影響を受けていたと思う。例えば、森林の中でこのWSを行えば、意識は木の葉などの自然物に向きやすい。
一度他のメンバーと言語化したものを共有してから再度試みると、自分が意識していなかった音の多さに気づき、自分が仕組みを理解して説明づけることができない音に関しては、意識が向きづらいことが分かった。
このWSを発表した際、「より小説的、主観的な表現が望ましい」というフィードバックを魚住さんからいただいたが、これは自分の意識が向く音と、向かない音を、他のメンバーとの差異から見つけ出すためではないかと思った。

●新規生WS2

お題

「自分がギリギリ音楽だと思えるかもしれないものを録音、制作する」

概要

このWSでは、自分の過去の体験から着想を得て制作を行いました。ゲームセンターに行った時、友達が遊び終わるのを待っている間、暇つぶしにゲームセンターの中を周っていました。ゲームセンターには無数の音源があり、もちろんそれぞれの音源のBPMやキーは統一されていないので、混沌とした騒音のようになります。また、別の地点や時間で同じ聞こえ方をするポイントは存在しません。騒々しいゲームセンターの内部は、見方を変えれば無限の音楽体験を持っているように思えて、様々なゲーム機を周回しながら録音しようと試みました。その時の音源に、ピアノの音源と少しのブレイクなどの編集を加えて、今回の作品としました。
ゲームセンターでの録音は、見方を変えてやっとギリギリ音楽として楽しめるノイズであり、同時にワクワクして哀愁を覚えるような音源になりました。
この体験から得られた自分なりの音楽の定義として「情緒、態度を共有、記述するためのもの」と考えました。一般的な音楽の形式を離れても、それによってワクワクや哀愁などの情緒が共有されれば、その音源や体験は音楽であると言えるのではないでしょうか。このWSを発表した際に、研究会の先輩方に私が今回制作した音源から感じる情緒のフィードバックをいただき、情緒の共有を実際に体験することができました。

https://soundcloud.com/bakm16ji6wik/wav?utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing
↑制作した音源

●新規生WS3

お題

「前回自分が立てた仮説をもとに、xな作品を探す」

概要

探したXな音源

上の動画が、今回私が探したxな作品になります。「情緒、態度を共有、記述するためのもの」が音楽である、と定義した私は、アメリカのラッパーであるXXXTENTACIONのinstagramライブの映像を見つけ、これをxな作品としました。
この映像からは、声の抑揚や感情表現から、彼が共有したい態度を感じ取ることができます。「ビートの上にラップを乗せる」という音楽的形式を外れても、一般的なヒップホップの音源と同じように、彼の声に耳を傾けていることに気づきました。音源を通して、社会的なメッセージを発することは、「態度」を共有することであり、自分にとってこれは音楽の大きな要素の一つだと結論づけました。

●新規生WS4

お題

「xな演奏をする」

概要

まだ誰も試みたことのないような演奏をして、自分の中で「音を奏でる」とは何なのかを考え、言語化、定義づけを行うというWSです。
アフリカのある民族によって用いられるカルカバという楽器を使って演奏を行いました。この楽器は、カスタネットのように対になった金属片二枚を片手に持ち、打楽器として演奏するものです。私はこの楽器を先輩に貸してもらっていたのですが、発表当時は楽器の名前すら判然とせず、演奏法などの情報が全くないまま、独自の遊び方を考えていました。したがって私の演奏には、本来の使い方や音の鳴り方と異なる点があったと思いますし、リズムなどの体系は全く異なっていたでしょう。自分にとって未知の楽器を手にしたことから生まれた、楽器に対する独力のアプローチや、それによって生まれた差異が、xな演奏であると考え、今回の発表に用いました。

●最終発表

お題

「グループによってxな演奏を行う」

概要

x-Music Labの新規生であるナス君と、聴講生として参加してくれたシホリさんとグループを組み、xな演奏を試みました。ナス君が所持していた「e-bow」という楽器は、磁力によって触れた部分の弦を振動させ、サステインを最大化することでギター等の弦楽器による独特な演奏を可能にするというものです。
この楽器を用いた演奏は、サステインが最大化するという特性上、ドローン音楽のように持続音を主体として構成し、そこに微小な変化を加えていくことでなされることが多いそうです。私たちは、そのような既存の枠組みを変えるため、DTMソフトのプラグインエフェクトを介して、偶然性を持った変化を加えることにしました。
ナス君がe-bowを使ってギターを演奏する間、私とシホリさんはじゃんけんをし、その結果によってあらかじめ決めておいた操作を行い、音にenvelope等の変化を加えました。例えば、グーで買ったらエフェクターを一つ増やし、10秒間のパラメータ操作時間を得る、などです。どのエフェクターを選び、どのパラメータをどれほど調整するかは、私とシホリさんの主観に委ねられており、完全な偶然性ではなく、演奏者としての私たちによって音に変化が加えられていく、という表現を目指しました。また、エフェクターの調整は、ナス君が視認できないようにし、ギターを演奏するナス君と、エフェクターを調整する私とシホリさんのコミュニケーションは、あくまで音を通して行われるように制限しました。パラメータの操作時間を10秒と定めたのは、「焦り」の感覚によるxな演奏の領域を探ろうと考えたからです。
いただいたフィードバックからは、じゃんけんという表現の必然性や視覚的な影響について疑問に思っている方が多いことが分かりました。今後の制作、活動において考えていきたいと思います。

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